ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

原田マハさんの小説「楽園のカンヴァス」をやっと読み終えました

2014年09月22日 | 
 原田マハさんの小説「楽園のカンヴァス」をやっと読み終えました。久しぶりに、小説らしい、想像をかき立てる面白い物語を読んだと感じました。

 先日、東京都内の大型書店に行った時に、この本の文庫本(2014年7月1日発行、新潮社)が並んでいました。




 小説「楽園のカンヴァス」は、その後に山本周五郎賞を受賞するなどと評判がよかったので、この単行本を購入した記憶があるのですがすが、まだ読んでいないことを思い出しました。整理整頓できていないので、購入した単行本を探し出す自信がないために、文庫本を購入しました。

 単行本「楽園のカンヴァス」は2012年1月1日に新潮社から発行され、書評の評判がいいので、大型書店では目立つように平積みされていた記憶があります。各新聞紙などの書評にも取り上げられていました。
 
 たぶん小説の主人公は、米国のニューヨーク近代美術館(MoMA)の学芸員(キュレーター)のティム・ブラウンです。ハーバード大学大学院で美術史を学んで修了し、ニューヨーク近代美術館に就職したブラウンは、1983年のある夏の日に、スイスのバーゼル市に住む謎の大富豪・美術品収集家のコンラート・バイラーからの“招待状”を受け取ります。バイラーが所有するアンリ・ルソーの未公開の絵を鑑定してほしいとの内容の手紙です。この依頼を受けて、ブラウンはバーゼル市に降り立ちます(実は、ブラウンという姓の人物がもう一人登場します)。

 アンリ・ルソーの未公開の絵の真贋鑑定を頼まれた、もう一人の主人公は現在、岡山県倉敷市の大原美術館に勤務する美術館監視員(絵画研究家)の早川織絵です。1983年当時は、フランスのパリ市にいた彼女も、バーゼル市に向かいます。

 
 ブラウンと早川の二人は、バーゼル市にあるバイラーの大邸宅の一室で、画家アンリ・ルソーが絵を描くエピソードなどを集めた謎の小冊子を読まされます。この謎の小冊子を、一日当たり一章ずつ読むように指定され、7日間かけて読破します。この小冊子を読んで、バイラーが所有するアンリ・ルソーの未公開の絵の真贋を判定してほしいとの依頼です。

 この謎の小冊子の各章には、1906年ごろに作品を発表していた“素朴派”画家のアンリ・ルソーの貧しい日々が描かれています。遠近法も明暗法も習得できなかった日曜画家と揶揄(やゆ)されたアンリ・ルソーが過ごす苦悩の日々が綴られています。ところが、同時代を生きたあのパブロ・ピカスがアンリ・ルソーの作品を、新しい前衛的な作品だと高く評価し、ある支援をします。この小冊子の各章が物語るアンリ・ルソーの日々の物語そのものが、とても面白いのです。

 多くの方が小説「楽園のカンヴァス」は“絵画ミステリー”の部分が面白いと高く評価していますが、ミステリーではないと思います。いくつか出てくる謎は、謎のままで合理的な解釈などを拒否しています。たとえば、早川が新進気鋭の絵画研究家を断念する理由や、アンリ・ルソーの未公開の絵の真贋判定の勝負の時に、早川が事実上自ら権利を放棄する謎はそのままです。小説の物語としては面白いですが、謎は謎のまま残る展開です。

 長くなったので、続きは次回編になります。

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3 コメント

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楽園のカンヴァス (マリーゴールド)
2014-09-22 06:44:23
楽園のカンヴァスはとても面白い小説です。冒頭の現在の岡山市の大原美術館に監視員として勤務する早川織絵と娘の葛藤から始まる物語は、その後の展開を読ませず、先が読みたくなります。
いろいろと想像力をかき立てる名作です。
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楽園のカンヴァス (鍋奉行)
2014-09-22 07:25:33
楽園のカンヴァスを読んでから、改めて素朴派画家のアンリ・ルソーの絵が好きになり、いくつかの美術館に見に行きました
大原美術館など、日本の美術館はアンリ・ルソーの絵を所蔵していて、鑑賞できます。
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アンリ・ルソーの絵 (あおによし)
2014-09-22 08:33:19
素朴派と呼ばれるアンリ・ルソーの絵は、写実主義ではなく、自分が見た印象をそのまま絵にしたものと思っています。その点で、ピカソに通じるものがあります。
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