HSPやHSCという概念を提示した心理学者エレイン・アーロン氏が、
「喜び溢れる敏感な子へと育てるために大切ですよ!」とする「4つのこと」
のひとつに「思慮あるしつけ」があります。
(「4つのこと」についてはこちら:
「喜び溢れる敏感な子」を育てるための「4つの鍵」&「認知のゆがみ」にも気づかせていきたいですね)
この「思慮あるしつけ」について、私自身「まさしく!」と同感する
小児精神科医ダニエル・J・シーゲル 氏と心理学者 ティナ・ペイン・ブライソン 氏の著書
『No Drama Discipline: the whole-brain way to calm the chaos and nurture your child's developing mind』
邦訳『子どもの脳を伸ばす「しつけ」 ~怒る前に何をするか--「考える子」が育つ親の行動パターン~』
を参考に、少しずつまとめていきたいなと思います。
米国でベストセラーとなったこの著書は、
元々、全ての子ども対象に書かれたものですから、
「敏感な子」はもちろん、どんな特徴を持つ子にも、
用いていけますよ。
「しつけ(discipline)」の原点とは?
日本語で「しつけ」と訳される英語の「discipline」は、
ラテン語の「disciplina」を語源としていて、
11世紀頃には、「教える・学ぶ」という意味で用いられていたそうです。
「しつけ(discipline)」というと、
英語でも、叱りつけたり、結果を知らしめたり、(体)罰を与えたり
といったイメージと繋がりもします。
日本語だと何だか「動物のしつけ」とも重なり、
「(鞭もって)調教する」ようなイメージもあるように思います。→ちょっと極端?
そこで、シーゲル氏とブライソン氏は、
「disciplineの語源」である
「しつけ(discipline)とは、教え、学ぶこと」
という意味に立ち返りませんか? と提案します。
「しつけが必要!」となる場面で気づきたいこと
「しつけなければ!こういうことはしていけないのだと教えなければ!」
という場面って、
親も子も、「感情の高まりがマックス」なことがよくありますよね。
例えば、
子どもは、大癇癪状態だったり、
親は、「なんでこんなことするわけー!」と怒りマグマ状態だったり。
にこやか~、穏やか~に時が過ぎているときには、
「しつけなければ!」という気持ちになんて、なかなかなりません。
とはいえ、
こうした親子で「うぎゃー!」「きー!」と感情マックス状態では、
「教え・学ぶ」ことは難しいです。
上にあげた著書や、以前こちらで紹介した同じ著者の本に、
「それはなぜか?」についての脳の仕組みが説明されているんですが、
簡単に言ってしまうと、
感情マックス状態というのは、
教え学びと考える「脳の機能(前頭前野)=upstairs(階上)」が働かなくなっている状態だからだそうです。
こんな感じですね。
思考や想像などより複雑な機能を司る前頭野を含む「大脳皮質部分(upstairs)」
情動や衝動や反射などより原始的機能を司る扁桃体などを含む「大脳辺縁系(downstairs)」。
そこで、「しつけが必要!」となった場面でまず気づきたいのが、
親として「教えられる状態」にあるか、
子どもが「学べる状態」にあるか。
そして、互いに「教え・学ぶ」ことのできる状態に整える、
ということになるというんですね。
脳全体が、こんなように繋がって働いているイメージ。
例えば:
1.何度も「危ないからやめなさい!」と言ったのに、
フェンスによじ登って落ちて膝を擦りむいて泣き叫ぶ。
2.お友達と玩具の取り合いをして、相手の子を突き飛ばしたところ、
泣きながら起き上がってやり返してきた子に玩具で叩かれ泣く。
3.スーパーのお菓子売り場で「おまけ入りのキャンディーがほしい!」と
床に寝転がって足をばたばたさせ大声で泣きわめく。
4.遊びに行ったお友達の家から「帰りたくない!」と、
玄関先で泣きわめいて動かない。
などなどの場合。
荒ぶる子どもの感情に、
親の感情も極限状態となり、
「いいかげんにしてーーーー!」と爆発したくもなります
(というか、私自身幾たびか爆発してきました)。
でも、体験から身にしみて思いますが、
感情高まり荒ぶっている時に、
「教え・学ぶ」なんてこと、
効果的にできやしないんですよね。
まずは、自らの気持ちを落ち着け、
そして子どもの気持ちを落ち着けます。
「しつけ=教え・学ぶ」のは、それからというわけです。
子どもの感情を落ち着けるために有効な「共感」&「繋がり(connect)」
