えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

みどりの階段

2014-09-30 09:13:53 | 歌う

            ・・・ みどりの階段 ・・・

 ☀ 見おろせば棚田棚田の波がくる千葉鴨川市大山棚田  松井多絵子

 9月29日11時半ごろ私は晴天の大山千枚田を見下ろしていた。クラブツーリズムの房総をめぐるツアーは、台風の進路が変わったため無事だった。鴨川市にある大山千枚田は東京から一番近い棚田。「日本棚田100選」の一つである。標高90m~150m、面積4ヘクタールの斜面の稲は9月6日に刈り取られたが、青草が生えていて緑の階段が見事であった。あちこちに彼岸花が満開だったり萎れていたり、案山子(かかし)は残っていた。

 ✿ ふきげんの我のようなる案山子あり近寄ればさらに目を吊り上げる

 ✿ 稲刈の終えし棚田の片隅に散らずに萎えゆく彼岸花ひとむれ

 3年前にわたしは輪島「白米千枚田」を見ている。世界農業遺産になり注目されたこの棚田は広かったが、稲の刈り取られる前だったので階段が雑然としていた。大山千枚田は1000枚ではない。375枚の棚田らしいが楽しい棚田だ。傾斜の急な野を先人たちの知恵が米作地にしたのだ。棚田の歴史は知らないが、バリ島や中国の厦門で棚田を見たことがある。観光客には riceーterraces と説明していたが10年以上も前のことで私の記憶はアテにならない。 大山千枚田はいまライトアップしているそうだ。「棚田百選」など日本各地に棚田があり、観光スポットになっているなんて、でも棚田を見ていた昨日の今頃、わたしの体のなかを若草色の液体が流れていた。 明日から10月、半袖よ、さらば。

                      9月30日   松井多絵子   

                

 


激しく怒る御嶽山

2014-09-28 09:18:23 | 歌う

              ☁ 激しく怒る御嶽山 ☁

  ☁ 今までは静かにしていたあの人が突然怒り御嶽噴火  松井多絵子

 この秋こそ御嶽山の紅葉を見たいと「旅の友」でツアーをさがしていた矢先の噴火、驚いた。百名山のこの山の主峯・剣ヶ峰は標高3067m、紅葉シーズンが始まった好天気の週末、登山者が集中したとき突然、噴火。10人重体・重傷、山小屋になお44人が、、。

 危険を孕んでいる山に何故登りたいのかと聞かれて、 「そこに山があるからです」 と応えた登山家がいたそうだ。日本の100名山すべての頂に立った老女が私に 「達成感がたまらないのよ」 と言ったことがあった。 「頂上で飲む缶ビールのおいしいこと」 と。100名山に登った彼女はツアーは全く利用せず登山仲間数人と。時には1人で登った。山の麓のホテルに泊まり天気の様子をうかがいながらの登山。およそ30年の登山歴。

 「お金がかかったでしょう?」と聞く私に 「海外旅行に何度も行けるくらいお金を使ったわ。香港もハワイも知らない、海外には1度も行ったことがないの。頂上に立って記念写真を撮るだけ。有名な登山家のように登頂した証拠は何も残らないのにねえ」。100名山を極めたのちは、日本の准100名山に登りつづけている彼女。山の魅力はコワイ。いや、人間の「こだわり」が恐ろしい。私だって何故いつまでも短歌の山を登り続けるのだろうか。

    ♠ 試行錯誤の山へのぼるか坂上の区立図書館見上げていたり

                        9月28日  松井多絵子   

 


殻ちゃん~27回

2014-09-27 09:04:52 | 歌う

              殻ちゃん~27回

 ✿ 「遠野」とう茶房に入りしとき波が、アルハンブラのギターのさざ波  松井多絵子

 はじめての保護者会が終わった後、アキと飛鳥のママとさやかのママの三人が神山学園の近くの喫茶店にいた。飛鳥は殻ちゃんの隣席、さやかは前の席、娘の友だちはママの友だちにもなるのか。3人はカフェオレを飲みながらオシャベリをする。

 さやかのママ ♠ 「若いけどしっかりしてるわねシンジローは。いきなり皆さんのお子さんは秀才なんかじゃない。神山学園に入ったからアタマがいいなんてトンデモナイ、ですもの。」

 飛鳥のママ  ♠ 「たしかにそうかもしれないけどねえ。進学熟のおかげで学力をつけただけ。合否は1点の差で決まる。運が良かったに過ぎない。ウチの子はアタマがいいなんて決して思うな。とまで言われると。殻ちゃんはYなのNなの、進学塾は?」

