ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその87-ル・アーヴルの靴みがき

2013年05月31日 | ヨーロッパ映画
余裕のある人生の小さな幸せ。

いつもながら思うが日本の社会はせせこましい。
余裕をもって働いている人は僅かであろう。
人生を中心に考えたときこの様な状態でよいのであろうかと思うときがある。
難しいが人生の余裕の中に仕事が存在しているのが理想ではないか。
今回紹介するのは「ル・アーヴルの靴みがき」
フランスを舞台にした物語である。
ストーリーを紹介しておこう。
フランスのル・アーヴル地方で靴みがきをなりわいとしているマルセル。
彼は慎ましやかに妻と愛犬一匹と暮らしている。
ある日彼女が病に倒れ入院することとなる。
それと入れ違いであるきっかけで知り合った違法難民の黒人少年と彼は生活を共にすることとなる。
その少年は既にイギリスのロンドンに入国している母親の元に行きたいと切望している。
マルセルはなんとかして彼を母親の元に行かせるべく考えを巡らすのだが........
とにかく映画の雰囲気が抜群に良い。
善人しか登場してこないところもとても良い。(たった一人を除いてだが)
登場人物は善人にしておおらかだ。
監督はアキ・カウリスマキ、フィンランドが生んだ名匠である。
「マッチ工場の少女」や「レニングラード・カーボーイズ・ゴーアメリカ」などで知られる。
日本の小津安二郎に影響を受けておりこの映画でも様々なショットで小津を彷彿とさせる。
果たして黒人少年は無事母親の元にたどり着けるのか?
入院した妻は回復するのか?
そして感動のラスト、私は流るる涙のそのままにしばらくその場から動けなかった。
是非万人に観ていただきたいお勧めの作品である。
2011年フィンランド、フランス、ドイツ合作、2012年日本公開、カラー93分、監督アキ・カウリスマキ。

明日のためにその86-小説 苦役列車

2013年05月29日 | 
小説「苦役列車」

私小説。
日本文学黎明期には必ずしも歓迎された小説形態ではなかった。
むしろ低俗なレベルの小説であるとも言われていた。
しかし今回紹介する「苦役列車」を代表に私小説再評価されているという。
この小説は以前このブログでも紹介した山下敦弘監督の同名映画の原作である。
ストーリーを紹介しておこう。
北町貫多は日雇い人足をなりわいにしているその日暮らしの青年である。
彼は2~3日に一度日雇いの仕事をしてその日の日当をほぼ使い切る生活をしている。
彼の一家は過去に父親が起こした犯罪によって離散となり母親との連絡だけができる状態だ。
気まぐれに日雇い仕事をし、その日暮らしを決め込んでいた彼はある日彼は日雇い現場へ行くマイクロバスの車中で同い年の専門学校生、日下部正二と知り合いになる。
日下部は貫多と違い毎日日雇いの仕事をこなす。
貫多もそれにつられ毎日日雇いの仕事を行なうようになり、日下部とも親交を深めてゆくのだが......
まず映画との違いだが映画はこの小説の日下部と知り合って以後のことが中心に描いてある。
さらに映画で設定されていた貫多があこがれる女性康子は小説には出てこない。
小説はもっとドロドロしたものだが映画ではそこまで描いていない。
西村もこの映画には不満であるという。
本題の小説に戻ろう。
とにかく作者の言葉の豊富さには驚かされる。
使用される漢字の多様さにも感嘆する。
とても昨今作家デヴューした人物の書いた小説とは思えない。
文章はどこかゴツゴツし、なかなか飲み込めないところもあるのだがそれが一種の魅力となっている。
以上のような要素から、なかなかスムーズに読み進める作品ではなかった。
しかし確固としたスタイルを持った素晴らしい小説であり今後の彼の活躍も十分に期待できるものである。
やはり映画を観るときは原作を読んでから観た方が良いと思った。
この作品は原作の方がより深く重い。
しかし映画の方も映画的には駄作とは言いがたいところがある。
是非原作を読み映画も観ることをお勧めする。
2010年発表、著者西村 賢太、芥川賞受賞作。

