えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

大辻隆弘さんの受け売り

2013-07-31 14:25:40 | 歌う

           「大辻隆弘さんの受け売り~大学短歌会はいま」

 昨年8月から12回、現代短歌新聞に大辻隆弘さんの「大学短歌会はいま」が掲載された。大切な情報を提供してくださった大辻さんに感謝しながら受け売り。見逃した方々のために。

 大学短歌会は掲載順に ①京大短歌 ②本郷短歌(東大) ③東京外語大短歌
 ④早稲田短歌 ⑤慶応短歌 ⑥岡山大短歌 ⑦北海大短歌 ⑧大阪大短歌 ⑨九州大
 ⑩東北大短歌 ⑪立命館大短歌 ⑫就実大短歌

 このなかには、この1年の間に創設された短歌会も多い。なぜ、学生短歌が盛んなのか。
学生短歌会には、結社のような主催者はいない。たまたま同じ大学に在籍した短歌を愛する若者が集まっている。そんな浮遊感と軽やかな連帯感があふれている。

 この一年大学短歌会OBや現役学生による多くの同人誌が発行された。

★ 「率」~吉田隼人(早大) 藪内亮輔(京大)

★「中東短歌会」~千種創一(外大OB) 町田匙(東大)

★「短歌男子」~廣野翔一など

 日本の各地から若者たちの新しい歌がつぎつぎ聞こえてくるなんて楽しい。   

✿ひとりではリズムにならぬ黒猫の歩幅に合わせた歩いて行こう
                          歌集『えくぼ』より

 ときには追い越したり、遅れたり、回り道をしたりしながら仲間とともに詠んでくださいね。 
                                  7月31日  松井多絵子      


放浪を見つめる田中亜美

2013-07-30 14:35:52 | 歌う

         「放浪を見つめる田中亜美」~朝日俳句時評より~

 わたしたちは自分ができないことをする人を応援したくなる。たとえば放浪の俳人・種田山頭火。歩かない日はない、飲まない日はない、作らない日はない。生涯に8万句も作ったといわれる。父の放蕩、母の死、家の没落、ともなれば現実から逃れたくなるであろう。
 ❤ 分け入つても分け入つても青い山
 行乞の生活を送り、一生を放浪して過ごした。

 山頭火の生誕約60年後に村上護が生まれた。彼は大学生の頃から山頭火にあこがれ、世界放浪の旅をした。初の著作『放浪の俳人山頭火』はベストセラーになり、多くの山頭火ファンを生み出した。その村上譲という文芸評論家についての田中亜美の「朝日俳句時評」が7月29日朝日朝刊に掲載されている。

 田中亜美の時評は村上譲が今年の6月29日に亡くなったことからはじまる。1941年生まれの村上譲が山頭火にあこがれ世界放浪の旅に出たころはヒッピームーブメントが盛りあがっていたらしい。『放浪の俳人山頭火』は村上が30歳の頃の著作であろう。大学生の頃に世界を放浪できたのは経済的に恵まれていたからできたこと。山頭火の放浪とは質が違うのではないか。しかも貧しく、行乞の放浪の山頭火を書いた本がベストセラーになり若くして豊かになったであろう。

 田中亜美は「村上の評伝の優れた点は、作品の解釈はもちろん、実際に足跡を辿り、関係者からの聞き書きを丹念に重ねた資料性にある。俳句という短詩型に、マグマのように潜む、烈しいエネルギーを伝えた」 村上護さんは語り部だったのですね。「種田山頭火」の。

  7月30日 歩きたいが歩けない☀が沈むまで  松井多絵子


朝日歌壇7月29日

2013-07-29 14:15:46 | 歌う

         「朝日歌壇7月29日」

※今週も永田選者はお休みで、3人の選者が13首づつ選出している。

<高野・馬場共選>
☆☆ 小言をいう母の若さのうれしくてつばさひろげるように受けおり
                          (垂水市) 岩元 秀人

 おおかたの母親は常に小言をいう。成長しても子供は子供であり何かと気がもめる。しかし、加齢と共に「老いては子に従う」ようになりやすい。「小言をいう母の若さがうれしい」という岩元さん。小言をいうほうが母らしくていいのだ。「つばさを広げるように」とはどんな鳥の翼か。大きな白いやわらかい翼に思える。やさしいオジサンですね、岩元秀人さんは。

