えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

黄金休暇

2013-04-30 14:25:10 | 歌う

           「黄金休暇」

  今まさに黄金の休暇。ことしは国内旅行が例年より多いとか。私は家で過ごしています。混雑して旅行代金の高いときは避けることにしていますが、みなさんが楽しんでいる時に暗い厨で食事の支度やら後片付けをしていますと、つい不機嫌になります。私の歌集『厚着の王さま』のなかに黄金休暇のボヤキの歌が5首もありました。

       「ネギを乱切り」  松井多絵子

友はみな旅をしている連休に昼餉のためのネギを乱切り

ふきげんな我に焼かれて塩鮭のばら色の肌は土色となる

花よりもケーキがほしいブランディ入りのケーキを濃き珈琲を

アフリカの旅より帰りてきし友はわれより偉くゆたかに見える

ボロ市に買いしインドの壺を持ちインドより帰国せしごと我は

  ※今日で4月が終わり、今年も三分の一が過ぎ、早いですね、時の流れは。
                                    松井多絵子   


朝日歌壇4月29日

2013-04-29 14:24:39 | 歌う

          「朝日歌壇4月29日」

 春になったのを喜んでいるのは人間や草木ばかりではなく、鳥は空を自在に飛びまわり、喜びを表している、うらやましいですね。三人の選者が1首づつ鳥の歌を採っていられます。

<馬場選>
★オオワシは阿寒の空たかく舞ふ絶滅危惧種となりしを知るや
                       (つくば市)  近藤 矩子

 翼が60センチもあるオオワシはアジアに多いのに日本では絶滅危惧の鳥、あのオオワシは自分がそんなに貴重な鳥であることを知らないだろうなあ、と空飛ぶオオワシを見上げる作者。

<佐佐木選>
★ヒヨドリがお椀の形に啄んだ林檎の花咲く除染待つ庭
                     (福島市) 澤 正宏

 春、赤みがかつた白い五弁の花が枝先に咲き、その球形の頭部に実がなる。ヒヨドリよ、林檎の花を食べないでほしいと願う作者。鳥には人の気持ちの伝わらないもどかしさ。

<高野選>
★カモメたち大きく円を描いては素っ気なく去る横顔が好き
                      (横浜市) 江連 夏帆

 カモメは港湾の海上に群がって棲む。海の青にその白い胴が近づいたり離れたり。横浜に住む14歳の作者にはカモメがお友だちなのだ。結句の「横顔が好き」が冴えていますね。

※永田選者は水槽の亀の歌を採っていられますが、カメは爬虫類なので割愛しました。
  (可児市)の豊田正巳さま、悪しからず。 松井多絵子


春の紫綬褒章に小池光さん

2013-04-28 13:44:12 | 歌う

         「春の紫綬褒章に小池光さん」

  春の紫綬褒章に歌人の小池光さんが決定。おめでとうございます。小池光さんは、あらためてご紹介するまでもない大歌人ですが、短歌のことはご存じない方に氏のプロフィールを。
 昭和22年6月宮城生まれ 結社は「短歌人」 歌集『バルサの翼』『滴滴集』ほか多数。昨年は
エッシスト・クラブ賞を受賞。「短歌研究5月」より氏の最新の7首を引用します。

        春先点描    小池 光

いまにして正岡子規のうた読めば歌詠むうれしさそこにかしこに

アスパラガス茹で上がるまでのときのまに世になききみを強くおもへり

老衰の日に日にすすむ猫とゐてかくれもあらぬ春となりたり

アネモネの真紅の花も散りしかばさびしくなりぬわが玄関は

日光のやまなみ遠く見えながら麦畑の道にゆまりを放つ

お父さん来てくださいと夢の中にてわが子いひたり悲しかりける

庭甕の水を浴びゐるひよどりを子規のまなこにわれは見むとす

※小池氏の講演を何度となく聴きましたが、いつも熱っぽくて魅力的なお話。難しいことをやさしく話される方。この7首も氏の春先のこころの揺れが柔らかく伝わってきますすね。松井多絵子
                                       


郷に入れば郷に従うサル

2013-04-27 14:44:27 | 歌う

         SARU 「郷に入れば郷に従うサル」 SARU

 数年前の今頃、動物園を歩きながら動物たちは私に無関心なことに気がついた。しかしサルは違う。「あれ?」「おや!」「やあ!」というように私を見ている。

❤わが投げしキウィを捕手のごと掴むサルよ今のはストライクだね
❤こんなときサルがにっこり笑ったらキウィ1個をまた投げるのに
                                 松井多絵子

 4月26日朝刊にサルについての面白い記事があった。以下はその要約である。

 サルも「郷に入れば郷に従う」ことが英国などのグループの研究でわかった。南アフリカの野生ザルは群れを移ると、過去の食習慣を捨てて新しい群れのルールに従ってえさを食べた。実験で赤と青に色分けしたトウモロコシを準備。ある群れに与えるえさは赤をおいしくして青をまずくした。3か月かけて同じ色のえさだけを食べるようにした。その後、10頭が群れを移ったが、このうち7頭は味見せずに、他のサルが食べているのと同じ色のまずいと思っているえさを食べた。元の群れはおいしかった色のえさには手を出さなかった。子ザルは1頭を除いて母親が食べる色の餌をたべた。研究チームは「試行錯誤するより、ほかをまねる方がいいという戦略」と分析しているとのことである。 ※人間と似ていますね。サルたちは。 松井多絵子


ヒルズ10年その光と影と

2013-04-26 14:21:44 | 歌う

         「ヒルズ10年その光と影と」

❤高層の街を縫うごと歩くとき夕月はビルに削られている
                            松井多絵子

 六本木ヒルズが開業10年を迎えた。東京都心で職住近接を目指した国内最大級の再開発の街は今も年間4千万人を集める一方、たびたび事件や事故の舞台にもなった。
 04年3月、自動回転ドアで男児死亡。06年1月、ライブドアの堀江貴文の逮捕。06年6月、村上ファンドの村上世彰の逮捕などいくつもの影がある。が防災に強い街にしたことは評価できる。緑地や道路、公開空地も設けている。

❤高層のビルは地下へも伸びていてB4階に酒を売る店
                            松井多絵子

 あの堀江貴文はいま40歳、粉飾決算事件で服役し、仮釈放された。24日の新聞のインタビューに「ヒルズにはいい思い出ばかりですよ」と言っているが、頬杖をつき俯く彼の写真は暗い。あの「ホリエモン」の光は消え失せている。「ふたたびヒルズを拠点に構えるつもりはない」とのことである。開業10年を祝う文字が六本木ヒルズの玄関口の外壁を飾っているらしい。
                             4月26日 松井多絵子