杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

文明の転換と日本企業の役割

2012-01-27 14:55:29 | ニュービジネス協議会

 遅くなりましたが、先週水曜(1月18日)、東京のホテルオークラで開かれた(社)日本ニュービジネス協議会連合会の新春賀詞講演会の報告です。

 

 

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 今年の講師は中谷 巌 氏 (一般社団法人識庵 理事長 ・三菱UFJリサーチ&コンサルティング 理事長)。

 『文明の転換』と日本企業の役割」という硬そうな演題で、私の頭でついていけるかなあと不安だったんですが、これが意外にも、歴史好きにも楽しめる文明論で、大変興味深く拝聴しました。

 

 

 

 

 

 

 コロンブスの新大陸発見から今に至るまで、約500年続いた、西洋文明社会による非西洋国の地理的搾取のシナリオは、最後のターゲットである極東の国日本に、2発も原爆を落として徹底的に叩いて完結したわけですが、欧米が「むこう50100年立ち上がれないはず」と思っていた日本は信じられないスピードで経済復興しました。

 

 

そのけん引役の一つであった自動車産業は、70年代までにアメリカの技術をあっという間に習得し、その上にジャストインタイム、カイゼンといった独自の生産性向上や、100%の品質を要求されたら120%で応えるハイクオリティのモノづくりスピリットによって80年代には世界市場を席巻。アメリカはモノづくりをあきらめて金融立国の道を選択します。

 

 

 

 

 

 

市場原理に必要な“グローバルスタンダード”を確立させようと、日本に構造改革を迫り、日本でも90年代から小泉改革のあたりまで「改革なくして成長なし」が合言葉となりましたが、それで果たして日本経済は活性化したかといえば、その背景には日本の企業同士の長期的信頼関係をつぶし、終身雇用制度をつぶし、官僚制度もつぶそうというアメリカのしたたかな戦略があったと中谷氏は読み解きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがてアメリカは、自国の低所得者層までターゲットにしてサブプライムローンの問題を引き起こし、リーマンショックによって金融立国の限界をさらけ出しました。

 

 

 

 ヨーロッパも同様にユーロ危機に直面しています。「西洋資本主義は完全に限界に達し、大転換に迫られている」と語る中谷氏は、

 

 「明治維新後の日本の信じられないスピードでの近代化は、江戸時代の高い識字率がベースにあり、西洋文化が宮廷中心の文化であったのとは対照的に、江戸期には庶民が文化の担い手だった。そんな国は世界中を探しても他にはない」

 

 

 「日本の自動車メーカーはアメリカでマスキー法(排ガス規制)が課せられたとき、いちはやく規制をクリアした。巨大な規制が新しいイノベーションを生んだのだ。今、仮に日本が20年後に原発をやめると宣言したら、再生エネルギー技術のものすごいイノベーションが起きるかもしれない。原爆を落とされ、原発事故を起こした日本が本気で脱原発をやるなら同調するという国は必ず出てくる。これが日本経済の救世主になるはず」

 

 と日本人の潜在能力に期待をかけます。

 

 

 

 

 

 

 

 これからの超高齢化社会においては、高齢者が社会でバリューある存在であることを見直すことが肝要です。

 中谷氏は、「市場経済が行き過ぎた結果、大家族が核家族になり、今は孤族世帯も珍しくなくなった。しかしこれからはおじいちゃんおばあちゃんが家族や社会にとって必要かつ価値のある存在になるべき。企業はそんな社会づくりと経済活動をシェアする“シェアードバリュー”を意識し、社会問題の本質に企業も参加し、あるべき社会の構築に向けて一緒に仕事をすべきである。これは、もともと近江商人の“三方よし”等のように、日本人が持っていた美徳でもある」と締めくくりました。

 

 

 

 

 

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 講演内容の詳細は、中谷氏が今月上梓された最新刊『資本主義以後の世界~日本は「文明の転換」を主導できるか』(徳間書店)に記されています。私も今、熟読中です。社会に対する視野をものすごく広げ、リテラシー能力を鍛えてくれると思います。

 

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