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神戸まろうど通信

出版社・まろうど社主/詩と俳句を書く/FMわぃわぃのDJ/大阪編集教室講師など多様な顔を持つ大橋愛由等の覚え書き

2013夏うたウタ37

2013年09月07日 09時45分02秒 | 俳句
2013夏うたウタ37/泣角力見たく狐は杉に化け/平畑静塔/近頃「狐に化かされた」と悔しがる人が減った。幼児を相撲の土俵にあげると、緊張のあまり大泣きしてしまう。幼児の成長や安産を祈る目的や、地域へのお披露目の意味もある。狐は人と交じって産んだ我が子見たさに杉に変身したのかもしれない。

2013夏うたウタ36

2013年09月06日 09時43分38秒 | 俳句
2013夏うたウタ36/陽炎や我に無き人我を出る/永田耕衣/日中にも〈妖〉がひそんでいる。句を追ってみよう。ゆらめく陽炎の中にいると、自分の影ではないものが、自分の影から出て行く。二重身(ドッペルゲンガー)は必ずしも自分の分身ではない。自己にひそむ他者は陽炎の中であらわになった。

2013夏うたウタ35

2013年09月05日 09時42分03秒 | 俳句
2013夏うたウタ35/人形を 河に投ぐ 月がささやく たはけた秘法/高柳重信/この俳句、縦書きにすると四行に分かれている(一字空きの箇所で行換えをしている)。多行俳句の世界を構築することで、俳句が一行詩から抜け出て、立体的に展開される可能性をしめした。句の中身もシュールである。

2013夏うたウタ34

2013年09月04日 09時40分19秒 | 俳句
2013夏うたウタ34/二十のテレビにスタードダッシュの黒人ばかり/金子兜太/電気量販店だろうか、多くのテレビモニターが並ぶ中、写しだされた短距離走のスタート位置に並ぶのは黒人だけ。都市光景から生み出された作品。俳句は農村の田園風景ばかりを出自としないのだという新たな位相を提示している。

2013夏うたウタ33

2013年09月03日 09時38分03秒 | 俳句
2013夏うたウタ33/人も物云う蛋白質に過ぎずと云える春の人/橋﨤石/科学的事実を詠っているといってしまえばそれまでだが、それを句に昇華させるには、うたよみとしての胆力が要る。「物云う蛋白質に過ぎずと云える」に注目。事実を事実として気づき、その事実を確認しあうというのは存外に難しいものだ。

2013夏うたウタ32

2013年09月02日 09時34分53秒 | 俳句
2013夏うたウタ32/ペリカンの口には詩より重たき魚/夏石番矢/私と同年齢の俳人。早くから活躍し、1980年代ニューウェイブ俳句の旗手の一人として頭角を現してきた。この句の発想が面白い。〈詩〉に重量があり、それが魚と比較できるものだという。鳥は時にして〈詩〉を食(は)むことがあるのだろうか。

2013夏うたウタ31

2013年09月01日 09時27分06秒 | 俳句
2013夏うたウタ31/一家団欒さっき踏絵を踏んできた/小池正博/知性に裏付けられた句を作る川柳作家。耶蘇信者にとり信仰の根幹を試される「踏み絵」だが、それを一家団欒の一貫として「踏んできた」というのである。発想の逆転、常識のはぐらかし、知的でありながらシニカルな笑いを込めた一句。