えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

あるきだす遠野真

2015-09-30 09:10:41 | 歌う

            ・・・ あるきだす遠野真 ・・・

 昨29日朝日の あるきだす言葉たち は今年の短歌研究新人賞を受賞した✿遠野真
彼は1990生まれ、千葉大学在学中である。「未来短歌会」に所属。先日、服部真里子歌集批評会で彼と初めて少しオシャベリをした。大柄な青年でときどき広島の投手・マエケンみたいに見えた。✿「強さと優しさの再定義」8首から気になる5首をとりあげてみる。

    ♦ 苦しんだ人だけが行く地獄だよそこでもっかい苦しむんだよ

 ※ 彼はまだ若いからこんな歌を作れるのだ。老人のわたしは「地獄」なんて言葉は怖くて使えない。この世で苦しんだ人は天国へ行けると安心していたのに。ヒドイわ、遠野君。
「もっかい」は木灰ではなく大阪弁の「もう一回」なのだろうか。 

    ♦ 保冷剤握って夜へ飛び出していこうよ(誰に笑いかけたい?)

 ※ 保冷剤は消臭剤にもなるそうだ。夜の気ままな外出、さほど親しくない彼女をケータイで呼び出すのだろうか。そして彼女に保冷剤をさし上げる。嫌われますよ、彼女に。

    ♦ 満ち欠けをたいらかにするあかときを心待ちして人が滅びる  

 ※ 夜の明けるころは満月も半月もあいまいなかたちになっている。ここまではしっとりした表現だ、下句が意表をつく。「心待ちして人は滅びる」 若い人には死は遠いのだ。、

    ♦ 手だ。とても柔らかくって小さくて誰の時間も延ばせないせない手だ。

 ※ 1連のなかで私はこの歌が一番好きだ。誰の時間も延ばせない手だ。なるほどである。魅力あふれる下句だ。手は詩歌に欠かせないモチーフなのである。

  ♦ 気負うなよお前が棄ててきたものはお前に飼われてたわけじゃない(ちゃんと見ろ)

 ※ 私が思っているほど他人は私のことなど気にしていないことは淋しい。遠野くんはすでに大人だなあと思う。でも、(ちゃんと見ろ) は蛇足のような気がするが、、。

                                  9月尽日  松井多絵子   


もし月がなかったら

2015-09-29 09:52:25 | 歌う

              ・・・ もし月がなかったら ・・・

 9月27日の中秋の名月に続き昨28日はスーパームーン。月が地球に最も近づき一年で一番うつくしいらしい。隣家と我が家の空間にぽっかり月が浮かんでいた。通常より14%大きく、30%明るく見えるそうだが、たしかに昨夜の月は極上だった。このお月様に願い事をすれば叶うことを忘れて、ただ眺めていた。今夜でも願い事は叶うだろうか。

 秋の夜は月がことさら美しい。月のイメージは日本では古くから短歌に詠まれてきたが、「日本書紀」では男性的な荒ぶる神だった。万葉中期以降は優しいイメージに変わってゆく。
(月見れば千々にものこそかなしけれわが身ひとつの秋にはあらねど 大江千里) この歌も月と秋との関係が著しい。月は私たちにいみじみとした感情を抱かせる。

 月が出ないと秋の夜は味気ない。それどころではない。かなり前だが愛知万博の或る企業館で私は 「もし月がなかったら」 という映画を見た。特大の画面に強風に荒れる狂う地球、月がなかったら地球は滅びてしまう、地球になくてはならない、お月様は。

      月のなき地球の危機をロボットが警告している 「企業館M」

      もし月がなかったならばそんなこと考えたことは一度もなかった 

      月は今われを見ている駅ビルの窓とう窓も月を見ている 

   、  すこしだけ月へ近づくための塔、スカイツリーは電飾まとう

                               歌集『厚着の王さ』より

  ✿俳句情報

♦ 坂本謙二句集 『良弁杉』 第5句集 (KADOKAWA・本体2700円)

           ひそやかに力をこめて冬柳

♦ 岡田史乃句集 『ピカソの壺』 第4句集 (文学の森・本体2700円)

           身の内に降る秋雨の湿りかな

 

 


朝日歌壇は食欲旺盛

2015-09-28 09:18:08 | 歌う

            ☀ 朝日歌壇は食欲旺盛 ☀

 本日9月28日の朝日歌壇を見ながら食欲の秋だなあと思う。俳壇には食べものの句は2句だけだが歌壇は約10首。歌人には食いしん坊が多いのか、私も食べる歌をよく詠む。

★お弁当うなぎおこわのおにぎりで午後の授業に力が入る  (西宮市) 室 文子、

 馬場あき子と高野公彦が選んでいる。朝日歌壇の子供歌人としておなじみの室文子のお弁当がハンバーグだったら入選しない。「うなぎおこわのおにぎり」は冷凍食品なのか、ママのお手製なのか。「うなぎ」も「おこわ」も老人向きの食べ物だと私は思っていたら、、。

