子供に対応する際、その子の「気質」、そして自らの「気質」を理解することで、対応の仕方や押さえておきたいポイントが、見えてきます。
例えば、新しい環境に慣れるのにより時間がかかる子と、新しい物事が大好きでどんどん飛び出そうとする親の場合。ついつい子供の手を引っ張りプッシュし、となりがちなところ、「あ、そうだったそうだった」と気づき、まずはその子が慣れる環境を整えようと、フォーカスをシフトすることもできるようになるでしょう。
気質には、どちらが「良い・悪い」ではなく、ただ、「違い」があるのみ。
子供は自分でもどうしようもない「傾向」を受け止めてもらうことで、より健やかに伸びていく、そう思います。「そんな内気じゃだめよ!」とぐいぐい引っ張っていくよりも、「慣れる環境を整えてやる」ことの方が、その子が自分のペースで足を踏み出すようになっていくんですよね。
子供の「気質(temperament)」についての研究の中でも、最も詳細にわたるとされ、今も用いられ続けられているのが、精神科医のAlexander Thomas 氏と Stella Chess氏夫妻による研究です。
両氏は、子供の気質を捉える上で、以下の「9つの要素」に着目しています。
エレイン・アーロン氏の著書『Highly Sensitive Child』でも、「ハイリーセンシティブな子(HSC)をより理解するために」と、これらの「9つの要素」が紹介されています。ここでは、一般的に用いられているAlexander Thomas 氏と Stella Cress氏夫妻の説明と、アーロン氏の説明を参考に、まとめてみますね。
私自身、様々な子に接する中で、これらの「9つの要素」が、その子を理解する助けとなってくれている、そう実感しています。
1.活発さのレベル(Activity Level)
いつも動き回っているか、じっとしていることが多いか。
一般的には、こうした「身体的な活発さ」のみ着目されるわけですが、アーロン氏曰く、「身体的のみではなく内面的な活発さもみていきたいです」とのこと。ハイリーセンシティブな子(HSC)とは、フィジカルにはじっとして大人しく見えても、内面的には常にとても活発だったりします。一見静かに見えても、内面では日々大議論が繰り広げられていたりするんですよね。それゆえ、ぱっぱと行動できないこともあるわけです。
2.規則性(Rhythmicity, degree of regularity)
食事や就寝など、同じ時間に同じものを食べるなど、決まったリズムを繰り返すのを好むか。
HSCの多くが規則性を好むといいます(HSCにもそうでないタイプもいるとのこと)。繰り返しの習慣の中で、健やかに伸びていくと。日々の細々とした出来事からも「情報過多カオス」になりがちなHSCですから、生活基盤に「繰り返しの一定リズム」があることで、より安心するということもありますね。
HSCのこの傾向は、我が家の現在でいうと、引っ越しなどの大変化にも活用できると実感しています。環境が大きく変わる中でも、朝何時に起き朝昼夜と食べ慣れた食材を口にし、夜ひととき集まり皆で感謝の言葉をいい合いハグして眠るといった日々慣れ親しんだ「繰り返しのリズム」をなるべく保つことで、より安心して大変化にのぞむことができます。
3.新しい状況や人への反応(the response to a new object or person)
新しい状況や人に出合ったときに、どんな反応をする傾向にあるか。大胆に頓着せず衝動的に喜んで進んでいく傾向にあるか、前へ踏み出すことに躊躇したり抵抗しがちか。
HSCは、慣れるのに時間がかかるタイプが多いですね(HSCにもそうでないタイプもいるとのこと)。その際、「シャイ」や「内気」などのラベルを貼ることなく、できる範囲で、その子のペースでたっぷり状況を観察させてやりたいです。「内面に繰り広げられるかしましい大議論」が落ち着いたら、周りとは時間差があるものの、動き始めます。
4. 順応性(Adaptability)
環境の変化に順応しやすいか、より戸惑い動揺しがちか。
多くのHSCが順応性に乏しいとされています。それでも、「現実では順応するよう要求され、圧倒されてしまっている、もしくは、圧倒されることを恐れている」といいます。「HSCは、順応しないと本人、そして周りにどんなことが起こるかも敏感に感じ取るため、柔軟であろうと最善を尽くします。それで、外では何とかうまくやり過ごせても、家庭では、少しの変化に爆発してしまうということも起こるんです。社会的に適切であるために、変化に向き合う能力を過信されてしまう」と。親にしてみたら大変ですが、家庭が自らを自由に発散できバランスを取り戻す場になっているんですね。
こうした仕組みを理解すると、HSCにどう向き合うかも見えてきます。一つ一つの爆発に『怒る』よりも、「かなり無理してるんだね」サインとしてとらえ、気持ちを受け止めてやりつつ、ダウンタイムを大切にし、変化の必要のないところではなるべく慣れ親しんだ物事やリズムを整えていく。すると、次第に落ち着いていきます。