 朝日歌壇でおなじみの岩元秀人さんは、今は垂水市に住んでいられるようである。以前は、相模原市、学校の先生だった。

❤雨の日の窓近く立ち教師とう監視カメラの眼球暗し というシャープな歌をおもい出す。

 少し調べてみると、2010年4月19日の朝日歌壇に

❤卒業の列を見送りつつ立てば背に黙深き職員室あり
            (相模原市)  岩元 秀人   

岩どうぞ大きな柔らか翼を大切になさいますように。そして歌の翼も羽ばたいてください。

  7月29日  さあ、これから大きな翼の帽子を被って草取り  松井多絵子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   


傘は杖にも凶器にも

2013-07-28 14:14:41 | 歌う

            ☂「傘は杖にも凶器にも」☂

✿ラウンジより見下ろす街に傘の花あまた咲きいて動きやまざる
                         歌集『えくぼ』より

 さまざまな傘が行きかう雨の日の街。ビルの窓から見下ろせば傘は動きまわる花。流れている花にも見える。「チャレンジ老女A子」は短歌と俳句の二刀流。写真はコンクールに入選する腕前。でも彼女は丘登りで腰痛になってしまった。杖をつくとオバアサンに見えるので柄の長い傘を杖にしている。雨傘にも日傘にも杖にもなる「傘ってありがたいわ」と彼女。
その「ありがたい傘」が凶器になる。東京都の「ヒヤリ・ハット調査」から。

1、大雨の日、ビニール傘が強風にあおられて折れ、その破片で指にケガ。18歳、女性
2、前の人の傘が風に飛ばされ顔に当たった。 58歳、男性
3、歩道に捨てられた傘が自分の方に飛んできた。65歳、男性
4、傘をさして自転車に乗った学生が猛スピードでぶつかってきた。56歳、女性
5、風で傘があおられて転び、膝をすりむいた。33歳、女性

 ゲリラ豪雨が相次ぎ、傘を使わなければならない。強風時に壊れにくい「耐風傘」も売られているが強度にこだわりすぎると危険。体ごとあおられてケガのもとになる。自転車に乗りながらの傘さし運転も危険、周囲の人に危害の場合、東京都では「五万円以下の罰金」とか。

 ㊟ 壊れた傘は道に放置しないこと。

 傘の花を眺めていたらこの世の外に飛ばされるかもしれませんね。
                     7月28日   松井多絵子


茂吉は買わない

2013-07-27 14:58:53 | 歌う

          「茂吉は買わない」

 スーパーの桃を見ながら思い出していた。わたしの歌集『えくぼ』を読んでくださった方からいただいた面白いお便りのことを。

❤茂吉なら買うかもしれぬ白桃のうすべに色の肌が眩しい

~松井さん、この歌のことですけど茂吉は決して買いませんよ。彼はケチですから。でも、もらったら喜んで、自分ひとりで全部食べるでしょう。~

 そうかもしれない。茂吉はケチだとか、食いしん坊だとかよく書かれている。茂吉の悪口をエッセイでたびたび書いていたのは、茂吉の次男の北杜夫。わたしは茂吉よりも先に『どくとるマンボウ航海記』の作者・北杜夫を知った。面白い小説家だ。そのオヤジが大歌人の斉藤茂吉なのだ。そういえば国語の教科書に載っていたっけ。

 わたしが短歌を始めたとき茂吉はこの世にいなかった。死人に口なし、極めて
評判が悪い。怒りっぽい、わがまま、いばる、ケチ。近しい歌人たちたちにはヤレヤレな男だったであろう。北杜夫はその人たちに「オヤジは全く嫌な男でボクもキライでしたよ」と話したり
書いたりする。茂吉の弟子たちへのサービスだったかもしれない。

 茂吉の大好物は「うなぎ」 ある会席でうな重がでた。茂吉は隣席の歌人に「お前のうなぎの方が大きい。俺のと変えよう」そして交換した。ところが「いや。そっちの方が大きい」と言い又交換した。食い意地が汚いなどと言われたりしたようだが、近しい人たちの茂吉への緊張をほぐすための冗談、茶目っ気だったのではないか。北杜夫も茶目っ気があり、だから人々を楽しませる小説を書けたような気がする。 今夜は白桃を明日はうなぎを食べようかしら。 
      7月27日  今夜はうなぎを、明日は白桃にしょうかしら  松井多絵子