えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

古河の文学散歩

2013-05-31 14:22:52 | 歌う

           「古河の文学散歩」

★あじさいが咲いていますかあの坂に、あの急坂をなだれるように
                     松井多絵子歌集『厚着の王さま』より

 5月30日すでに梅雨入り、狭庭のあじさいも咲き揃っている。今日は歌人クラブ東京の会員たちと文学散歩、42名がバスで茨城県へむかう。長塚節生家~和田家で昼食~永井路子邸~古河文学館、帰宅したとき万歩計は9752歩。消費カロリー186、脂肪燃焼量26g。

 10数年ぶりに訪れた長塚節の生家は前より若返ったように見えたが築150年。俳優になれそうな遺影の長塚節を見ながら37歳で亡くなるなんて、たかが結核で亡くなるなんて残念に思う。生きていたら136歳か。「土の歌人」と言われる長塚節。「土の小説家」でもありますね。

 古河文学館の山小屋風の大広間におんがくが流れていた。展示室で沖ななもの歌集『衣装哲学』『神の木民の木』そして色紙、沖ななも自筆の原稿に見入る歌人クラブの老男老女。 

★古河文学散歩マップはよれよれになり糠雨の暗緑の道

   紅葉の頃にまた古河を歩きたいです。   松井多絵子


嘘の見抜き方

2013-05-29 13:49:29 | 歌う

           「嘘の見抜き方」

★猫は耳を尖らせわれの嘘を聞き夫はタバコのけむりを放つ
               松井多絵子歌集 『厚着の王さま』より

 新聞の本の広告『嘘の見抜き方』を見ながら私の古い歌を思い出していた。今は猫を飼っていないが、猫は人間の嘘を見抜くような気がしたことが度々あった。あの夜の飼い猫プーニヤをおもう。あのとき猫は目をとじていた。しかし耳はピーンと張っていた。夫より猫のほうが怖かった。メス猫だったから女ごころが分かる。女の嘘を見ぬいてしまう。

▲「目を見て話せ」は逆効果と広告は言う (たしかに私は嘘をつくとき猫の目だってダメ。)

▲表情の「持続時間」に注意せよ  (嘘を言うときはかなりエネルギーを使う。3分以内か)。

▲嘘を言わずにカマをかける方法  (これは嘘の中級か。ぜひマスターしたい)

▲「イエス、ノー」で答えない  (テレビの国会中継を見逃さないこと)

▲黙秘する人の心を溶かすフレーズ  (これこそ短歌だ。人の心を蕩けさせるフレーズを駆
  使することができれば○○賞を、花束を独り占めできる。選考委員達が見抜けない嘘。

『嘘の見抜き方』の著者は元検事。嘘を見抜く達人になることは大嘘つきになることか。この本の広告の隣は『無力』その隣は『この世はウソでできている』 
 5月29日 まひる 「あゝ、やんなっちゃった」 松井多絵子


手のひらの花火

2013-05-28 13:37:58 | 歌う

        「手のひらの花火」~山崎聡子の第一歌集~

山崎聡子さま  三日前、わが家の郵便受けにあなたの歌集。うれしかったわ。大切な一冊をありがとう。夏が始まろうとしている今、『手のひらの花火』とはタイミングのいいこと。すこし危ない気配の漂う歌集ですね。いま51頁を読んでいます。

★手のひらに西瓜の種を載せている撃たれたような君の手のひら

 君は危ない男かもしれない。「気をつけてね。聡子さん」 あなたとの出会いは短歌研究三賞の授賞式、注目の新人賞の山崎聡子、その隣に立った評論賞の私はまるであなたの保護者でした。今、いただいた歌集の三分の一を読み終えて「匂い」の歌の多いとに気づきました。嗅覚が鋭いですね。すぐれた歌人たちは五感が抜群ですから、嗅覚はあなたの武器。

