杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

87%のリスクと静岡茶

2011-05-06 20:32:04 | 本と雑誌

 NHKニュースで菅首相の浜岡原発全面停止要請が報道されました。首相の会見で「M8クラスの東海地震の発生リスクは向こう30年で87%」という言葉を聞き、3年前の当ブログ記事を思い出しました。地震防災コーディネーターの岩瀧幸則さんの講話をまとめた「87%のリスク」です。今一度、しかとお話をうかがいたいのに、岩瀧さんは昨年急逝されてしまい、もう二度とうかがうことができません。

 

  3年前にこのお話をうかがったときは、原発事故や放射能汚染のリスクについては考えが及ばず、その後自分がとった対策と言えば家具の転倒防止器具を買いそろえるぐらい。・・・大地震のリスクがあるのは原発施設の関係者だってよく解っているはずだから、しかるべき対策を当然取っているはず、と信頼しきっていたのです。

 

 今回の震災で、原発は原子炉を停止させたからといって即安全ではなく、しかも廃炉解体できるまで数十年もかかるトンデモ施設だということが解りました。多くの静岡県民が知らぬ存ぜぬで見過ごして来たリスクを、福島県民のみなさんが負ってくださったわけです。そう考えるだけでも福島のみなさんに足を向けて眠れませんよね・・・。

 

 

 

 連休中、新茶の萌黄色に輝く牧之原台地の茶畑をドライブしながら、思わず「もし浜岡原発が福島みたいになったら静岡県のお茶は全滅だ・・・」とつぶやいてしまいました。

 

 明治維新の後、生活の基盤を失い、今の東北の被災者のみなさんのような苦境に追いやられた旧幕臣たちが、勝海舟に導かれ、新天地として入植し、開Photo墾した牧之原大茶園。賊軍の汚名を振り払い、立ち上がった日本人によって築かれた日本一の茶畑です。

 

 

 ・・・向こう30年で確率87%ですから、東海地震は自分が生きているうちにほぼ起きると言っていいでしょう。地震だけなら時間はかかっても地元の人々の手で復興するメドが立つと思いますが、原発放射能の土壌汚染や風評被害は地元民の手には負えません。

 

 

 

 

 今月発行のJA静岡経済連発行の季刊情報誌『スマイル』45号は全編お茶特集です。最初の取材は3月11日で、取材中に揺れを体験しました。その後、校了までの1ヶ月半は震災のことがつねに頭にありました。何年経ってもこの号の編集時のことは震災とセットで思い出すに違いありません。

 ・・・上記写真は、誌面でも紹介した牧之原のエコファーマー赤堀有彦さんの茶園。赤堀さんはじめ牧Imgp4372之原市内の茶農家や関連施設34か所で、毎月第3土日に自宅の縁側で無料の『お茶カフェ』を開催し、新茶でもてなしてくれます。

 

 

 逆境に置かれた人の手で切り拓かれ、人の手で茶業を基幹産業へ、そして日本の文化へと高めていこうと地道に努力する地域に、人の手ではぬぐえない悲劇がふりかからないよう、切に祈るばかりです。


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