杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

真夏の京都大阪行脚その1~京都街中篇

2011-08-09 14:02:12 | アート・文化

 8月6~7日と京都・大阪へ行ってきました。先の記事でも紹介したように、6日夜に高槻市で『吟醸王国しずおかパイロット版』試写会を行い、7日午後には大阪シンフォニーホールで『東西4大学OB合同合唱連盟演奏会』を鑑賞するためです。先月末から猛暑がひと段落していたことから、2件の主目的以外に特に予定は入れず、気ままなブラ歩きを楽しもうと決め込んでいたんですが、この夏を甘くみちゃいけなかったですね・・・猛暑復活で慌てました。

 

 5日夜、今春開通した、しずてつジャストラインの夜行高速バス・静岡―大阪線を初めて利用し、6日朝5時30分すぎに京都駅に到着しました。

 今まで利用していたJRの高速バスは朝5時に着くんですね。でもこの時間に京都に着いても時間のつぶし方に迷い、大抵は近鉄の始発(各駅停車)で奈良まで行って、奈良公園の早朝散歩をして7時30分に開門する東大寺をのんびり観て・・・というパターンが多かったかな。

 

 

 京都早朝着が30分でもずれると、電車やバスの便もかなりよくなるので、今回は事前にリサーチし、土日は朝6時から開いている太秦の銭湯「やしろ湯」に行きました(HPはこちら)。早朝から動いている地下鉄の駅から近いので助かりました。

 410円の町の銭湯なので、石鹸・シャンプーリンスの類はありませんが、浴室は広々していて気持ちよかった。お客さんも少なくて湯船にゆったり。以前、朝7時からやっている京都駅前のタワーホテル地下の入浴施設に入ったことがありますが、こちらは夜行バス利用者には有名な施設のようで、朝7時でも行列しましたっけ(苦笑)。

 

 やしろ湯を出たのは7時20分。どこかでモーニングを食べようと、京都の喫茶店ガイドブックに載っていた自家焙煎珈琲の店「カフェ・ヴェルディ」に向かいました。

 場所は下鴨神社の近く。銭湯のある太秦天神町からはバスを乗り継ぎます。京都のいいところは、市街地は一日バス乗車券500円で乗り放題で、路線図がわかりやすいこと。地図を読むのが苦手な人でもバス500円券を買って路線図をもらえば、かなり心強いと思います。

 

 

 朝8時オープンの「カフェ・ヴェルディ」に8時前に着いて、マスターが扉を開けると同時に入ってトーストモーニングをオーダーしました。1杯目はお店の看板と思われるヴェルディブレンドをいただきましたが、中深煎りタイプでバタートーストとの相性がとてもよかった。

 おかわりにいただいた下鴨ブレンドフルーティーライトは、香りがよくマイルドですっきりしていて、コーヒーを単独で味わうなら後者のほうが私好み。京都の老舗珈琲店のブレンドは、深煎りのどっしりした味わいが多い印象ですが、いろんなタイプのブレンドを気分に応じて飲めるお店は、私にとって新発見&ありがたい存在です。ホームページはこちら

 

 

 

 カフェヴェルディに置いてあった雑誌に、銀閣寺近くの「白沙村荘&橋本関雪記念館」で夏の特別公開があると発見。開館10時には小一時間あるので、下鴨神社をのんびり散歩することにしました。

 

 下鴨本通りを少し歩いて南下。朝9時前だというのにジリジリ暑く、こImgp4688
れは日中猛暑日になる予感100%・・・。神社なら日陰も多く、暑さがしのげるだろうと、境内へ駆け込みました。

 

 

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 不勉強で知らなかったんですが、下鴨神社にあるこの石、『君が代』に出てくる“さざれ石”だったんですね。こういう石が何気に置いてあるって、さすが世界遺産。

 

 

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 参道を包み込む「糺の森」には、耳をつんざくほどのセミの声。・・・この夏はあまりセミの鳴き声を聞かないなあと思っていたので、なんだかホッとしたというか、鳴き過ぎだろってツッコミたくなるほどの大音量でした。もうちょっと静かにパワースポット的な霊気を味わいたかったんですけどね(苦笑)。

 

 

 

 

 出町柳までブラブラ歩いて、銀閣寺方面に向かうバスに乗り、10時ちょっとすぎに「白沙村荘・橋本関雪記念館」に到着。ここを見学するの、大学時代Imgp4695以来かなあ。やっぱり銀閣の印象のほうが強くて、ここは「ついでに寄った」程度の記憶しかなかったんですが、やっぱり年齢を重ねてきたせいか、観光地化した銀閣よりも、一人の日本画家が東山文化への思いを込めて作庭した絵画のような空間がしみじみ落ち着くと思いました(ホームページはこちら)。

 

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 小さな藁ぶき屋根の門、庭の片隅の茶室、高床のアトリエ・存古楼、そして夏の時期だけ特別公開の持仏堂。持仏堂を見守るように周囲の庭には釈迦像や複数の羅漢像がたたずんでおられます。持仏堂の地蔵尊立像は鎌倉期の重要文化財で、夏の特別公開(7月9日~9月30日)のみ開帳されます。