★理科室のホルマリンに似た甘い香が夏の土から匂い立つなり

★雨の日のひとのにおいで満ちたバスみんながもろい両膝をもつ

★演劇部顧問のあまい体臭が照明ルームの暗さににおう

★この部屋は沼の匂いがするよねと、金魚のシャツを着た君が言う

 そのほか●死ぬときはプールの匂いを ●ピエロの動物じみた体臭 などなど
さて、今まで読んだなかで私の一番好きな歌は

★終バスに浅い眠りを繰り返しどこにでもゆく体とおもう

 ゆったりした調べに私のすべてが解放されて深く眠ってしまいそう。今、気温は22度、このまま時が止まってくれたなら。今日はここまでにします。くれぐれも「君」には気をつけてね。
  5月28日  あなたの保護者 松井多絵子            

 

 


朝日歌壇5月27日

2013-05-27 14:15:52 | 歌う

             「朝日歌壇5月27日」 ~独りになりたい男たち~

 3・11以来「絆」という言葉が氾濫している。にんげんは一人では生きていけない。人と人との絆あってこその世ではあるが、人との関わりはときには重荷にもなる。今週は独りになりたい男の歌を4人の選者の入選歌から、1首づつ取り上げてみる。

<馬場選>
★校長を終へにし友が真昼間の温泉に深々と瞑想してゐる
                        (行方市) 額賀 旭

 定年退職した校長が温泉に浸かりながら瞑想しているのを妨げないように見ている作者。在職中は、教師、生徒、父兄などの人間関係で気苦労が絶えなかったであろう。

<佐佐木選>
★お笑いの内に潜める個を想う「ああ、いやんなっちゃった」牧伸二逝き
                              (町田市) 富山 俊朗

 人を泣かせるのは易しいが笑わせるのは難しい。牧伸二は高齢にもかかわらず人を笑わせる仕事をしていた。辛かったのではないか。「ああ、この世がいやになっちっゃた」が遺書?

<高野選>
★二次会へゆく人達に見送られわれは一人で二次会へ行く
                   (東京都) 近藤 しげを

 二次会は本音で話せる場である。とはいうものの気安く離せない場合もある。気を遣いながら飲む酒は酔えない。一人の二次会とは気が利いていますね。

<永田選>
★枕木に歩幅あはせて歩みたり廃線となりし一駅区間
                    (長野県) 沓掛喜久男

 廃線になった線路の一駅区間はまるで一行の詩。枕木は言葉か。線路を歩く男の孤独、
春の野の男の孤独、長野県の。 5月27日 松井多絵子 


この夏は日傘男子

2013-05-26 14:10:54 | 歌う

            「この夏は日傘男子」

★わが家のすぐ前にきて日傘とじ水色の小さき屋根を失う  
                松井多絵子歌集『厚着の王さま』より

 まだ5月だが私は日傘と共に歩く。帽子を被りサングラスをかけて更に日傘を。シミを防ぐだけでなく紫外線から目も守らなければならない。以前は日傘をさしながら折り畳みの傘をバッグに入れて外出していた。防水加工された日傘のおかげで晴雨兼用、ありがたい。すみれ色、ばら色、びわ色、ときには黒日傘など、傘のおしゃれを楽しむこともできる。しかし旅さきなどで置き忘れることも多く、私の傘は安もの、千円以上のものは二本だけである。

 今日の朝刊で「日傘男子」の記事を読み、男は日傘をささないことにあらためて気づく。あるデパートで男子専用日傘売り場を設けたところ、すでに昨年の3割増、光と熱を遮る効果が高い生地を使った日傘が特に売れるらしい。40~50代の男性に人気があるそうだが老人こそ日傘が欠かせないのではないか。熱中症予防のためにも。

 環境省も「日傘男子」を応援、発汗量が2割も抑えられるという結果を発表した。しかし日傘をさす男性はまだ少数であり傘のメーカーは今後に期待しているそうだ。男性が日傘をさす文化は昔あったのである。明治時代後半から昭和初期に、「絹紬」という高価な絹製の日傘が。
 「日傘は持ち運べる木陰」として熱中症などから身を守ることを傘専門店の社長・宮武和広さん(54)は力説している。男が日傘をさすのは軟弱だなんてカッコをつけている場合じゃない。
もうじき猛暑、日傘は必需品ですよ。 5月26日 松井多絵子