海外のニュースより

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「宗教上禁じられたテレビ・ドラマの勝利」と題する『ヴェルト・オンライン』の記事。

2008年08月07日 | イスラム問題
 サウディ・アラビアのイスラム法学者は、トルコのテレビドラマ『ヌル』を「悪魔的で非道徳的だ」と呼び、テレビ局に対して「神と預言者に対する攻撃」を直ちに止めるように要求した。パレスチナの都市ナブルスでは、国会議員とハマスの説教師は、「宗教と価値と伝統」に反するシリーズに対して警告した。
 両方の尊厳の担い手はあまり多くの聞く耳を得られなかった。サウディ・アラビアでは、300万人から400万人の間の人が、毎晩、ヌルとその夫であるモハンナドの生活と愛に関するテレビドラマを見ている。パレスチナのガザ地帯とヨルダン川西部地区では、放映時間には街頭の人影がまばらになる。停電で見られなくなると、人々は目覚まし時計をセットして、早朝の再放送を見逃さないようにする。
 シリアやバーレーンやモロッコでは、毎日、大家族がテレビの前に集まって、彼らの主人公達を見る。汎アラブ的な衛星放送チャンネルのMBCにとって、驚くべき大成功だ。
トルコでは、『ヌル』は、失敗作で、幾つかの挿話が放映された後、放映中止になった。 アラブ語のテレビ・シリーズは、ひどく高価だったので、われわれは外国に安価なシリーズを求めたとMBCテレビの会長ワリド・アル・イブラヒムは言う。古典的なアラビア語ではなくて、地域の方言で音声が入れられたこのテレビ・ドラマは、ドバイに本社を置くMBCの最大のビジネスになった。
 保守的な体制派の反応は理解できなくはない。『ヌル』は、湾岸諸国の社会的日常に見いだされる男性と女性の新しい役割像を提示している。夫婦が完全に平等なムスリム家族が初めて示されたのだ。
 夫のモハンナドは、妻のヌルがモード・デザイナーとして職業上一人前になるのを支持している。けんかの後では、彼は花束を渡し、贈り物や旅行で彼女を驚かす。それは、これまで西欧の映画でしか知らなかった男性の態度である。アラブ製のドラマでは、妻や女兄弟を殴る普通の男しか出てこなかった。
 「われわれの社会は、このような親密さや愛情にはなれていない。だから、この種の関係は罪だと言われた」と「バーレーン婦人同盟」の副会長であるファティマ・ラベアは言う。多くの女性の視聴者にとっては、温和で格好がいいモハンナドは、理想の男性像である。
 モハンナドの写真を妻の携帯に見つけた何人かのサウディの男達は妻と離婚した。日刊紙『サウディ・ガゼット』には、美容整形外科でモハンナドに変えてほしいという男を描いた漫画が掲載された。母親達は、生まれて来た子供に「ヌル」や「モハンナド」という名前を付けている。
 このテレビドラマでは、保守的ムスリム的社会の別のタイプのタブーが破られた。モハンナドは、結婚する前にヌルと性的交渉を持ち、それで子供が生まれている。従姉妹の一人は妊娠中絶をしたし、晩ご飯には、アルコールを飲んでいる。
 「われわれの生活では、このドラマシリーズに出てくるような物事を、われわれみんなしている」とシリアの俳優ラウラ・アブ・サアドは言う。「かなり多くの女の子は妊娠して、中絶しているわ。ただ、誰も口にしないだけよ。テーブルの下に隠してあったことをテレビで見て、みんなホットしているわ。」
 ラウラ・アブ・サアドにとって、このシリーズの成功は、「アラブ系ムスリムが、穏健なイスラム教に従って、過激派には従おうとしない」ことのしるしである。(後略)
[訳者の感想]アラブ諸国の普通の人たちが穏健なイスラム教徒だということを示すニュースのように思います。ちょっと楽観的かもしれませんが。
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