明日のためにその85-ヒューゴの不思議な発明

2013年05月27日 | アメリカ映画
素晴らしき哉!シネマトグラフ。

エジソンが覗き見タイプの動画装置「キネトスコープ」を発明してから2年後、フランスのリュミエール兄弟がスクリーン投射型動画装置「シネマトグラフ」を発明する。
後述するがこれに興味をもち映画界に一大センセーションを起こした男がいた。
今回紹介するのは「ヒューゴの不思議な発明」
ストーリーを紹介しておこう。
駅の屋根裏に孤児同然として住み着いているヒューゴは亡き父の形見である修理途中のからくり人形を日々修理している。
駅のおもちゃ屋などから修理に使えそうな部品を盗み亡き父の思いを成就させようと言うのだ。
しかし或る日おもちゃ屋の主人に捕らえられ、修理の頼みの綱だった復原の設計メモを没収される。
後日それをおもちゃ屋の主人に返してもらうよう懇願するが主人は「あれは焼き捨てた」と言いヒューゴの目の前で燃え粕を見せるのだが......
この映画は映画黎明期にSF映画で大いに話題をまいたジョルジュ・メリエスへのオマージュ映画である。
ジョルジュ・メリエスはシネマトグラフに非常に興味を持った。
彼自身マジック専門劇場を経営していたためこれでなにか面白いことはできないかと考えを巡らしていた。
そして彼は様々な映像のマジックを世間に発表する。
その集大成が1902年に製作され世界的大ヒットとなった「月世界旅行」である。
僅か10数分のサイレント映画は観る人を驚嘆させた。
その後も彼はヒット作を世に送り出すが次第に観客に飽きられてしまい世間から忘れられてしまう。
彼が再度注目を浴びたのが1928年、フランス政府がその功績を認めレジョン・ドルヌール勲章を与えたときであった。
映画の説明に戻ろう。
監督はマーティン・スコセッシ、ちょっと彼の一連の映画からは想像できないようなファンタジックで夢のある映画だ。
駅のおもちゃ屋の店主は何者なのか?
からくり人形は修復できるのか?
様々な謎を残しながら映画は進行していく。
そしてこの映画を観終わったとき人々は異口同音に呟くだろう「映画って本当に素晴らしい」と。
2011年アメリカ、イギリス合作、2012年日本公開、カラー126分、監督マーティン・スコセッシ。

明日のためにその84-かもめ食堂

2013年05月25日 | 邦画
ほっこりする。

映画にも様々なものがある。
芸術的な映画や娯楽映画。
サスペンスや観るものを希望へ誘う映画。
映画の歴史100年を超え様々な映画が今も作られている。
今回紹介するのは「かもめ食堂」
今までの映画のジャンルではなかなか計り知れない魅力を持った作品である。
ストーリーを紹介しておこう。
日本から単独ヘルシンキに渡り「かもめ食堂」を開店した主人公のサチエ。
彼女はちょっとしたきっかけから日本から来たミドリとともに生活し食堂をきりもりすることとなる。
また或る日両親の介護から開放されて日本から来たマサコと出会いこの3人で人気の無い「かもめ食堂」をやりくりすることとなるのだが......
とにかく良い映画である。
善人しか出てこない。
全体に流れる雰囲気の良さはかっての「小津安二郎」の映画さえ髣髴とさせる。
何気なく映画は始まり何気なく映画は進行し何気なく映画は終る。
この普通さが良いのだ。
ケレンあふれる展開の映画も良いのだが「かもめ食堂」のような映画は更にそれよりよい。
観ているものが徐々に映画に引き込まれその中で癒されてゆく。
日本の名画に新たに加えられるべき作品だと思う。
ラストあまりにもあっけなくそして爽やかに終るそれは心に清涼の一滴を加えられたようで観終わった後の心地良い余韻が後を引く。
万人にお勧めできる映画なのでまだ観ていない方は是非観ることをお勧めする。
2006年日本製作、2006年日本公開、カラー102分、監督荻上直子。

明日のためにその83-アルゴ

2013年05月23日 | アメリカ映画
思いもつかない脱出劇

今まで様々な映画で「脱出」を描いた作品は多い。
代表的なものには「大脱走」などがある。
あの作品も思いもつかない脱出劇を描いた作品だった。
今回紹介するのは「アルゴ」
今年のアカデミー賞で作品賞を受賞した映画である。
ストリーを紹介しておこう。
1979年暴徒化したイスラム過激グループがテヘランのアメリカ大使館を占領してしまう。
60人近いアメリカ人が拘束されてしまうのだが直前に6人だけ脱出に成功しカナダの大使館へ保護される。
主人公のCIA工作員はこの6人をまず救出するのが先であると考えその脱出方法として架空の映画「アルゴ」のスタッフにこの6人を見立てて作戦を開始しようとするが......
見所は後半にある。
クロスカッテングを多用したシークエンスは観ている者に緊迫と緊張をあたえる。
なかなか見事なつくりである。
果たして彼らは無事テヘランから脱出できるのか。
前述のとおり観ている者をハラハラさせるつくりには感心した。
監督はベン・アフレック。
俳優としても活躍している。
今回の主人公も演じている。
とても観やすいつくりになっているので是非観ることをお勧めする。
2012年アメリカ製作、2012年日本公開、カラー120分、監督ベン・アフレック。

