ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその390-ドラゴン×マッハ

2019年09月30日 | アジア映画
濃密な作りが楽しめる佳作。

70年代、ブルース・リー。
80年代、ジャッキー・チェン。
カンフー映画は、時代とともにスターを生み、発展してきた。
しかし、昔のカンフー映画は、作りが荒く、今観ると雑な部分がどうしても目に付く。
ここ20年程前からは、徐々にその内容もしっかりし、観ても雑な部分が少なくなっている。
これは、ツイ・ハークの発明した「ワイヤーアクション」やウシャウスキー姉妹の「マトリックス」に見る、カンフーアクションへの憧れからカンフー映画の転機、変化と言うものを生み出したとおぼしい。
今回紹介する映画は「ドラゴン×マッハ」香港のマックス・チャンとタイのトニー・ジャーと言う豪華顔ぶれによるカンフーアクション映画だ。
ストーリーを紹介しておこう。

潜入捜査官のチーキットは、臓器密売の組織に潜入していたが、ある日その正体が組織にバレて、タイの組織の息のかかった刑務所に送られる。
そこで、彼は手痛い仕打ちを受け、香港の警察に助けを求める。
それを知った彼の叔父、チャンはなんとしても彼を助けようと、警察を裏切り、単独で行動を起こす。
一方、白血病の娘を持つタイの留置所の管理人チャイは、チーキットの扱いの酷さに多少の不満を持つようになるが、所長から手厚い養護を受けている手前、自分の意思を表すことができない。
そんな折、所長のボスである心臓病を患っているホンが、自分の弟を誘拐し、彼の心臓を自分に移植する計画を所長に依頼する。
その計画は徐々に進み、ホンの弟を拘束した一味だったが.......

この映画の良いところは、骨子がしっかりしており、その中で濃密な映画の作りが成功しているところだ。
特に格闘シーンでの、音楽の使い方は、そのシーンと対照的な音楽を作り、シーンを印象付ける。
これは、ジョン・ウーが映画「フェイス・オフ」で使った手法と同じもので、その模倣と思われるが、効果としては良くできている。
そして、その格闘シーンが凄い。
特に終盤の、所長とチーキットとチャイとの三つ巴の戦いは、スリル満点で過去のカンフー映画の格闘シーンと比べても、特筆に値する出来である。
カットバックを多用した映画作りの上手さといい、濃密なストーリーといい、現代アクション映画の佳作と言えるだろう。
傑作と言いたいところだが、残念ながらラストシーンに近いところから、つじつまの合わない、説明不能な個所がいくつかある。
ラストは、白血病を克服した娘が成長し、この物語の述懐するシーンで終わっていく。ここの作りは上手いと思わせる。
ただ、ラストのつじつま合わせをしていない分、こちらに伝わってこないところがある。
多少惜しい部分もある映画ではあるが、観て損のない物だ。
是非観ていない方は、観ることをお勧めする。

2015年、香港・中国製作、カラー、120分、監督:ソイ・チェン

明日のためにその389-今週の一曲。

2019年09月27日 | 今週の一曲
みなさま、週末のひととき、いかがお過ごしでしょうか。
今回の今週の一曲は、ギリシャの曲をご紹介します。
歌手はハリス・アレクシーウと言う女性歌手です。
ギリシャの音楽とはどんな音楽でしょうか。
私にもうまく説明できません。
みなさまの、お耳によって判断してください。
では、ご堪能あれ。

