海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「『人民日報』の論説委員、日本に対する強硬路線を要求」と題する『ニューヨーク・タイムズ』の記事。

2006年01月04日 | 中国の政治・経済・社会
北京発:ロイター電
中国は日本との永続する対立に備えるべきだし、ナショナリズムを社会統一の源泉として利用するべきだと中国共産党の機関紙『人民日報』で年長の論説委員が、ますます悪くなる両国関係の背景について書いた。
新しい雑誌に載った異常に力の入った論説は、日本が戦時中の暴虐行為を認めないことに対して批判的な北京と2004年5月に公安警察工作員の脅迫によって自殺に追い込まれた外交官の問題を提起した東京との間の新たな対立の時期に公表された。
日本政府は、この外交官は、売春婦との関係を種にして中国公安警察の工作員に恐喝された後で自殺したと言っている。金曜日に中国外務省の秦剛報道官は、日本は、「中国のイメージを中傷している」と述べた。
『人民日報』の論説室次長であるリン・ジーボは、「両国の間の対立は、過去に関わるだけでなく未来にも関わっている」と書いている。
「中国と日本との基本的な対立は、中国が台頭しつつあり、日本は中国が台頭するのを見たくないという点にある。この対立は、長期的で、中国人民の意志によっては変えることはできない」とリンは書いている。
火曜日(1月2日)に『人民日報』が所有する『グローバル・タイムズ』は、「新しい争いは、今年、中日関係における改善と進歩に影を投げた」と述べた。
リンの論説は、中国の新しい雑誌『中国と世界情勢』に掲載された。この雑誌は、清華大学によって2005年末に刊行されており、中国の政策を立案するエリートを対象にしている。
リンは、中国と日本の対立の根は深いと主張する。両国の経済は、輸出市場とエネルギー供給を巡って激しい競争をしている。友好関係を促進しようとした中国の試みは、失敗したと彼は言う。
「友好を求めるわれわれの一方的な努力は全く無駄だった。中日関係は、中国のスタンスが今より強硬である場合にのみうまく扱える」と彼は書いている。
リンは、日本に対するタカ派的な政策の支持者としてよく知られている。2003年に彼は日本との友好的な関係を主張した『人民日報』のよりリベラルな解説者馬立誠を批判した。
馬と他の中国人解説者は、日本に向けられたナショナリズムの増大から生じる危険性を警告した。しかし、リンは、彼の最近の記事で、日本との摩擦は、中国にとって有利であると言って、孟子の言葉を引用している。
「敵国を持つことは全く悪いとはいえない。孟子は、『敵と外からの脅威がなければ、国は必ず滅びる』と言った。敵国と外的な危険を持つことは我々自身を強める。」
「ナショナリズムは、大きな混乱の時代に中国の統一と安定を維持できる唯一の信念であるかもしれない」と書くリンは、公式のマルクス主義イデオロギーの維持する力を信じていないように見える。
「今日、中国では、イデオロギーの空白が広がっている」と書くリンは、急速な経済生長、社会の断片化と外的な圧力を引き合いに出している。「団結するために中国は何に頼れるか。ナショナリズムを離れてほかに頼みの綱はないと私は思う。」
2005年4月、中国の都市は、反日デモで沸きたった。100万人以上の中国人が国連安全保障委員会の常任理事国への日本の要求に対してオンラインの請願で反対した。
中国は特に日本の小泉首相の繰り返された靖国参拝に反対し、1931年から1945年までの日本の侵略を美化する歴史教科書に反対した。
もっと最近は、東シナ海における論争の的となった境界線について増大する軍事予算について怒りのやり取りが行われた。
リンは言う。このような摩擦は、中国の影響が拡大するにつれて続くことは確実である。
「中国は台頭すること欲する。もし、それがわれわれの設定した目標であるならば、われわれは羊であることはできない。われわれは、やっと狼であるか、それとも狼の狩人であるかどちらかになり始めたのだ。」
[訳者の感想]中国にもかなり威勢の良い論客がいることが分かります。こうしてますます両国の対立はのっぴきならないところまで行くのでしょうか?
孟子の出典が分かりました。『孟子』告子章句下の第15章にある次の文章です。「入りては側ち法家・払士なく、出でては側ち敵国・外患なき者は、国恒に亡ぶ。」大意は「内には法度を守る世臣や輔弼の臣がなく、外に敵国・外患がない国は、大抵は亡んでしまうものだ」ということのようです。(内野熊一郎著『孟子』明治書院による。)
長州の野山獄の中で吉田松陰が『孟子』について行った講義のノートである『講孟サツ記』の中では、松陰はこの箇所に触れて「内に法家・払士がいるならば、敵国・外患があることによって、かえって奮起してその国興隆し、法家・払士がいないならば、敵国・外患があることによってその国は滅亡するのである」と彼らしい独特の解釈をしています。この『人民日報』の解説者は、「内に法家・払士がいる」かどうかは、全く触れていません。
コメント (7)
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