明日のためにその82-笙野頼子

2013年05月18日 | 
圧倒される文章のうねり。

小説には様々なジャンルが存在する。
そして様々な文章がそこに収められている。
言葉は文章として形成されてゆきそれが物語へと発展してゆく。
この物語の中に読者である我々は引き込まれてゆくのだ。
文章自体に魅了されて引き込まれる場合、物語の面白さの故あって引き込まれる場合それは人それぞれによって違うだろう。
今回紹介する小説「タイムスリップコンビナート」などは前者の「文章によって引き込まれていく」一編である。
「去年の夏ごろである。マグロと恋愛する夢を見て悩んでいたある日、当のマグロともスーパージェッターとも判らんやつからいきなり電話が掛かって来て.....」
まったく意味不明の文章からこの小説ははじまる。
物語のあらすじを紹介したいがそのようなものはこの一編にはない。
全てイメージを言葉にした文章展開である。
その文章は読み進むうちに徐々にうねりを上げそのグルーヴの中へ読むものを引きずり込む。
それがなんとも言えぬ快感になり、いっきに読み終われるだろう。
この小説は難解な小説ではない。
私は映画でも音楽でも小説でもそれに接して「判らない」ものは存在しないと思う。
ようはそれ自体自分合っているか、それが好きか嫌いかの判断で良いのである。
その点この「タイムスリップコンビナート」私の好きな小説であり感性ともベネフィットしたものと言える。
あまり一般的な小説の部類には入らないの多くの方にお勧めはできないが興味を持たれた方は一読する価値はあると思う。

著者笙野頼子、芥川賞受賞作品。


明日のためにその81-ソニー・ミュージックアンリミテット

2013年05月16日 | 音楽サービス
今後が楽しみなソニーミュージックアンリミテット。

以前このブログで紹介したソニーの運営するクラウド型音楽配信サービス「ミュージックアンリミッテット」
私は既に会員になり楽しんでいる。
以前このブログで紹介したときは「何万曲あっても聴きたい曲がないものもある」と書いた。
しかし最近事情が変わってきたのである。
私はかなり前から欧米の音楽に飽き「ワールドミュージック」を聴いてきた。
初期の「ミュージックアンリミテット」にはこの「ワールドミュージック」部分に弱さがあった。
自分の聴きたい歌手や曲が殆どなかったのである。
そこで以前のブログでは前述したとおり「聴きたい曲がない」と書いた。
しかし最近より多くの楽曲を登録したのか「ワールドミュージック」に関しても内容が充実してきた。
ただやっかいなのは曲またはアーティストを検索するとき日本語で検索すると「検索結果なし」と表示されるのだが英語などで検索すると「検索結果あり」となる。
ここは今後の課題であろう。
月額も安くなり一ヶ月980円で聴き放題となった。
また音質面でも「ハイクオリティモード(HQモード)が選択でき320Kbps、AAC形式の音質で聴けるようになった。
音質面でのこの改善は大いに歓迎したい。
楽曲の登録に関しても「ワールドミュージック」に関して言えばまだ足りないと思う。
しかし最近の「ミュージックアンリミテット」は聴くに値する良い音楽サービスになってきていると思うので今後の発展に期待したい。
無料30日間のトライアルもある。
興味を持った方は試してみることをお勧めする。