★鰤漁の網をクレーンに高々と吊り上げ洗う浦町の秋  (石川県) 瀧上 祐幸

 鰤の照り焼きは私の好物だ。スーパーで切り身の鰤を買うのでこの魚の顔も姿も知らない。クレーンで鰤の網が吊り上げられ洗う豪勢な光景を想うと楽しくなる。馬場あき子と佐佐木幸綱が選んでいる。お二人の選者もブリの照り焼きがお好きなことだろう。

★いつか店を持つため毎朝修行中卵三個で焼く玉子焼き  (富山市) 松田わこ

 馬場あき子選。松田わこはいつのまにか中学生になっている。彼女は「卵」と「玉子」の違いを心得て詠んでいる。いま女の子の憧れの職業は「食べもの屋さん」。外食を好むママと一緒にファミレスやピザハウスで食事をしている女の子の楽しそうなこと。短歌だけでなく
料理も上手になってくださいね。松田わこサマ。

★托鉢後十六名の雛僧はカレーを全員ニ度お代はりをせり (東根市) 庄司天明

 佐佐木幸綱が選出している。雛僧とは幼い僧。小僧のことらしい。常に精進料理を食べていたらカレーはさぞオイシイだろう。子供たちが好きな食べ物のNO1はカレーとか。大人だってカレーは大好きだ。今、10時50分だが私もカレーライスが食べたくなった。

                             9月28日  松井多絵子

 

 

 


魚住アナの話し方

2015-09-27 09:14:11 | 歌う

            ・・・ 魚住アナの話し方 ・・・

 ✿ 女らのとりどりの色の唇の動きやまざるオープンカフェ―  松井多絵子

 わたしたちの周りの生き物はなぜか話すことできない。それなのに人間、とくに女たちは絶えず話す。話しすぎて人間関係を歪めてしまうこともある。口下手で相手に自分の思いが伝わらないことに悩んでいる人もかなりいるのか、フリーアナウンサーの魚住りえ(43)の本が売れているらしい。「たった1日で声まで良くなる話し方」(東洋経済新報社)が8月から発売されている。

 魚住アナが日本テレビに入社したのは1995、バラエティ番組などで活躍、04年にフリー
に転身、アナウンス業の傍ら、「声の出し方」 「話し方」 「会話のコツ」 などの指導を。渋谷区で魚住の主宰する教室の発声法や滑舌改善のためのトレーニング、説得力のあるプレゼン方法など成果につながる力を養うことを目指す。ここには経営者や営業職の会社員などが集まっているらしい。

 著書では電話や商談で役立つ会話術や人をひきつける著名人の話し方の分析なども紹介する。「声と話し方は仕事の成否を左右するほど大事なのに、話すことに無頓着な人が多い、と。 ※ 私も同感だ。文は読みやすく共感できるのに、批評会などでの発言は理解できない「先生」。私だけでなくA子もB子も分からないと言う。書けても話せないのは話すことに無頓着だからだろうか。

 「一人でも多くの人が話すことに自信を持てるよう、音声表現の伝達者として活動していきたい」と魚住りえアナは昨26日朝日夕刊で語っていた。さわやかな笑顔で。

    お話はよくわかるけど、お書きになった文は私には理解できない方も、、。

                           9月27日  松井多絵子

 


服を捨てる

2015-09-26 09:18:27 | 歌う

                ~ 服を捨てる ~

 ✿ もう我に着てはもらえぬ服があり、くびれた胴にシルクの黒蝶   松井多絵子

 「フランス人は10着しか服を持たない」「服を買うなら捨てなさい」、新聞の本の広告は「捨てなさい」が多い。次々に新しい商品が出るのだから、いま持っているものを捨てなけければならない。新しい商品がどんどん買われなければ不況になる。友だちのオシャレ老女A子は戸建てから2DKのマンションへ引っ越すとき捨てることの辛さを痛感したと言っていた。本は捨てられたけど、服はなかなか捨てられないと。捨てることを提案する本を出している女たちは稼ぐことのできる女たちだばかりだ。

 新刊の『何を着るかで人生は変わる』の著者・しぎはらひろこ は日本ベストドレッサー賞選考委員、服飾戦力家、8万5000人以上のアパレル販売員やスタイリストに服装指導。
「その無難な服では稼げません」と。選りすぐりの10セットの服と丁寧に向き合うことがあなたを成長させ幸運を呼ぶ。朝、洋服を選ぶのにかける時間や労力をすて、その時間を仕事に向ける。成功している人は毎日同じ服を着る。必要最小限の服で仕事に集中する、。

 ニューヨークのあるアートディレクターは白いシャツと黒のズボンが定番、同じ服を着ることはストレスを減らす、毎日おなじ服を着ることで物語の主人公になれる、自分を貫くことができる。しかし、これは有能な女性の場合のこと、彼女たちは何より時間が大切なのだ。そしていつでも服を買える経済力があるのだ。

 時間はたっぷりある年金暮らしの老女と、仕事が忙しい女とは違う。捨ててしまったらもう買うことが出来ない女たち。古い服をあれこれ組み合わせて着る。服は思い出をまとう。古い服にあたらしいジャケットやストールを組み合わせて私は新年会に出たりしている。「捨てる」という風潮にはたやすく従えない老女のひとりであろ。 

      言葉をあたためながら。でも言葉を捨てなければ短歌はできませんが、

                        9月26日  松井多絵子