ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその482-巴里祭

2020年08月17日 | ヨーロッパ映画
純粋なる傑作。

最近の映画は、特殊撮影あり、ギミックありと、様々な要素が盛り込められている。
映画100年を超える歴史のなかでは、最初の映画は、汽車がただ駅に到着するところを写したり、体の表現だけで観客を笑わせるスラップスティックだったりと、実に単純な要素だけで出来ていた。
人間の感情に訴えるものは、案外ストレートでシンプルな要素なのかもしれない。
今回紹介する映画は「巴里祭」。
フランス映画初期の傑作である。
ストーリーを紹介しておこう。

ジャンはタクシー運転手、彼の住むアパートのむかえのアパートに住むアンナ。
二人は喧嘩しながらも、お互い心通じ愛し合っている。
革命記念日の前日、仕事をなくしたアンナをジャンは踊りに誘い、降ってきたにわか雨の雨宿りをしているとき、二人は口づけを交わし、お互いの心を確かめた。
しかしその後、ジャンの別れた昔の女が、彼のアパートに転がり込む。
それをアンナは目撃し、彼に別れを告げようとするのだが........

とにかく、良い意味で単純であり、純粋であり、初々しい魅力あふれる作品である。
余分なものを一切排して作られた一本である。
そこが良い。やたらストーリーを複雑化したり、ケレン溢れる演出をしたりしていないところが好感が持てるところだ。

ジャンはあることで、タクシーの運転手を辞め、悪い連中と付き合うことになる、
そしてアンナが新しく勤めたバーに、強盗として入る手引きをする。
しかし寸でのところで、強盗は失敗、ジャンとアンナの再会も最悪の状況で迎えることとなる。
その後暫くして、アンナは資金を元手に、移動式の花売りを始める。
そしてジャンもタクシーの運転手に戻る。
ある日ひょんなことから、ジャンとアンナは再会する。
しかしその再会のきっかけも、最悪なものだった。
そんな折、急に降っていた雨が強くなる。二人も思わず雨宿りをする。
またも偶然に同じところへ雨宿りした二人。そして今までのことが無かったかのように、二人は唇を重ねる。
二人の愛の、第二章の始まりである。

これだけで良いのである、二人の若者の出会い、別れ、再会を映画にするには、余分な着色は必要がない。
久しぶりに、映画の原点に戻った作品を観ることができた。
また、この映画のセットの作りの素晴らしさ(まるでロケーションしたような)は称賛に値する。
更に音楽も素晴らしい、この映画にしてこの音楽ありである。
是非皆様にも、観ていただきたい傑作である。

1933年、フランス製作、モノクロ、89分、監督:ルネ・クレーヌ

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