明日のためにその80-ドライヴ

2013年05月14日 | アメリカ映画
「5分間だけ待つ」逃し屋。

過去車のドライバーを扱った映画は沢山あった。
代表例はスコセッシ監督の「タクシードライバー」などが思い浮かぶ。
今回紹介するのは「ドライヴ」
犯罪者などを逃走させる車のドライバーの話である。
ストーリーを紹介しておこう。
アメリカの或る地方で車の修理工や車のスタントをしている主人公のドライバー。
彼の裏の顔は犯罪者などを逃走させる「逃がせ屋」だった。
或る日彼は同じアパートに住む女性と親しくなり恋心を持つようになる。
しかし彼女には服役中の夫と息子が一人いた。
やがて彼女の夫は服役から戻ることになる。
しかし彼女の夫は刑務所で借金を作りそれを清算するため或る男から質屋の襲撃を命令される。
それを知った主人公は「自分が責任を持って逃がしてやる」と言い彼に協力を申し出るが......
物語は途中から意外な方向へ進行する。
そしてまた意外な結末を迎えることになる。
映画自体もしっかりつくってあり観るに十分の内容である。
監督はニコラス・ウィンディング・レフン。
デンマーク出身の監督である。
この映画は昨年の「カンヌ映画祭」で監督賞を受賞している。
スピーディな進行、思わぬストーリー展開。
どれをとっても満足のできる内容である。
是非観ることをお勧めする。
2011年アメリカ製作、カラー100分、日本公開2012年、監督ニコラス・ウィンディング・レフン。

明日のためにその79-あまちゃんテーマ曲

2013年05月11日 | 音楽
進行先の見えない面白さ。

NHKの朝の連続テレビ小説。
昭和36年の「娘と私」から数え既に50年を超える放送実績を持つテレビの顔である。
今この「朝の連ドラ」が熱い。
現在放送中のドラマは「あまちゃん」
女子高校生が海女に魅せられてその世界で成長していく姿を綴っている。
ドラマの自体の人気も高いようだがそれ以上にこのドラマの「OP(オープニングテーマ)」が更に熱くなっている。
私もこのドラマを見はじめたころそのOPにはちょっと驚きと嬉しさを覚えた。
なんと言っても魅力的なのは曲の進行先が読めないところである。
いまの洋、邦のポップスを聴いているとなんとなく曲の進行が読めてしまう。
かってセックスピストルズのジョニーロットンは「一番つまらない曲は曲の進行が読めてしまうものだ」と語った。
しかしこのドラマのOPは見事に進行の先が聴くものを裏切ってくれる。
これほど心地よい音楽は最近稀である。
事実ユーチューブなどでこのOPを様々なアンサンブルでアレンジした動画が沢山投稿されている。
この曲に関する人々の興味と評価の高さを物語っているのだ。
作曲者は大友良英。
ノイズミュージックやジャズを専門としている作家と言うことだ。
前述したとおり一度ユーチューブで「あまちゃん」を検索してその様々な演奏を聴いていただきたい。
この曲は昔アメリカのスパイクジョーンズが演奏していた「冗談音楽」に通じるものがあり、是非そのパターンでの演奏も聴いてみたい。
私自身も少なからず影響を受けていて最近また作曲活動を再開したいと思っている。

明日のためにその78-苦渋列車

2013年05月10日 | 邦画
爆走する「苦渋列車」

現代の日本において「定職」を持たない人も数多くいる。
人は「定職」をもつことによって「社会的ステータス」「生活の安定」を得ることができる。
絵に描いたような平凡な家庭が一番であると言う事は私も否定しない。
今回紹介する映画は「苦役列車」
第144回芥川賞を受賞した小説の映画化である。
ストーリーを紹介しておこう。
あることをきっかけに幼くして家庭離散になった主人公北町貫多。
彼は中学を卒業後港湾で日雇い労働者として生活していた。
或る日彼は同じ港湾で日雇いとして働き始めた日下部正二と知り合いになる。
彼らは友達として交流をし、貫多のあこがれの女性康子とも正二の仲立ちで友達としての交際を始められるようになる。
一見順調に見える貫多の人生であったが......
とにかく主人公の貫多が凄い。
自分にとって人生の悪い選択ばかりをする。
まさに爆走し堕落してゆく機関車のようなパワフルさだ。
しかし私はその彼の生き方に自分自身のある部分を見た気がした。
きっとこの映画を観た人の中にも自分自身のある部分を彼に見出した人も多いと思う。
ラストの彼の背中に私たちは彼の将来の何を見出すのだろうか。
監督は以前ブログで紹介した「リンダリンダリンダ」を撮った山下敦弘。
今回もちょっと映画のつくりとしては荒いがなかなかしっかり撮ってある作品だ。
或る意味、内容的にヘビーなので広くお勧めできる映画ではないが興味をもったら観ていただきたい。
近日中に私は原作も読むつもりである。
2012年日本製作、2012年日本公開、カラー114分、監督山下敦弘。