Dos' Mou Mia Mera

明日のためにその388-アマゾンミュージックHD

2019年09月25日 | 音楽サービス
現在最高の音源が聴けるサービス

現在、スポティファイをはじめ、数多のストリーミングサービスが利用できるようになった。
どのサービスも、数千万曲のストックをもっており、どれか一つのサービスを利用すれば、ほぼ自分の希望する音楽は聴ける。
このようになると、サービス自体に何か付加価値がないと、なかなか契約を結ぶのは難しいだろう。
私の好きなワールドミュージックなどは、どのサービスを利用しても、大体同じ物は聴ける。
しかし、ここにきて、画期的なサービスがローンチした。
アマゾンミュージックHDである。
つい数日ほど前にサービスを開始したそれは、音質重視の方向を打ち出し、リニューアルされた。
今までのサービスの殆どが「MP3」の非可逆圧縮方式を使い、音楽をストリーミングしていた。
日本ではローンチされていない、アメリカのティダルやフランスのクオーパス、日本では既にローンチされたディーザーは、可逆圧縮方式の「FLAC」を使い、端末側では圧縮が解かれ、44.1kHz、16ビットのCD音質で音楽が聴くことができる。
アマゾンミュージックHDは、それに加え、俗に言う「ハイレゾ」(ハイレゾリューション)によるストリーミングを開始したのだ。
ハイレゾは、現時点で、192kHz、24ビットのサンプリングが最高とされているが、アマゾンミュージックHDは「ウルトラHD」と称し、その音源も既に数百万曲ストックがあると言う。
月額は1980円(個人プランの場合)、アマゾンプライム会員は1780円となっている。
同じ価格ではディーザーがあるが、こちらはハイレゾに対応していない。
ましてや、以前このブログに書いたように、ディーザーは現時点でwindos10に対応していない。
ストックの楽曲数も、6500万曲のアマゾンミュージックHDに比べ、ディーザーは4500万曲と少ない。
このままでいくと、間違いなくディーザーはアマゾンミュージックHDに淘汰されてしまうだろう。

私はアマゾンプライムの会員である。早々このアマゾンミュージックHDを試してみることにした。
初月から3カ月は月額780円、それ以降は1780円の月額設定となる。
契約をウエブで完了した私は、期待して「ハイレゾ」音源を聴いてみた。
しかし、残念なことに、私のpcスペックでは、48kHz、24ビットが上限で、折角192kHz、24ビットの音源を聴いたのだが、それを完全に試すことはできなかった。
しかし、48kHz、24ビットの音源は素晴らしく、低音ははっきりとベースラインなどが聴き取れ、高音はどこまでも伸びで綺麗に散ってゆくのがよく聴きとれた。
こうなると、USBタイプの外付けサウンド媒体を購入し、ハイレゾを楽しむしかない。全くお金のかかることだ。
一度このような経験をすると、後には戻れないのが人間の「性」である。
もうディーザーへの興味も無くなってしまった。
ただ、アマゾンミュージックHDで惜しいのは、私の好きなワールドミュージック系の音源が少ないと言うことだ。
スポティファイや、ディーザーの方がその点は有利だ。
いくつもストリーミングサービスを契約しているのは無駄なことである。
しかし、楽曲について考えるとそうもいかない。悩ましさは尽きないのである。
皆様も是非興味を持たれたら、アマゾンミュージックHDを体験することをお勧めする。
そこには、必ず新しい発見があるからだ。

明日のためにその387-津軽じょんがら節

2019年09月23日 | 邦画
津軽の背景をダイナミックに捉えた名作

切ないばかりの男女の関係。
これに耐え、その中に喜びを見いだせる人はいるのだろうか。
男女の波長は、合っていなければいけない。
どちらかの波長が狂ってしまうと、もう元には戻れないだろう。
今回紹介する映画は「津軽じょんがら節」
日本を代表する名作である。
ストーリーを紹介しておこう。

徹男とイサ子は東京から逃げてきた。
徹男はヤクザで、敵対する組の幹部を自らの意思で殺し、自分が居た組からと敵対する組から命を狙われていた。
そこでイサ子は、自分の生まれ故郷である津軽へと、二人で逃げてきたのだ。
イサ子は、夜、場末の飲み屋で働き、徹男を養っていた。
一方徹男は、目の見えない娘、ユキと偶然出会う。
ユキは徹男に好意を抱き「あんちゃん」と彼のことを呼び親しくする。
何とか二人は追手から逃げ、安心した気持ちになっていたのだが.........

