★ 「電飾は木々をいじめる」 松井多絵子
12月になり黄葉はおおかた散っています。落ち葉を踏みしめながら最寄の駅へと歩きました。まだ黄葉の残っている木々に、電飾のコードが巻きつけられているのが目につきます。その木々は老人を、私を思わせます。枯れ木に夜は電飾の花を咲かせるなんて、カワイソウです。
❤ 「電飾のわが街 十首」 松井多絵子
足もとに声なき言の葉ちりばめる二百の秋を見てきし公孫樹
夭折とう言葉がまぶしい黄葉を失いし枝はひかりを纏う
一ヶ月前からシャッター下ろしてる宝飾店の「きらきら星」は
閉店か、「ビューティ吉野」は幾度もわたしの髪と心を変えた
二年前この街頭で候補者が日本を変えると叫んでいたが
歳末の商店街にたれさがる新巻これは鮭の死体だ
落葉の眠れる木々に電飾し人を集める、これだってイジメ
年末の夜道をひとり歩くとき火星の孤独がわれに近づく
火星は今ふきげんだろう人工のひかりの街を見下ろしながら
電飾の街のはずれに灯のなきオフィス街あり、白骨樹林