えくぼ

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「或るホームレス歌人を探る その一」

2012-12-08 13:55:26 | 歌う

❤ 評論文は書くのも読むのもシンドイです。二年前の「短歌研究」10月号に掲載された私の受賞評論「或るホームレス歌人を探る~響きあう投稿歌」は12頁。読みそこなって残念とおっしゃる方々の言葉を信じて、ブログに書くことにしました。毎日続けて今年中に書き終えるつもりです。がまん強い方は最後までお読みください。<その一>は忍耐力テスト①です。

  ★ 「或るホームレス歌人を探る~響きあう投稿歌」 (その一)    松井多絵子

 公田耕一という歌人を知ったのは2008年12月8日、朝日新聞の歌壇欄である。

●(柔らかい時計)を持ちて炊き出しのカレーの列に二時間並ぶ (ホームレス)公田耕一

 選者の佐佐木幸綱と永田和宏が共に十首中、第三席に採っている。佐佐木の評は「住所欄にホームレスとあった。柔らかい時計はダリの時計。通常の時間とはちがう進み方をするのである」永田の評は「『柔らかい時計』はダリの時計を連想させるが二時間という時の長さ」。

 私はまず(ホームレス)という居住地の表記におどろく。(京都市)(東京都)(前橋市)などの入選歌のなかに(ホームレス)とは。それにしてもダリのあの絵の歪な時計を「柔らかい」と感じたのはおもしろい。俺は空腹でも精神的にはゆたかなのだと自負しているのか、公田耕一は。目が離せなくなった私は、翌週から公田耕一を朝日歌壇欄で追いかけることにした。(続く)

❤ 炊き出しのカレーをもとめる人びとの列は左へ左へと曲がる

❤二時間も待つかもしれぬあの列の最後に立つひと、裸木のような

   ※松井多絵子歌集『厚着の王さま』より二首抄出