より大きな子とは話合うのも効果的です。どうしてこうなってしまうのか、そして「自らが自らを落ち着ける方法」を工夫できる姿勢を培ってやりたいです。学校から戻ったら、「一時間は部屋に閉じこもりお気に入りの音楽を聴きゆったりする」、や、娘たちは「気に入った香水を身に着ける」などもほっとするようです。大好きな香りに包まれ、息をゆっくり吐いて吸ってとしますからね(深呼吸は、交感神経&副交感神経のバランスをとる効果あり)。
5.感覚的な敏感さ(Sensory Threshold)
音、味、触覚、温度の変化など、身体的な刺激に対しどれほど敏感か。
HSCは、敏感ですね。この敏感さが、創造性や芸術性などの様々な「芽」にもなり得るのだと、覚えておきたいです。
6.強烈さ(Intensity)
ポジティブ面、ネガティブ面共に、どれほど強烈に反応するか。乳幼児時代から、比較的小さなことにも強く反応していたか。喜怒哀楽をドラマティックに表現するため、周りもその子の感情をとても理解しやすいといいます。
一昔前の研究では、「強烈さ」というと、こうした「分かりやすい強烈さ」にのみ着目されていたようです。それでも、アーロン氏曰く、HSCのほとんどが「強烈さ」を持っているわけですが、多くの場合、外へ向かって表現するよりも、内に向かうといいます。人見知りや場所見知りも、その場のあらゆる物事を細部にわたり、「強烈に感じる」からなんですよね。内に向かう強烈さは、「不安感や腹痛などの表れになることもある」とのこと。
HSCやHSPには、「普通に」暮らしていくために、周り大多数が必要としないような「自己ケア」も必要なのだと開き直ることで、私自身随分と楽になりました。今、「私、HSPじゃないよなあ」と感じるのも、こうした「自己ケア」のためなんですよね。「ボティスキャン(身体中スキャンし、こわばった部分を吐く息とともに緩める、肩、首、舌、眉間など)」、「呼吸法(呼吸に気づいている、長く吐く)」、「グラウンディング(地に足がついている感覚、地球と繋がっている感覚、頭頂から地球の真ん中まで届くラインを想像してみる)」、「他者と自分へ思いやりを向ける(ゆったりと座ったり横になり胸に手を当て自らしっくりくる言葉を唱えてみます。科学的には扁桃体を落ち着けると分かっているんですが、他者&自分にすっきりと温かい気持ちで向き合えます)」、これで、私は日々「普通に」ハッピーに暮らせていけるわけです。子供にも伝え中ですが、親子共に自らに合った「自己ケア法」を培っていきたいですね。
7.機嫌(mood)
全体的に不機嫌でネガティブか、機嫌よくポジティブか。周りの状況によって機嫌が極端に変わりやすいか。
アーロン氏曰く、現在の心理学では、こうした「全体的なムード」に着目することはあまりなくなっているとのこと。誰だって、周りの物事により機嫌は変わりますからね。
8.気のそれやすさ(Distractibility)
音や、シーンや、匂いなど、周りで起こる出来事にそれほど影響を受けず、目の前の物事に集中できるか。
HSCは、周りの状況に敏感なため、気がそれやすくもあるわけですが、アーロン氏曰く、「目の前の物事に戻りタスクを終えることができる場合が多い」とのこと。目の前のタスクを終えることに対しても「敏感」ですからね。
また、興味のあることに対しては集中度が高くなり周りの状況にお構いなし、興味がないことに対しては気がそれやすいといった様子は、多くの子供に見らるわけですが。「ギフテッド」傾向にある子など、その度合いが極端であることも多いですね。
9.やりぬく姿勢(persistence)
一旦とりかかったことを最後までやりぬこうとするか、すぐに投げ出す傾向にあるか。
最後まで何としてでもやり抜こうとする子には、無理しすぎて燃え尽きないよう気を付けてやり、すぐに投げ出す子には、目標を細切れにし「小さな達成感」の喜びを体験させてやります。
HSCは、あらゆることを深くプロセスしがちなので、「やりぬく姿勢」が強いととらえられやすいといいます。一方、失敗を恐れたり、小さな誤りが気になり過ぎ、途中で投げ出してしまうこともあるとのこと。完璧主義とうまくつき合う姿勢を培ってやりたいです。
生後2-3か月には確立するとされる「気質」。
目の前の子に向き合い、理解しつつ、より良い方向へと伸ばしてやりたいですね!
参考資料:
‘The Origin of Personality’
by Alexander Thomas, Stella Chess and Herbert G. Birch
http://www.acamedia.info/sciences/sciliterature/origin_of_personality.htm
『The Highly Sensitive Child』 by Elaine N Aron