★「朝日歌壇⑦」~美原凍子は冬のきら星~ 松井多絵子
朝日歌壇の読者で美原凍子を知らない人はないだろう。この12月3日も2首入選している。三年ほど前に「ホームレス歌人・公田耕一」を調べていたとき、美原凍子の209年の入選歌を集計すると40首、ダントツの1位であった。
❤ 「さよなら」と振るため「また」と握るため手はあるものかわかれゆく道 (夕張市)美原凍子
そのころ凍子は破綻した夕張市の住人であり、苦境の夕張市を纏っていた。その後、福島市の住人になる。
❤ 山里の伐採されし桃畑のキリカブ、キリカブ、キリカブに雨
❤ 風媒の桃花はももいろの風に抱かれふふとちさき実むすぶ
❤見はるかす安達太良山の上にある秋天いよよ深くレモン忌
春はももを詠み秋は安達太良山を、しかし凍子の平穏は続かなかった。3,11によりまた受難の人になる。美原凍子とはペンネームだろうか。その名のように、ひんやりと光る、冬のきら星の歌人になってしまった。
❤ もういないあなたをつれて冬がくるふるさとずんずんずんずんさみし
※二日前の12月3日の美原凍子の入選歌である。