放送からかれこれ2週間経ちますが、『しずおか吟醸物語』への感想メールが連日届いています。本当に嬉しいです。今日は、昨年『吟醸王国しずおかパイロット版』をご覧になっていた方からのご意見を紹介します。
◆まず思ったのは「うまくまとまっていたな」ということです。予備知識が何もないまま見た方でも、「静岡の地酒ってスゴイんだな」「造り手は大変な苦労をしているんだな」などと、少しでも静岡の酒に興味を持ってもらえることができたかと思います。
ちょっと残念だったのは、パイロット版と比べると、若干テレビっぽく軽めな雰囲気だったかな、というところです。(パイロット版は)酒を造ることは神事に近いような、神聖なものというイメージだったので・・・。
でも「GW最終日にテレビを見ている人対象」というように考えると、かえってそれで良かったのかもですね。テレビを見たら、ますます映画本編が楽しみになりました!(デザイナー)
◆昨年夏に見せていただいたパイロット版より、ずいぶん、個々の「蔵」と「季節」が整理された感じで初めての方々にもわかりやすい編集になっているなというのが第一印象でした。青島さんを主軸に据えたことも、パイロット版のときよりも覚悟が定まった(?)感じの構成で、蔵元(の一人)のメッセージがより明確に見る人に届いたのではないでしょうか。
その反面、パイロット版のときの荒削りな「うねり」というか、独特の強さのようなものはソフトに感じられました。
意思を持って見に来てくれる人に届ける「映画」というスタイルと、視聴料を払わない、お茶の間の一般の人たちにわかりやすく届けるのが使命の「テレビ番組」とでは、編集方法も違うんだな…とあらためて感じました。(自分の仕事でいえば、無料のフリーペーパーやネット情報と違って、「お金を出して買っていただくメディア」のあり方について身につまされているので、つい、考えてしまいます。)
でも、今回またこのような機会に、真弓さんが、映像を仕事とする方々と意見を交わしたり番組を作り上げたりする中で、切磋琢磨して、本作品は、ますますいいものになるだろうと確信しています。
ふたつ、気になったことがあったのでお伝えしておこうと思います。
前半に2回くらい、「こだわり」という言葉が出てきましたが、違和感を持ちました。
「こだわり」は、現在では、どちらかというと肯定的な使われ方をすることが多いのですが、もともとは「ささいなことにとらわれる、拘泥する」という意味で、よろしくない表現だったはずです。(人を批判したりする場合に使ったり、自分で言う場合には謙遜の意味で「こんなことにこだわっちゃって…」という使い方でしょうか。)
たぶん20年くらい前から「こだわり」は良い意味でも使われ始めたのが思います。便利な言葉だし、なかなか、そのまま言い換えられる言葉はないので広く使われているのでしょうが、もともとの意味がよろしくないし、不愉快に思う方もいると思うので、自分の仕事では「こだわり」「こだわる」という言葉は使ってきませんでした。
言葉は、時代とともに変わっていくものですし、映画のときにどのような言葉を選ぶかは、監督である真弓さんのご判断だと思いますが、被取材者の方が不愉快に思われることもないとはいえないと思いますので、老婆心ながら、一応、お伝えつたえしておきたいと思いました。
あと、杉錦さんの紹介の中でちょっとよく聞き取れなかったのですが「本物(?)のみりん云々」というナレーションがあったかと思うのですが、みりんの製法は、たいへんに複雑怪奇で、どれが「古式ゆかしい正しい製法」なのかは諸説あると思いますので、具体的な製法を語ったほうがいいのでは、と感じました。
以上、断片的で勝手な感想で、すみません。
18日のブログの「打たれる出る杭になることを覚悟で」のくだりに胸を打たれました。たしかに、同業の方たちにも、大きな刺激となっていることは大いにあると思います。(編集者)
表現活動をする同業の方々からの、こういう感想や示唆は得難いものです。お忙しいのに真摯な感想を送ってくださって、Sさん、心から感謝します。
私もライターのはしくれですから、ナレーションやテロップの言葉には“こだわり”があります。今回はディレクターから台本が上がってきたのが、録音作業の1時間前だったので、細部まで添削する時間がなく、ご指摘の点はサラーっと見逃してしまいましたが、確かにおっしゃるとおりですね。…あぁ、でも自分もいつもフツウに(褒め言葉のつもりで)使っちゃっているなぁ…「こだわりの酒造り」とか「米作りへのこだわり」とか。
言い訳がましいかもしれませんが、自分が映像の台本を書くときは、たぶん「こだわり」とか「本物」なんて言葉をあからさまには使わないと思います。こういう言葉は、映像を通して観た人が感じるもので、ナレーターが説明したり押し付けたりするものではない、映像の力に委ねたいと考えるからです。…その意味で、テレビでわかりやすく伝えるのって難しいですね。ディレクターも苦労したと思います。
いずれにせよ、寄付金をもとに作り、お金を頂戴して観ていただく映画では、「見逃しました~」は許されませんので、心して取り組みたいと思っています。
なんだか公共の電波を使って試写モニター調査をやらせてもらったみたいですが(苦笑)、「実はここが気になった」「もっとこうしたらどうだろうか」というご意見、大歓迎です。お待ちしています。