まずこの映画で、圧巻なのは、津軽の荒々しい波と曇天とした空を捉えた、ダイナミックなショットだろう。
これは観る物を圧倒して余りある表現だ。
徹男とイサ子の関係は、徐々にずれはじめ、破綻寸前となる。
徹男はユキに純愛を見つけたのか、彼女に徐々に引き付けられる。
このことを機会に、徹男は、アサリ漁師の弟子となり、毎日漁に出かけるようになる。
終盤、イサ子と別れた徹男は、ユキと結ばれる。
徹男は、この津軽に、心の安住を見つけたのだ。
しかし、徹男には悲しい現実が待ち構えていた。
ラスト荒々しい海を背景に、ユキが一粒の涙を流す。
ここがたまらなく観ている者の涙を誘う。
映画の作り、カットの素晴らしさ、どれを取っても言うことの無い名作である。
そして、ユキを演じた「中川三穂子」の素晴らしい演技にも称賛を送ろう。
是非観ていない方は、観ることをお勧めする。

1973年、日本製作、カラー、103分、監督:斎藤耕一

明日のためにその386-今週の一曲

2019年09月20日 | 今週の一曲
みなさま、週末のひととき、いかがお過ごしでしょうか。
今回の今週の一曲は、英国のパンクバンド、クラッシュの「Capital Radio」です。
この楽曲は、シングルのみで発売され、廃盤になった後、かなりのプレミアが付いたことでも有名です。
現代のメロコアの祖との言うべきクラッシュ、その若々しいパワーのある演奏をお楽しみください。
では、ご堪能あれ。

The Clash - Capital Radio Two [Single]

明日のためにその385-8トラ

2019年09月18日 | オーディオ
時代の生んだ偉大なる産物

8トラックテープと言うものが、かって存在した。
第一次全盛期は昭和40年代。それまで、車に存在していた音源は「ラジオ」しかなかった。そこに現れたのが「8トラックテープデッキ」である。
この8トラックテープは、今までラジオしか聴くことのできなかった車内に、自分の好きな音楽を聴くことができる、革命的な発明であった。
ちょうど文庫本サイズ、厚さ2㎝の8トラックテープは、4チャンネル、ステレオの音源を収録できた。
当時のいけてる若者たちはこぞってこのデッキを装備していた。
そして第二の全盛期は昭和50年代中盤、カラオケの演奏用のテープとして用いられていた。
音楽の頭出しが簡単なことで、世のスナックには8トラックテープの、カラオケ機器がどの店にも設置されていた。
やがて昭和60年代ともなると、レーザーディスクカラオケの台頭で、8トラックテープは徐々に消えて行く。
そして現在、8トラックテープや、それを再生するデッキも全く見なくなってしまった。
しかし、私は昔から密かにこの「8トラックテープ」を集めていた。正確に言うと今でも集めている。
きっかけは30年以上前の、ある中古レコードフェアでのこと、私が中古レコードのエサ箱を一通り漁った後、ふとそばのワゴンを見ると、カセットのミュージックテープが安価で販売されていた。
その中に8トラックテープも販売していたのだ。
私自身8トラックテープの存在は知っていたが、カラオケの物ばかりで、ミュージックテープとしてのそれは初めて見た。
勿論8トラックテープを買うつもりなどなく、何本か冷やかし程度で見ていたのだが、どうしても欲しくなる内容の物を目にしてしまった。
私は焦った、再生する装置が無いのに、そのテープを買うかどうか。
さんざん迷った挙句、8トラックテープを手に、会計に向かっている私があった。
その後、ジャンク屋で見つけた8トラックテープデッキが、奇跡的に動き、私の8トラックテープ収集は、俄然勢いを増すことになった。
中古レコードフェアは勿論、デパートから様々な所へ出向き取集に熱を上げた。会社の先輩へもお願いし、古いテープを譲ってもらったこともある。
現在その収蔵数は100本を超える。
「こんなデジタル時代に8トラックテープなんて」と侮ることなかれ。
数年前から8トラックテープは、密かなブームを呼んでいる。
数年前、ヤフオクに出品されたビートルズの8トラックテープ「リボルバー」は、なんと60万円という高値で落札されている。
今もヤフオクで、8トラックテープを検索していただきたい、一本1000円程度から上は何万円と言うものまで出品されている。
何故数年ほど前から、このような状態になったのかは私にも分からない。

