ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその450-驟雨

2020年05月09日 | 邦画
夫婦愛を愛でる監督の目

夫婦。
結婚する前は、それぞれ他人として暮らしていた男女。
その男女が、一つ屋根の下で暮らすのだから、お互い価値観の違いから、仲違いすることもあるだろう。
しかし、子供が生まれても、所詮親元から旅立てば、最後に残るのは「夫婦」だけである。
そう考えると、お互いの事を慈しむ心も含め、考えも新たになるだろう。
今回紹介する映画は「驟雨」。
結婚倦怠期の夫婦を描いた映画である。
ストーリーを紹介しておこう。

亮太郎と文子は結婚4年目の夫婦であるが、既に倦怠期を迎えている。
亮太郎は休日の朝、些細なことから、家を出てしまう。
そんな折、新婚旅行に出かけていた文子の姪が、旅行先で夫と些細なことで喧嘩となり、新婚旅行を中断して帰ってきてしまう。
文子はそんな姪を諭し、もとのさやに収めようとするが..........

文子の姪は、新婚旅行先での、夫の秩序の無い行動に腹を立て、我慢できずに途中で帰ってきたという。
文子は、自分たち夫婦のことは棚に上げ、あれこれ意見を言い、彼女を諭そうとする。
ここが可笑しい。自分たちも、先ほど些細なことから喧嘩になり、亭主が家出したと言うのに、そのこと気にせず姪を諭す。
しかし、このような風景は、どの家庭でも見られる、決して他人事ではないものである。
さすがは監督の「成瀬巳喜男」このあたりの表現をさせると、実に上手い。
諭された姪は、とりあえず実家に帰ってゆく。
その後亮太郎の会社は買収されることになり、彼は退職するか、職場異動するか選択に迫られる。
そんな折、彼と仲の良い会社の同僚が、彼の家に集まり、今後の相談をする。
その中で、仲間の一人が「クラブでも経営して水商売でもやろう」と提言する。
更に彼は文子を指し「奥さんなら、クラブのママになれるから、一緒にやりませんか」などど言ったものだから、亮太郎は怒り心頭に発するのを我慢しながら「お前には無理だよ」と文子に言う、
このあたりのシークエンスも、倦怠期でありながら、妻に嫉妬心をもつ夫の立場を見事に表現している。

そして暫くすると、新婚旅行を中断して帰省した姪から、夫婦中睦まじい写真いりのハガキが届く。
所詮子供の喧嘩見たいなものよと、嘯きながらそのハガキをテーブルに置く文子。
亮太郎は庭でのんびりしている。陽気の良い一日。
そこに、表で紙風船で遊んでいる子供達。誤って紙風船が亮太郎の足元に。
亮太郎は子供たちに紙風船を手で打って帰そうとするが、誤って紙風船は文子に当たりそうになる。
それをサッと避けた文子は、力を込めて亮太郎に紙風船を打ち返す。
いつの間にか、子供たちの紙風船は、亮太郎夫婦のストレス解消の糧となり、右へ左へと飛ぶ。
その微笑ましい光景を、私たち観客の後ろから、優しく見つめる成瀬の眼差しを感じる。
夫婦とは何かと考えさせられる秀作である。

1956年、日本製作、モノクロ、91分、監督:成瀬巳喜男

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