     アキ  ♠ 「近所の塾の先生が熱心に教えてくれて。」

 さやかのママ ♠ 「おくれて入ってきた足立ユイのかっこいいこと。雑誌やテレビでよく見るけど、実物もいいわねえ。あの白いパンツスーツを見事に着こなして。」

 飛鳥のママもユイの息子の塔君までステキらしいと言う。アキは店にながれるギターの音に耳を傾けていた。このママたちはオラが歌手だったことを知らないのだ。ユイといっしょに唄っていたことも。でも知らない方がいい。気が楽だ。ユイも歌手だった頃のことは知られたくないのだ。保護者会が終わるとアキに挨拶することもなく帰ったのだから。(続く)

 ✿ ほのぐらき茶房の奥にいてわれは海底の魚になりてしまいぬ

                      9月27日  松井多絵子


❤こころの波紋❤

2014-09-26 09:11:17 | 歌う

             ❤ こころの波紋 ❤

 ♠ 作文が苦手なあの子が漱石の「こころ」を日ごと読む老人に  松井多絵子

 「こころ」の連載は終わった。昨日の朝日・漱石の「こころ・百十回」は、「私が死んだ後でも、妻が生きている以上は、あなたに限り打ち明けられた私の秘密として、凡てを腹の中にしまって置いてください」で終わっている。朝日川柳にはタイミングよく次のような1句。

     9月26日  ★ 先生も奥様だけには言いいません  千葉県 村上健

 昨日「こころ」は終わったのに今日も連載が続いている。読者の「反響編」として。

♠ 埼玉県・会社員 澤下いづみ(40) 時代は変わっても人の心は不変なのではないか。

♠ 大津市・公務員 青木勝也(40) 「こころ」は高校生の頃に最後まで読み通せた長編。

♠ 大阪府・原桂一郎(82)初めて読んだときの強烈な印象が人生観を決定づけた。

 わたしは短歌に関わるようになってから小説をあまり読まなくなってしまった。歌集、歌論を読むのに追われている。でも「こころ」の連載は読んだ。登場人物が 先生・K・奥さん・私 、小説を読むとき悩まされるのは登場する人の名前のややこしさ。回想と現実が入り乱れること。「こころ」はシンプルで人の心の核心にのみ触れているように思える。

 あまり面白いと感じなかったという千葉市の男性(71)。連載中に朝日朝刊に掲載された山藤章二さんの「こころ」への寄稿文に 「ドラマチックな要素のない小説である」とあり、ひざを打った。「読んでみなければ自分の感想を持つことができなかった。古希を超えたこの年になってから読む機会を得たのはラッキーでした」 このコメントには署名がない。

   千葉市の71歳・男子サマ  私も読んだからこのブログを書いたのです。

                         9月26日    松井多絵子

 

 

 


ぶどうの秘めごと

2014-09-25 10:14:21 | 歌う

            ・・・ ぶどうの秘めごと ・・・

 いよいよ秋も本番かとおもわせる葡萄たち。産地は山梨、岡山、長野だけではないらしい。岡山の桃太郎ブドウ、山形のナイヤガラぶどう、などなど。「ぶどう」は中国を経由して日本へ伝来したといわれる異国情緒ただよう果実である。近代歌人や現代歌人たちの作品にも頻出している。 マスカット・オブ・アレキサンドリアなどと詠み込み1首をおしゃれにする。ぶどう酒は葡萄液と詠まれたりしている、飲みながら歌が生まれたのだろうか。

              ぶどうの秘めごと      松井多絵子

     まだ熱の下がらぬこの路この先に緑の葡萄の楽園がある

     むらさきの瞳の群れがわれを見る葡萄ひと山店頭にあり

     本栖湖にほどなき葡萄園にきて木より未完の果実を奪う

     ぶどう酒を飲み干したグラスにとめどなく吐息が入りゆき溢れていたり

     ぶどう酒に手足は温くなりながら冷えてゆくなり心の部屋は

     平皿のひとふさの葡萄それぞれに秘めごとあれな、あかむらさきの

          ※    ※    ※    ※    ※

 短歌情報9月25日  新刊歌集

 ✿ 井辻朱美歌集 『クラウド』  この世界を枠外から観る力。

                            (北冬舎・本体2200円)

 ✿ 島崎榮一歌集 『苔桃』  短歌は古風で差支えない、との信念に基づく歌々。

                             (現代短歌社・税込み3000円)