私は数年ほど前にアメリカのeBayで、日本のアカイ製の8トラックテープデッキを購入し、今も楽しんでいる。
ガラガラとモーターの音をたてて、音楽を再生する様にはデジタルには感じられないヒューマンな名残を感じる。
それが私は好きだ。
私自身この趣味は、現代において、とても贅沢な趣味だと思っている。


明日のためにその384-音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!

2019年09月16日 | 邦画
突き抜けた感のあるハチャメチャムービー

ドーピング。スポーツ選手では、たびたび問題になる違法行為だ。
しかし、それ以外の職業でも、このドーピングは存在するのだろか。
今回紹介する映画は「音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ‼」音楽業界にまつわる、ドーピングを描いた作品である。
ストーリーを紹介しておこう。

ロックシンガー、シンは、声帯にドーピングを処して、常人より大きな声を出せることで、人気を博していた。
もちろん「ドーピング」については、業界の秘密である。
シンは過剰なドーピングにより、声は破綻寸前であった。そんな折、彼は声が小さすぎて何を歌っているのか分からない、女性ストリートミュージシャンふうかと出会う。
最初は怪訝な感情をシンに持ったふうかだが、徐々に気持ちは打ち解けだし、彼女は韓国で声帯の整形をすればシンの声が壊れないことを知る。
シンとふうか、二人は韓国を目指し旅立つのだが.......

私はこれほど映画を馬鹿にした作りの作品に出合ったことがない。
無意味な高速のローリングショット、俳優たちの大げさで、下手な演技。どれをとっても良いところなどない。
しかし不思議に、そのような部分が、作品から「スコン」と抜けた時、初めてこの作品の面白さが分かってくる。
作品からと言うよりも、観ている側から「スコン」と抜けた時に、それは理解できるのではないだろうか。
一番いけないのは「中途半端」な「無意味さ」「下手さ」である。いままで様々な作品を観てきたが、私の嫌う映画はその手の映画が多い。
どんなことでも、徹底的にやり抜くこと、これが一番大切である。
その意味ではこの作品は、徹底的にやり抜いている。そこが良い。
ただ一つ残念だったのが、ラストシーンが今の日本映画のステレオタイプだったことだろう。
ここも終盤から、一気に突き抜けた作りであれば、もっと褒められただろう。
この映画の監督の、他の映画の映画評をネットで調べてみたが、どの作品も評判が低い。
きっと他の映画も、この作品のような作りとなっているからであろう。
しかし何度も繰り返すが、ばかばかしさを徹底的にやり抜くこと、そしてそれが観る側に伝わることで、評価は変化すると思う。
私はこの監督に興味を持った。他の作品も観てみたいと思っている。
一般的にはお勧めしづらい作品だが、興味を持たれた方は観ることをおすすめする。

2018年、日本製作、カラー、108分、監督:三木聡

明日のためにその383-今週の一曲。

2019年09月14日 | 今週の一曲
みなさま、週末のひととき、いかがお過ごしでしょうか。
今回の今週の一曲は、中国の「玖月奇迹」と言う男女デュオをご紹介します。
このデュオは、中国では、かなりの人気を博していますが、日本ではまだ無名です。
女性がエレクトーンを弾き、男性がヴォーカルをとるという、珍しい構成のデュオです。
また、なかなかドライヴ感のある演奏は、きっとみなさまを引き付けるでしょう。
では、ご堪能あれ。

