❤❤❤ 「年の瀬のうた十首」 ❤❤❤ 松井多絵子
ガラス戸を拭きいて今年の辛かったことがつぎつぎ鮮やかになる
われよりも疲れているらし傍らに屈まりて眠る歳晩の猫
西日ふかく入りきて蓮の花ひらく無名の画家の描きし素描
わが知らぬ牛を偲びて履くブーツはじめて土を落ち葉を踏みぬ
歳晩はさらに急なる下り坂さらに冷えゆくこの下り坂
しなかった、できなかった事あれこれと思いださせる炬燵のぬくみ
チューハイが我をとりもつ「来年はきっといい年、たぶんいい年」
歳晩の西日が窓に溢れいてもう終わってもいい2012年
みすずかる信濃の手うちそばを食むしこしこするりしこしこするり
昨夜より真水のなかの黒豆が朝の厨にあたらしき黒
※ まあまあの一年でした。 松井多絵子