シーゲル氏とブライソン氏は、
「共感」や「繋がり(connect)」こそが、
子どもの気持ちを落ち着けることになるといいます。
そして、しつけが必要になるときとは、
実は子どもが最も「共感」や「繋がり」を必要としている時と。
これは、よく分かりますね。
失敗やうまくいかないことに一番困っているのは、
実はその子自身ですから。
例えば、上にあげた例の場合:
1.何度も「危ないからやめなさい!」と言ったのに、
フェンスによじ登って落ちて膝を擦りむいて泣き叫ぶ。→
「どこ擦りむいた? 痛かったね」となでてやる。
2.お友達と玩具の取り合いをして、相手の子を突き飛ばしたところ、
泣きながら起き上がってやり返してきた子に玩具で叩かれ泣く。→
「玩具あたって痛かったね」と抱きしめてやる。
3.スーパーのお菓子売り場で「おまけ入りのキャンディーがほしい!」と
床に寝転がって足をばたばたさせ大声で泣きわめく。
4.遊びに行ったお友達の家から「帰りたくない!」と、
玄関先で泣きわめいて動かない。→
抱きあげ、ひとまず静かになれる場に移り、抱っこしながら背中をとんとんしてやる。
こうした「共感」「繋がり(connect)」により、
感情が落ち着いたら、
さて、いよいよ「しつけ=教え・学ぶ」ができる!というわけです。
そこで、以下のように話し合ってみます:
1.「今度大人の人に『危ない』って言われたらどうしたらいい?」「フェンスや高いところはなんで危ないのかな?」
2.「痛かったね。じゃあ、あなたが突き飛ばしたお友達はどう感じたかな?」「今度お友達が持っている玩具が欲しい時は、何て言えばいいかな?」
3.「お店に入る前に何を買うか決めておこうね」「今度お店で何か欲しくなってママの言うことも何も聞けなくなっちゃったら、すぐにお店を出ようね」
4.「今度は帰る30分前と10分前に声をかけてあげるから、心の準備をしようね」「お友達に笑顔でバイバイって言えたら、楽しく遊んだ大好きなお友達も嬉しくなるね」
などなど。
感情マックスな難しい状況で起こりがちな2パターン
私も振り返って思うんですが、
こういう感情マックスな難しい場面って、
往々にして、以下の「2パターン」になりがちだと思いませんか?:
1. 感情荒ブル最中に叱り飛ばし、力で抑え付けておしまい →
子どもは恐れや不満を感じ、「叱れるからする・しない」という「学び」のみ。
たとえ、親も感情爆発で怒りをぶつけてしまっても(ありますよね、人間ですから)、
その後、お互い落ち着いたところで、
上のような「話し合い」をしていけるといいですよね。
「なぜ怒られたのか? 今度はどうしたらいいのか?」を理解しているかどうか、
確認したいです。
2. 共感し、繋がりを確認し、なぐさめ、子供の感情が落ち着いてめでたし →
今度同じ場面でどうしたらいいのかといった「学び」なし。
昨今、「叱らない子育ての弊害」なんて言葉も聞かれることがありますが、
「弊害」と指摘されるようなケースというのは、
この感情が落ち着いてからの「しつけ=教える・学ぶ」部分を
切り落としちゃってるんじゃないかな、と感じています。
「叱らない子育て」とは「叱らないでいい子育」てであって、
共感し、受け入れ、繋がり、同時に
「教える・学ぶ」チャンスを最大限生かしていくからこそ可能なんですよね。
「叱らない」だけに焦点があてられてしまって、
伝える側の意図が、誤解されてしまう場合があるなあと。
長々と書きましたが、シンプルにまとめると、
うぎゃーと親子で感情マックス状態になって、
「こんなことは許しちゃいかん!シツケないと!」と迫ってきたら、
まずは、
親は、「教える」状態にあるか、
子どもは、「学ぶ」状態にあるかに気づいていくこと。
そして、
「共感」や「繋がり」を通して、
子どもが「学ぶ」ことのできる状態へと整えていく。
親の感情を落ち着ける方法は、
こちらにも以前書きましたが、
・2分で実践!育児ストレス予防トレーニング【マインドフル子育て#02】
こうした深呼吸や身体を緩めるなどの他にも、
後ほど紹介する、自らに問いかける「3つの質問」が効果的です。
← 親の「考える脳の機能(前頭前野)」を発動させるわけです。
これって、ティーンにとっても「まさしく」と実感してますよ。
我が家でも、思い出していきたいです!
「思慮あるしつけ」について、引き続き、つづっていきますね。
いろいろ書きたいことが溢れて、全く追いついてないんですが、
できるペースでこつこつと続けます!
それではみなさん、楽しい週末を!