海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「米国の後に来るものは何か」と題するフクヤマとのインタービュー。

2009年01月12日 | 国際政治
ツァイト紙:フクヤマさん、新しい年を一瞥して下さい。あなたを一番不安にしているのは何ですか?
フクヤマ:巨大な経済危機と金融危機です。勿論、アフガンからイランに到る多くの未解決の外交上の争いには、大きな問題が隠れています。ですが、この危機の原因が何かわれわれは知っています。これに対して、ウオール街の崩壊は、われわれに全く新しい問題を突きつけています。それはすべての人間にとって、痛ましいプロセスになるでしょう。われわれはまだほんの入り口に立っています。大きな試練は、まだ、これからです。私が恐れているのは、世界が政治的により不安定になるだろうということです。
ツァイト紙:世界は、バラク・オバマに大きな希望を抱いています。だが、アメリカが指導的な役割を演じる時代は終わったのではありませんか?
フクヤマ:いや、私はそれほどドラマチックには表現しません。勿論、冷戦後、アメリカが現実的なライバルなしに支配した過去20年間は、二度と来ません。中国、インド、ロシアは、今日、遙かに大きな行動の余地を持っています。ですが、私はアメリカの意味喪失について語るよりも、他の諸国の意味獲得について語りたいのです。
ツァイト紙:最初は、惨憺たるイラク戦争があり、次にウオール街の炉心融解が来ました。アメリカは、少なくとも自分の経済は握っていると皆思っていたのですが。超大国は急速に信頼を失ったのではありませんか?
フクヤマ:それは確かです。体面を失ったことは、痛ましいことですが、不可避です。われわれは全世界の忠告や意志に逆らって不必要な戦争を始めました。次にわれわれはこの戦争に疑わしい民主主義と自由の刻印を押し、結局、戦略を駄目にしました。今度は、われわれは、敵も味方も一緒に経済危機に巻き込んだのです。
ツァイト紙:しかし、奇妙ですね。昨日までは、国家の介入は悪でした。今日になると、政府が経済を救っている。アメリカは、突然、非イデオロギー的になったのでしょうか?
フクヤマ:どの方向にも、イデオロギーがあります。私たちはもっとプラグマチックだといいのですが。国家による救済計画は、国民においても、議会においても、問題がない訳ではありません。
ツァイト紙:特に共和党は、ロナルド・レーガン大統領が税を減らし、国家の規制を減らした1980年代に戻りたがっています。
フクヤマ:それで成功したのです。だが、世界はさらに回転しました。かなり多くの共和党員だけが進歩していないのです。彼らは未だに古い解決策を信じているのです。だが、問題は、原理に対する忠実さが足りないことではありません。そうではなくて、原理自身が問題なのです。国家の介入が少なければ、税金が少なければ、必ずしも危機からでられるとは限りません。レーガノミックスの中には、答えはありません。
ツァイト紙:あなたは答えを知っていますか?
フクヤマ:もし知っていたら、私は大統領になって、ノーベル賞をもらったでしょう。長らく支配的だったレーガノミックスに取って代わる新しい経済モデルのための余地は大きく開かれています。
ツァイト紙:世界は左旋回するのでしょうか?
フクヤマ:そうです。だが、違いはあります。ヨーロッパやラテン・アメリカの反応の違いを見てご覧なさい。ヴェネズエラやボリビアやエクアドルの左翼ポピュリスト政府は、国家による干渉によって持ち直そうとしています。彼らが原油価格崩壊を克服するのは困難でしょう。ブラジルやメキシコやチリーは、もっと穏やかな路線を取っています。彼らも危機を回避することはできないでしょうが、多分、もっとうまく。もっと速やかに危機を克服するでしょう。(以下省略)
[訳者の感想]「歴史の終わり」を書いて有名になったフランシス・フクヤマに対するインテービューです。彼の予言はあまり当たらないと思いますが、今度はどうでしょうか?
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