先週末締め切りの原稿3本を、ギリギリ仕上げてホッと一息ついたら、首が回らなくなりました。朝起きるとグルグル眩暈はするし、吐き気もする。…根を詰めると後頭部~首~肩~背中が極度にコリ固まり、いつもこんな症状に見舞われます。
昨日(16日)は朝一番でいきつけのマッサージルームへ駈け込んで、40分ほどもみほぐしてもらい、頭痛と吐き気がおさまったところで、松坂屋静岡店で開催中の松井妙子先生の染色画展を観に行きました。
松坂屋で5月の連休明けに毎年開かれる先生の新作展。松坂屋での開催は、今年で14年目になります。
私は美術品業界のことはよく知りませんが、今のようなご時世で、生活必需品でもない美術作品をコンスタントに展示販売できる作家というのは、百貨店にとっても救世主のごとき存在じゃないでしょうか。
今年も初日13日の開店直後、エスカレーターを走って登って6階の美術画廊まで駆け込む人が続出し、昨年買いそびれたという私の知人が、満を持してこの開店ダッシュに加わったものの、「あれこれ選んでいるうちに、あっという間に売れてしまった」と目を白黒させていました。
私が訪ねた16日は、もちろん、大型の作品が一部残っていただけで、ほとんどが売り切れ状態。改めて世の不景気風とは別次元の松井人気を実感しました。
先生は91歳を数えるお母様を、先月亡くされたばかり。長年の介護と創作活動の両立は、端で想像するだけでも大変だったと思いますが、先生は「どんなことでも、今、自分に与えられた役割だと思うようにしているの」と心静かに受け止めておられました。
人は老いると童子のようになっていくといいます。うちの父を見ても「だんだんワガママな子どもみたいになってきた…!」とイラつくことしばしば。先生はそんなときも、「自分の中に、忘れかけていた優しさやいたわりの気持ちが甦って、自分自身が穏やかになっていった」と振り返ります。
また、一年間、この新作展を待ちわびて、初日に会場へ駈け込んで来てくれるお客さんのことを思うと、家の事情だからといって手抜きはできないし、「そういう状況に置かれたことが、また自分を鍛えてくれたと思う」と前向きに語ります。
海外を旅することの多い先生が、世界各地の大自然や動植物の営みを描かれることが多かった例年の新作展に比べ、今年は心象的な作品がより増えたように思いました。しかも、色彩は徐々に明るく鮮やかになり、主人公のフクロウやカワセミの表情やしぐさが、一層愛らしく描かれていました。…あぁ、これは、先生とお母様の心の交感模様なんだなぁと思いました。
…生前のお母様の愛らしいしぐさや、先月の葬儀のときの導師さまの講話を思い出すうちに、肩や首がスッキリしてきました。
会場に居合わせた松井ファンの女性も「先生の作品を見ると、ホッと癒されるのね…」としみじみ。別の女性は「フクロウは持っているから、次はカワセミちゃんが欲しかったの…あぁ、でも初日に来ないとダメねぇ」と売約済みの作品の前で溜息。…わかります、私は14年間、毎年溜息ついてきましたよ。
先生の過去の作品は、日本野鳥の会の会報誌や、茶業関係の情報誌の表紙に使われ、美術ファン以外の方にも目に触れる機会が多かったと思います。
先日、取材した富士山静岡空港のターミナルビルロビーには、牧野宗則さんの「いのちの花」という木版画が陶板壁画になって飾られていました。それはそれでよかったのですが、地元島田(旧金谷)に富士山や茶畑をこれだけ愛らしく描く作家がいて、地元ファンに愛されているということを、県外・海外の人に知ってもらいたかったな…。
左の作品は1996年作「風香る」。やたら富士山をデォフォルメする作家が多い中、これほど静岡らしい風景を素直かつ大胆に描けるって、かえってスゴい技だと思います。
松井妙子染色画展は、JR静岡駅前の松坂屋静岡店本館6階美術画廊にて、5月19日(火)まで開催中です。お時間のある方はぜひお運びください。