えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

歌人クラブの文学散歩

2014-05-31 09:03:03 | 歌う

          「歌人クラブの文学散歩」

☀ 晴天の城ケ島こそ楽しけれ文学散歩39名   松井多絵子

 1昨日、5月29日8時半に新宿からバスで城ケ島へ向かった。1年に1度の歌人クラブ東京ブロック「文学散歩」。参加者は39名。11時半に「北原白秋記念館」に到着、見学する。

 北原白秋が三浦半島の三崎を初めて訪れたのは1910年。一泊し「春の名残」を詠む

✿いつしかに春も名残となりにけり昆布干場のたんぽぽの花  (白秋・25歳)

 2度目に白秋が三崎を訪れたのはその二年後、松下俊子との不倫による姦通罪で告訴され、14日間拘留され、釈放された後である。記念館で俊子の写真を見て「きれいな人ねえ。人妻なのに白秋がのぼせるわけね」「でも晩年の60代の彼女はやつれたオバアサンよ」などなど。二人は結婚したが1年位で別れたらしい。

✿夕されば涙こぼるる城ヶ島人間ひとり居らざりにけり  白秋『雲母集』より

 三埼港前の「鮮味楽」にて昼食。マグロや鮮魚のどっさり盛られた豪勢などんぶり、
白秋のことより食べ物の話に夢中になる歌人たち。海の近くでの食事は食欲も盛んになる。
昼食後に ♠ 見桃寺(桃の御所) ♠ 本瑞寺(桜の御所、此処から見下ろす海は絶景)そして ♠ 向ヶ埼公園(旧居・異人館跡) ♠ 大椿寺(椿の御所) ♠ 宮川公園で2基の風車を見る。オランダ的な風車ではない。風力発電の風車。東電に電力を売っているそうだ。盛りだくさんな文学散歩。その上宿題もある。「現地詠」を出すこと。私はこれから詠む

      白秋のことより昼餉の海鮮を語らう帰路の五月末日  松井多絵子 

 

 


両手に賞の大森静佳

2014-05-30 09:08:58 | 歌う

          「両手に賞の大森静佳」

★この朱(あか)が火星の大地の色なのか色あせた鳥居に手のひら触れる  松井多絵子

 結社「塔」の歌人・大森静佳さんの歌集♠『てのひらを燃やす』に二つのビッグな賞!
第58回現代歌人協会賞。第20回日本歌人クラブ新人賞を手にしたスゴイ若手歌人へのインタビューが♠現代短歌新聞6月に掲載されている。喜びの大森静佳さんは大いに語る。

♠ 受賞作について、よく相聞歌と言われるのですが、作る側としては恋の歌という自覚があまりなくて、一言で言えば主題は「時間」だと思っています。

♠ 歌集のなかの柩は死を連想する言葉かもしれませんが、生の後に死が来るという感覚はそんなになくて、生の上にいつも死が平たく粘りついているという感覚でしょうか。

♠ 学生時代に「京大短歌会」にも所属したのは学生短歌会の歌会は同世代のため批評が厳しく一首の中で言葉を突き詰めて考えようとします。ライバル意識も結社より濃いです。

♠ 歌を作る上で大事にしているのは現在から百年、千年のちの人達に向けて詠むこと。

※ 大森静香さんは京都大学在学中に角川短歌賞を受賞。俵万智より4半世紀のちに現れた大型新人歌人として注目されている。歌集『てのひらを燃やす』は恋の歌集とか。私はまだ読んでいない。大森さんについて又ブログで書きたい。取りあえず彼女の一首を。

♠ 忘れずにいることだけを過去と呼ぶコットンに瓶の口を押しあて  大森静佳

     5月30日  どうでもいいことばかりを忘れずいる松井多絵子 

  


友だちは楽しく怖い

2014-05-28 09:17:09 | 歌う

           「友だちは楽しく怖い」

❤ アフリカの旅より帰りてきし友はわれより偉くゆたかに見える  松井多絵子

 昨日、5月28日「NHK短歌de胸キュン」の再放送を見た。この4月から第4週の講師は梅内美華子。歌誌「かりん」の編集委員である。青森生まれ、40代の初めの若さで歌壇で活躍している。11歳のときから短歌を作っていた彼女は、番組のなかで若い人たちと友達のように作品を語りあっていた。すでにこの番組のテキストでもある「NHK短歌5月」に梅内美華子の ♠ 「自分らしくうたおう~友だち~」が掲載されている。

 友だちは家族の次に身近な存在でしょう。~友だちを描いた短歌を見てみましょう。

♠ 少年時友とつくりし秘密基地ふと訪ぬれば友が住みおり  笹 公人

♠ 透明のシールをピアスの穴に貼るともだち 白い逆光のなか  山崎聡子

♠ 酔へば記憶なくなる友を少しだけ羨みてバーの扉を開く  田村 元

♠ 反論をさくらめーるで届け来る魚座生まれのアバウトな奴  大辻隆弘

~世代や場面によってさまざまな出会いや交流があります。長い付き合いになって、心を許し合うと、家族や恋人が知らないことまで共有していることもあります。楽しいようで、怖い。