 ほかにも平安~鎌倉期の石灯篭や仏像類が多く、コレクションにしてはずいぶん豪華だなあと思っていたら、ガイドの方から「明治の廃仏毀釈のとき、文化財の国内外への流出を少しでも食い止めようと橋本画伯が私財を投げ打ったのです。持仏堂は長年苦楽を共にされ、先に亡くなった奥様の慰霊のために建てられました」と説明してもらいました。

・・・しみじみ落ち着くのは、この建物と空間を創り上げた人の思いが伝わるからなんだと思いました。作り手が見えてくるもの・・・やっぱりいいですねえ。

 

 

 

 白沙村荘でもらったパンフレット「京都・今出川通りの美術館だより」に、京都御所の西側にある楽美術館のことが紹介されていたので、次の移動先が決まりました。実は9月から茶の湯の勉強会を開くことになったので、多少なりとも知識の足しにと考えました。

 

 

 

 お昼近くになり、気温はピーク時に達しそうな様相。フード付きの長袖UVケアジャケットを着ていたものの、やっぱり日傘や帽子がないと日差しが顔を直撃しそうで、ずーっと下を向いて歩く羽目に(苦笑)。

 楽美Imgp4697術館の前で、「氷」の暖簾と甘味&ランチの看板を発見し、思わず引き込まれるように入りました。

 

 お店は『Shiじma』というちょっと変わった名前(ブログはこちら)。門をくぐり、小さな路地を入ると、趣のある洋間付きの町家でした。

 おばんざいをアレンジした創作ランチコースと、コースメニューをコンパクトにお膳に盛ったミニコースがあるというので、ミニコースをいただきました。ダイエット中につき、甘味類はガマンしましたが、豆皿に可愛く盛られたおばんざいのミニコースは腹8分目で女性には適量で、甘味類を追加オーダーしてちょうどいい塩梅だと思います。

 

 おばんざいはどれも家庭的な味で美味しかったけど、朝漬けたばかりという自家製のお漬物と、焦げ目がほんのり付いた炊きたて白米がしみじみうれしかった・・・。料理の味って感じ方もいろいろですが、ごはんとお漬物の味ってどんなときでもその店のベースになるような気がして、ここがちゃんと美味しい店って信頼出来る気がします。居酒屋でいえば、燗酒や冷やで出す酒がちゃんと美味しい店、ですね。

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 「楽美術館」は450年の歴史を誇る楽焼の窯元・楽家に隣接する美術館。赤と黒の渋~い茶器というイメージが強い楽焼ですが、ちょうど開催中の“親子で観る展覧会・シリーズ楽って何だろう”展では、中国福建省の華南三鮮というグリーン、イエロー、パープル、ブラウン等の色彩豊かな焼き物が楽焼のルーツだと紹介され、興味深かった。Eテレの子ども向け番組みたいな作品解説コピーも面白かったです。8月28日まで開催中です。ホームページはこちら

 

 

 午後になると、最高気温と思われる強烈な暑さ。早朝から動きまわっていたせいか、急に眠気とだるさに襲われて、とりあえず街中に向かうバスに飛び乗って、四条高倉で降りて大丸百貨店に入ってしばし涼みました。

 大丸京都店は学生時代、お中元やお歳暮の時期にバイトをしていたので、なんとなく愛着があるんですね。もちろん貧乏学生時代は「大丸でお買い物」は高嶺の花だったけど・・・。

 

 

 

 アーケードのある錦市場~寺町通りをブラ歩きし、寺町二条の三月書房でアート本を、一保堂茶舗本店でほうじ茶を買い、最後は川端三条にある「酒のやまもと」で、夜の高槻での試飲会用に『磯自慢純米Imgp4699吟醸・多田信男』をゲットしました。

 

 酒のやまもとは枚方市に本店があり、京都店は3年前にOPENしたとか(ホームページはこちら)。

 

 磯自慢酒造の寺岡社長に大阪・京都の販売店をうかがったとき、「やまもとさんなら“多田信男”が買えるよ」と教えていただいたので、『吟醸王国しずおかパイロット版』の登場人物の一人である多田さんの冠酒なら申し分ないと思いました。

 

 やまもとさんは「開運」「初亀」「正雪」も扱っており、店頭の冷蔵庫に「亀」が数本並んであるのを見た時は、地元静岡の酒屋でもなかなかお目にかかれない光景だな~と目をパチクリ。お店のスタッフに静岡から来たことを告げて、「京都市内で磯自慢や初亀を飲める店があるんですか?」と訊ねたんですが、その方は枚方本店から助っ人に来ているのでわからないとのことでした。

 

 

 

 ちょうど私の前にお会計したお客さんも、磯自慢の一升瓶を大事に買っておられました。暑さでウンザリしそうな一日でしたが、最後に静岡酒を愛する京都の店に出会えたことで、来た甲斐があったと心底嬉しくなりました。

 試飲会の様子は次回へ。


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