ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその492-首里の馬

2020年11月02日 | 
主題の見えてこない作品。

ここのところ、本をたてつづに読んでみた。
以前の記事にも書いたとおり、私は長年にわたり、芥川賞受賞作品を読んできている。
今回も、今年の前期の芥川賞受賞、2作有るうちの「首里の馬」を読んだ。
今回はその感想を綴ってみたいと思う。
おおまかなあらすじを紹介しよう。

沖縄の郷土資料館に眠る数多の記録。中学生の頃から資料の整理を手伝っている未名子は、世界の果ての遠く隔たった場所にいる人たちにオンラインでクイズを出題するオペレーターの仕事をしていた。
ある台風の夜、幻の宮古馬が庭に迷い込んできて......(単行本の帯より引用)

文章は比較的軽く、読みやすい。詰まるところはなく、スムーズに読み進めることができる。
ただ、状況説明がやたらに長く、前半はその説明を永遠と聞かされている感じがする。
その長い説明の後、ようやく物語本体に入る。ここまでで結構読者は疲労感を覚えるのではないだろうか。
また、情景描写、人物の動作の描写がやたらに細かく、そこまで描く必要があるのかも疑問に思える処だ。
そして場面が様々なところに飛び、その関連性を的確に結びつけていないので、主題が見えてこない。
また文書上に、私としてはやたらにカタカナが使われいるのも、ちょっと奇妙な感じを覚えた。
この本の一番の失敗点は、物語の前半に描かれている、PCの故障に関する描写だろう。
作者は、古いPCが立ち上がらない時、会社の契約している町の電気店の店主が来て治しくれると書いてあるが、私自身、自作のPCを今まで数台以上組み立てた経験から言えば、この本に書いてあるようなことはありえないのだ。
PCが立ち上がらない原因を即座に見つけ、それをその場で修理すると、この本には書いてあるが、それは限りなく不可能な事である。
作者はもう少しPC等について勉強してから書くべきである。他にも電子機器等について、怪しげな記述が多々ある。これも本全体を汚してしまっている要因のひとつだ。

作者は過ぎゆく時間の大切さ、そして世界平和の大切さを訴えたかったのかもしれないが、それがいまひとつ迫ってこない。
題名になっている「首里の馬」も、その登場場面は少なく、何故これを本の題名にしたのか不思議である。
今回読んだ作品は、私にとってはちょっと残念な作品になってしまった。

2020年第163回芥川賞受賞、作者:高山羽根子

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