 この梅内の本音のことばに私は共感する。S子が居酒屋でこんなことを言ったことがあった。 「私は旧友ともう付き合いたくない。昔の怨念をまだ抱えていて、表面は親友だけど何だか怖い」と。 無意識に放った言葉が友を傷つけていた、傷は治らないまま付き合っている。S子は言った。「私は新しい友が欲しいの。今なら親しくても相手を傷つけるようなことを不用意に言わないわ」 新しい友との出会いは年々減る老女たち、私もその一人だ。

    友はみな旅をしている連休に昼餉のための瓜を乱切り  

                   5月28日  松井多絵子


こころノート

2014-05-27 09:21:19 | 歌う

            「こころノート」

❤文芸にかかわるなと言いしその父の書棚に日本文学全集   松井多絵子

 父は私が小説を読むのを嫌がった。自分の書棚には溢れるほど小説があるのに。私はこっそり父の本を持ち出して読み、書棚の元の場所に戻していた。バレタことはなかったが、急いで読んだためか本の内容をよく憶えていない。先日申し込んだ ✿ こころノート を昨日いただいた。表紙の漱石の写真は優しそうだ。が、その彼の頭上のペン先は鋭い。表紙を繰ると❤「朝日新聞に連載された夏目漱石の主な作品」の一覧表。小説、随筆など14もある。しかも約10年の間に「よくまあ!」と驚く。最後は未完、49歳で世を去ったのだ。

 「こころノート」の漱石作品の一覧表を見ながらわかった。父が「漱石なんて読むな」と中学生の私に言った理由が。

♠ 「それから」~裕福な実業家の息子が、友人の妻と再び恋に落ち破壊していく様を描く。

♠ 「門」~親友の妻を奪って結婚した主人公。罪の苦しみにおそわれ、やがて禅寺へ。

♠ 「行人」~妻が信じられず、妻の貞操を弟に試させる孤独な知識人の姿を描く。

♠ 「明暗」~三角関係を軸に濃密な人間ドラマにエゴイズムをえぐり出した未完の絶筆。

 漱石の恋愛小説を十代の娘に読ませたくなかった父の気持ちを今頃にになって知る。 「それから」 以後、漱石の小説の恋愛はエスカレートしつづけているのだ。恋のエゴイズムをえぐり出す「明暗」を書きながらあの世へ行ってしまった漱石。文学はコワイ。そのコワイ文学に私が関わったのは、父が他界した後である。あの世で父と再会するのが恐ろしい。

❤わが歌を一首も知らぬ亡き父へ詫び状ではなく挑戦状lを

                   5月27日  まだ元気な松井多絵子

 

 

 


初夏の森かな笹公人

2014-05-26 09:33:33 | 歌う

         ✿「初夏の森かな笹公人」✿

 短歌の道を歩きながら私は何人に、、いや何十人、何百人に追い越されたことだろう。笹公人もその一人だ。私より6年遅く「未来短歌会」の会員になり今や選者。NHK学園講師、歌人協会会員、文芸家協会会員、大正大学客員准教授、まだ30代後半だ。若さと力があふれている。

 NHK短歌5月号に笹公人が ✿「アイドル・28首」を書いている。アイドルをテーマにした著名な歌人の歌を取り上げて解説している3頁。お恥ずかしいが私はこの28首の1首さえ知らないかった。怠け者の私は若い子にたやすく追い越されてしまったのである。

 「アイドルを詠んだ歌は意外にも少ない。おそらくその原因は、アイドルの賞味期限の短さにあるだろう」 という書き出しではじまる、シンプルな文。読者に親切な解説だ。彼の文はいつも読みやすく分かりやすい。気が利いていて楽しい。

① うつくしきひとみを持てる原節子映画にてわれ幾たび見けん  佐藤佐太郎

② ザ・ピーナッツ伊藤姉妹の造作の微差たのしみき昭和のテレビに  島田修三

③ きみまろが「あれから四十年ッ」と語るとき沼の藻のごと女らさやぐ  栗木京子

④ 地球からいちばん遠き星の名にふさわしきかなマリリン・モンロー  大滝和子

⑤ 声がまだ光で記憶されぬころ聴きいし本田美奈子の声よ  吉川宏志

 ① 佐藤佐太郎が原節子にあこがれていたとは。昭和の初めがなつかしくなる。⑤は笹公人の解説によると「CDが普及する直前の時代に大活躍した本田美奈子」だそうである。

 「清純派アイドルとして詠まれた少女が、20年後には不倫で変身。歌意が通じなくなるという事態も起きかねない」と笹公人。アイドルがオバアサンになるのも淋しいです私は。

 笹公人さま  貴方は オジサン、まして オジイサンにはならないでね。 
                               5月26日  松井多絵子