えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

「或るホームレス歌人を探る~その三」

2012-12-09 20:37:03 | 歌う

  ★ 「或るホームレス歌人を探る~その三」  松井多絵子

2009年 1月5日 馬場・高野共選

 ●パンのみで生きるにあらず配給のパンのみみにて一日生きる  公田耕一

選者の馬場あき子と高野公彦が採った。朝日歌壇は他の新聞投稿欄と異なり共選である。前年12月の佐佐木、永田に続き、馬場、高野も公田の作品を選び、全員が選んだことになる。さらに永田も次に記す公田の作品を採る。

 ●水葬に物語などあるならばわれの最期は水葬で良し  公田耕一

永田の評には「前衛短歌の幕開けとなった塚本邦雄の記念碑的な歌集『水葬物語』を下敷きにしている」とある。読んでいるとしたら、彼はかなり短歌に通じているのではないか。「物語などあるならば」など表現が達者だ。

❤公田耕一さんへ捧げる一首    松井多絵子

 パンのみに生きているのだ私は食べながら世を嘆いているのだ

(その三)まで読んでくださった皆様その忍耐力に感謝してコーヒーを用意します。幻のコーヒーをどうぞ。  親切な松井多絵子  (その四)もよろしくね。


「あるホームレス歌人を探る~その二」

2012-12-09 13:53:15 | 歌う

  ★ 「或るホームレス歌人を探る~その二」   松井多絵子

十二月二十二日 佐佐木選

●鍵持たぬ生活に慣れ年を越す今さら何を脱ぎ棄てたのか  公田耕一

四人の選者のなかで佐佐木だけが採っている。奪われるものは何もないという生活は気楽であろう。しかし淋しい。淋しすぎる歌だ。 

2008年はアメリカのサブプライムローン問題が深刻化する時期に新年を迎えた。世界経済が失速し、9月のリーマンブラザーズ破綻は不況に追い討ちをかける。アメリカが風邪をひけば日本は肺炎になる。そのような不安な年末、世相にきわめて敏感な朝日歌壇に、(ホームレス)公田耕一が現れたのである。新しい年となり、朝日歌壇に公田の入選歌がつぎつぎに掲載される。

 ❤公田耕一さんに捧げる二首   松井多絵子

鍵を持たず暮らせる人とスペアキーふたつありても不安なわれと

住むところあれど心の住処なきわれを羽毛のコートが包む

※ (その二)もお読みくださった忍耐強いみな様ありがとうございます。今日は日曜ですので少し短くしました。折角の読者を逃がしたくありませんから。明日の「その三」もよろしくお願いいたします。最期までお読みくださいました方には粗品をさしあげます。嘘つきの松井多絵子より