マイコー雑記

行き来するもの書き留め場

もし日本で子育てしていたら英語教育にどう取り組む?という質問、バイリンガル教育の利と不利とダメージ

2016年10月06日 | 子育て全般

「もし、マイコーさんが日本人のみの家族で、日本で生活されていたら、お子さんにはいつごろから、どのような英語教育をするとおもいますか?」

という質問をいただきました。

 

まず思うのは、

その子の様子と、家庭の状況を見ながら、模索していくんだろうなあです。

 

より具体的に「いつごろから」「どのような」ということも、

この記事の最後に想像してみました。

 

その前にひとまず、どうしてそういった想像になるのか、

説明させてください!

 

 

 

日本の子供たちが「使える英語」を身につけていくことは、

これから日本が世界で活躍していく上で、

大切なことだと思います。

 

文部科学省も、ひとまず2020年の東京オリンピックを見据え、

英語教育の改革をすすめていくとのこと。(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/102/houkoku/attach/1352464.htmより)

日本の国全体が、英語教育促進に向けて動いていますね。

 

そんな中、乳幼児時代から、

「この子をバイリンガルにしよー!」

と意気込む親御さんも多いのだと思います。

 

 

ということで、

「バイリンガル教育」について、

これまで思ってきたことをまとめてみますね。

 

海外に暮らす日本の親御さんが必ず思うのが、

「我が子を、現地語と日本語のバイリンガルにしたい!」

です。

 

私自身も、もれなく、そう思っていました。

 

それでも子供たちに接する中で、

「そうそう一筋縄ではいかないんだなあ」、

というのが分かり始めます。

 

 

バイリンガルの子は、母国語がひとつの子に比べ、

認知面から記憶面から実行機能から思考の柔軟さまで

様々な面で優れている、と示す研究もあります。

また、将来的にアルツハイマーを遅らせるなどともいわれています。

(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22464592

http://serious-science.org/cognitive-advantages-of-bilingualism-2-2610より)

 

一方、

二言語以上用いる子は、母国語がひとつの子に比べ、

使いこなせる語彙や構文もより少なく、

適切な言葉を思い出すのが難しい場合があるなど、

全体的に言語能力が低くなり、

認知面や高度に考える力などに弱さが見られることがある、

といった研究もあるんですね。

http://www.omniglot.com/language/articles/bilingualadvantages.htm

「バイリンガルの科学」小野博 ブルーバックスより)

 

例えば、「セミリンガル」という問題もあります。

セミリンガルとは、二言語以上を獲得しつつも、

どの言語も母国語レベルに到達しない状態をいいます。

 元々は、ネイティブアメリカンの研究(1920年代)で、

英語もネイティブアメリカンの言語も、

母国語レベルに到達していない人々の存在を表す言葉として、

生まれた概念です。

http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/lcs/kiyou/15_3/RitsIILCS_15.3pp.199-205Oneill.pdfより)

 

 

 

バイリンガルについては、

こうして、相反する研究が報告されているわけですが、

「ほんとのところ、一体どっちなの?」と思いますよね。

 

私自身、17年間海外に暮らし、

様々なバイリンガルやトリリンガルの子供たちの成長を見てきて思うのは、

「両方あり得る」ということです。

バイリンガルを目指すことが「利」として表れることもあれば、

「不利」もしくは「ダメージ」として表れることもあるということです。

 

そしてどちらに転ぶかは、以下の2つの要素が絡んでくると思ってます。

1.その子の特性や資質

2.言語環境

 

1.その子の特性や資質

言語を操ることが得意な子もいれば、

周りより時間がかかったり、

少し特殊な学び方や伸び方をしたり、

不器用だったりする子もいます。

 

またディスレクシアや何らかの学習障害傾向がある子なども、

他言語学習は通常の何倍もの負担になるものです。

我が家の場合は、

「ディスレクシアの遺伝率(夫がディスレクシア診断を受けてます)」を思うとき、

やはりバイリンガル教育には、慎重にならざるをえませんでした。

 

 

バイリンガル環境にある子は、

小学校高学年頃までは、

現地語の遅れが見られることが多いです。

日本で英語とのバイリンガルを目指す場合は、

日本語に遅れが出るかもしれないということですね。

 

それでも、その後は、

両言語を器用に操り、バイリンガルとして成長していく子と、

現地語も伸びず、家庭で力を入れていた言語も伸びずといったセミリンガル状態に、

分かれていくように思います。

 

 

例えば、 

米国の大学で長年日本語を教えていた先輩の娘さんの例なんですが、

両親共に日本人の家庭でしたが、

小学校中学年から一切日本語を用いることをやめていました。

英語のみに絞ったところ、英語力がぐんぐんとつき始め、

米国の超難関とされる大学に進学、

その後、留学生として日本へ滞在し日本語を学んでいました。

 

バイリンガル教育が、

その子の持てる言語能力の発達を妨げることもあるんですね。

対応としては、

まずは母国語をしっかりと確立すること、

すると、長い目でみるなら、他言語を学ぶ力も培われていきます。

 

 

 

2.言語環境

言語の習得は、とにかく「インプット」が鍵です。

日常的に周りでその言語が豊かに用いられる環境にあるならば、

その言語を操る力や思考力も育つでしょう。

 

ヨーロッパなどのように、

多言語が日常的に豊かに話される環境にあるなら、

多言語を豊かに発達させることが可能です。

それでも、「セミリンガル研究」の元となったネイティブアメリカンの場合など、

一昔前は英語のみを用いるよう強制されたりと、

母語を話す人数も減り言語自体が衰退しています。

そうした言語環境では、

その言語を豊かに身につけていくことは難しいわけです。

 

 

家庭でバイリンガルを目指す中で気をつけたいのは、

インプットの機会が十分でないのにも関わらず、

「その言語でしか話せない」環境で育ってしまう場合です。

こちらでいうのならば、

片親しか日本語を話せず、日本を訪ねることもなく、

日本語の情報が圧倒的に少ない中で、

「家では日本語のみで話す」としてしまう場合などです。

成長とともにどんどん複雑になる思考や感情を、

表すには圧倒的に語彙も言い回しも足りませんし、

せっかくの親子の会話も、乏しいものになってしまいます。

 

その言語が豊かに用いられている環境をどれほど整えられるか、

吟味していきたいですね。

 

 

 

 

 

最後に、

「使える英語」というのは、

「英語力」のみに支えられるわけじゃないです。

複雑な語彙や構文を操る能力、考える力があってこそ。

 

ですから、

私自身、日本で子育てしていたら・・・と、

もう少しありありと想像してみるなら、

自身の英語が母国語の域ではないでしょうし、

「豊かな会話を楽しめる状況にないなかで、

子供にバイリンガル教育をしていくのはちょっと難しいだろうなあ」

ということになると思います。 

 

(とはいえ、まあ、

17年海外で様々な子供たちに接してきた体験があるからこそ、今、こう思うわけで、

今の日本の英語教育ブームの中で子育てを始めていたら、

「何が何でもバイリンガルにしなければ!」と意気込んでいたかもしれません。)

 

そうして、バイリンガル教育には慎重になりつつ、

まずは豊かな「母国語=日本語」の確立を軸に据え、

その上で、異文化にも親しみを持てるよう、

3~4歳ぐらいから、

英語の歌やリズム遊びや会話に触れさせていく、

もう少し大きくなれば、海外での暮らしの様子に映像などを通して親しむのもいいですね。

そうこうしつつ、その子の様子をみながら、

時間的物理的にできる範囲で、より深めていく、かなと。

 

 

コメント主さんが、最善にたどりつきますように!

それではみなさん、今日もよい日を!


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