「或るホームレス歌人を探る~その十六」 松井多絵子
2009年9月7日 永田選
● 瓢箪の鉢植ゑを売る店先に軽風立てば瓢箪揺れる 公田耕一
永田は評に「瓢箪のリフレインがいかにも飄々とした趣。意味に縛られない作法がいい」と書いている。この一首以後、公田の作品は朝日歌壇に掲載されることなく九か月が過ぎている。
▲ なぜ、投稿しなくなったのか ※次回に詳しく書きます。
2010年6月現在、朝日歌壇に公田耕一は不在である。その理由を探る前に、彼の入選歌を集計してみよう。2008年12月から2009年9月まで。
佐佐木幸綱選 九首
高野公彦選 十七首
永田和宏選 十一首
馬場あき子選 三首
合計四十首である。前年もっとも多く入選した美原凍子の三十首、郷隼人の二十八首よりはるかに多い。公田の場合は九か月である。さらに公田への応援歌はすでに十首も掲載され、朝日歌壇で最も注目されている時に、なぜ投稿を中止したのか、考えてみたい。
※この辺りを書いていたのは二年前の六月のはじめ。連休が終わり夏休み前の、旅行代金のもっとも安い時期。でも評論文の締め切りまであと三週間だ。私はイライラしていた。
❤ 友はみな旅をしている連休に夕餉のための瓜を乱切り
❤ ふきげんな我に焼かれて塩鮭のばら色の肌は土色となる
❤ アフリカの旅より帰りてきし友はわれより偉くゆたかに見える
(歌集『厚着の王さま』より三首) ~次は忍耐力テスト十七です~