4月新年度を迎えたというのに、なんだか「変わった」気がしません。静岡市では恒例の静岡まつりが中止となり、街中には花粉と「自粛」の風が吹いていました。
そんな中、今朝、眠気まなこで朝の情報番組「やじうまプラス」を見ていたら、以前訪問したことのある宮城県石巻市の平孝酒造さんが中継で紹介され、思わず飛び起きてしまいました。
蔵の中は壁が崩れ、屋根もところどころ損傷し、電気が止まった麹室の中には、青カビが生えた麹が。仕込み蔵のタンクはもろみがあふれ落ちたようでタンクのふちや外側に生生しい米粒のあと・・・。建物の損傷もさることながら、見たこともない麹やもろみの状態を見て、ああ、本当に仕込み稼働中に被災されたんだと痛く伝わってきました。
「真っ暗な中で、もろみの発酵する音だけが聞こえ、まるで“酒にしてください”と叫んでいるようだった」と語る平井さん。かろうじて搾ることのできた酒は、復興のシンボルの酒にしたい、と力を込めておられた表情に、思わず涙が出てきました。
2年前の駿河湾沖地震のときも、磯自慢酒造がみのもんたさんの朝の番組で紹介されました。・・・こういうときに象徴となるのは、ビール工場でもワインセラーでもなく、日本酒の酒蔵なんですね。それだけ日本酒は地域の隅々に存在し、地域に溶け込み、人々に寄りそう存在なんだって再確認できました。
・・・でも地震のニュースで酒蔵が紹介されるシーンは2度と見たくないですね。
さて30日(水)夜は、しずおか地酒研究会の春の恒例企画『しずおか地酒サロン~松崎晴雄さんの静岡県清酒鑑評会2011審査うらばなし』を開催しました。
酒通ならご存知の通り、松崎さんは日本を代表する酒類研究家・日本酒ジャーナリストとして著作も多く、日本酒輸出協会理事長として海外での日本酒PRにも努めておられます。当会とは1996年の発足当時からご縁をいただき、松崎さんが静岡県清酒鑑評会の民間代表審査員に就任されてからは、毎年審査の裏話を聞くサロンを定例開催しています。
例年は静岡県清酒鑑評会表彰式&一般公開の日に松崎さんが来静されるタイミングでサロンも開催していますが、今年は表彰式当日(23日)は松崎さんが福島県の清酒鑑評会に呼ばれていたため、1週間ずらして30日の開催としました。・・・結果的には、23日、福島県鑑評会が震災で中止となり、松崎さんは静岡の表彰式に来られたのですが、こちらは30日開催ですでに準備をしていたため、松崎さんには2週続けて静岡へ来ていただくことに。
・・・思えば、県沼津工業技術研究所で開かれた静岡県清酒鑑評会の審査は、3月11日の震災当日。松崎さんは東京へお帰りになるのにヒヤヒヤものだったそうです。なんやかんやで震災に振り回されてしまったのですね。
今年は『正雪』さんが久しぶりに県知事賞(吟醸の部)を受賞され、純米の部県知事賞の『磯自慢』ともども、被災された岩手県南部杜氏の手による酒ということもあり、もとよりサロンは「自粛」せず、地元ファンだけでもささやかにお祝いしようと思っていました。
定員20人ほどの小宴ですが、ただでさえ年度末で多忙な中、この自粛ムードで、はたして何人来てくれるのか不安でした。会場となったカフェボタニカの店長さんからも「20人分用意して大丈夫ですか?」と心配されたほど・・・。
いざ会員さんに募集をかけてみたら、3~4日のうちに定員を超え、ホッとしました。しかも常連さんと初参加組がバランスよくそろい、職業も蔵元、酒販店、飲食店、菓子職人、蕎麦職人、珈琲焙煎職人、稲作農家、酒米技術研究者、マスコミ、理容師、会社員等など、いつになく多岐にわたり、「造り手」「売り手」「飲み手」の和をモットーとする当会の理想的な交流会となりました。
松崎さんからは「あらためて地元ファンの“民度”の高さという点においても、静岡県は全国でもトップクラスではないかと思っております。これも、しずおか地酒研究会の活動がもたらしたものと確信しております」と感想メールをいただきました。そんなふうに褒めていただけるなんて、参加者のみなさんの地酒への深い愛情と、「造り手」「売り手」「飲み手」が互いに尊重し合う節度ある呑み方のおかげですね。ちょっと駅から遠い不便な会場で、かつこんなタイミングの時期でも、時間を作って駆けつけてくださったみなさん、みなさんは私の誇りです。本当にありがとうございました。
なお、サロン会場ではチャリティーで震災義援金を集めました。
松崎さんからはサイン入り著書を3冊、『正雪』さんからは新発売の素敵なエコバッグ、吟醸王国しずおか映像製作委員会からもオリジナルエプロン、そして『喜久醉』の青島さん&松下さんからは門外不出の『喜久醉純米吟醸松下米』の酒粕をなんと20kgドーンと提供していただきました!
松下米の酒粕は秘蔵中の秘蔵品で、どこに割り当てられるのか私も知りませんでした。今回は、福島、茨城の米作り仲間が被災したということで、松下さんが自分の割り当て分の酒粕をすべて提供してくださったのです。ちなみに松下さんは軽油とトイレットペーパーを自分のトラックに積んで現地へ届けたそうです。
チャリティー提供品は完売し、34,100円をお預かりしました。これに少し足して計4万円を、「しずおか地酒研究会」名義で静岡新聞社救援金に送金しました。ご協力くださったみなさん、本当にありがとうございました。
前置きが長くなってしまいました。サロンでの松崎さんのお話、参加者の自己PRについては、追ってご紹介します。