[2018我要上春晚] 致春晚 · 玖月奇迹一首《中国范儿》再度点燃全场 | CCTV春晚

明日のためにその382-shazam

2019年09月12日 | アプリ
驚く的中率。

スマホのアプリで「shazam」と言うものがある。
知らない曲を、このアプリで、曲名、歌手名を検索するものだ。
私は数年前に、このアプリを知って、早速使用したことがある。
しかし、その結果は惨憺たるもので、殆どの曲を検索出来なかった。
それ以来このアプリを使用していなかったが、最近どうしても知りたい曲が有り、久々にインストールしてみた。
私が知りたかった曲は、タイの曲で、ダメもとで試してみたのだ。
果たしてこのアプリは私の期待を良い意味で裏切り、あっさりその曲の検索成功したのである。
早速曲名を、YouTubeにコピペして検索したところ、私の探していた曲が見事に再生された。
数年前使用した時は、かなり有名な「欧米」の曲しか検索出来なかったshazamが、まさに急成長していたのだ。
東南アジアの曲を検索できるのは、ワールドミュージック好きな私にとって、とても重宝する。
どんな国の、どれだけの曲が検索できるのか、私は非常に興味を持ち、日本の曲を検索してみた。
曲名は「ユー&ミートゥナイト」ヤマハのポプコンの本選大会で、グランプリを獲得した楽曲だ。
しかしこの曲は、レコードとしてリリースされたが、殆どヒットせず、忘れられた曲である。
さすがに、ここまで条件が悪いと、検索するのは不可能と思った。
しかしこの曲も、アプリは検索してしまった。曲名も歌手名も正確に。
その後も数十曲検索してみたが、ほぼ的中。その確率は80%以上だった。
いったいこのアプリのロジックはどうなっているのか、曲のストックはどこから供給を受けているのか、興味は尽きない。
ところが、ここで、面白い現象が発生した。
インターネットラジオで検索した曲を、再生できるサイトが無いのだ。
私は「スポティファイ」と「dezeer」と2つのストリーミングサービスを利用しているが、そのどちらでもその曲のストックが無く、聴くことができない。
YouTubeでさえ、曲のストックが無く、再生できない楽曲も有った。
と言うことは「shazam」のデータベースは「YouTube」のデータベースさえも、上回るものと言える。
この点には正直驚いた。誤検索することも多少はあるが,完成度の高いアプリと言えるだろ。
皆様も早速「shazam」をスマホにインストールし、曲の検索を試していただきたい。
その的中率に、驚かれるだろう。
テレビ等の今流れている音楽に、スマホのマイクを向け、shazamマークをタップするだけで、探していた楽曲が分かるのである。
最近インストールしたアプリの中では、トップのアプリだと私は思っている。
このようなアプリを目の当たりにすると、いったいスマホのアプリはどこまで進化するのか、興味津々である。

明日のためにその381-太陽の墓場

2019年09月10日 | 邦画
昇りゆくものを沈めるもの

若い時代、人、特に男は上昇志向まっしぐらで突き進む。
それが間違っていようが、構わない。
目の前の敵を淘汰し、自分がその上に立つ。
これは学生時代から、就職するまで、男の心の炎となって燃え続ける。
心と体がシンクロし、ある程度人間性が固まると、その炎も鎮火するだろう。
今回紹介する映画は「太陽の墓場」
燃え滾る若さの、残酷な終焉を描いた作品だ。
ストーリーを紹介しておこう。

若い愚連隊のチンピラ、ヤスはある日、大阪の繁華街で、辰雄と武と言う若い二人に喧嘩を売る。
ひとしきり暴れたところで、彼らは仲直りをし、ヤスが入っている信栄会のボス、信に引き合わせ、信栄会に無理やり入会させる。
この信栄会は、売春を中心に金を稼いでいたが、そろをよしとせず、対立する大浜会に常に命を狙われていた。
ある日ヤスは個人的に会に内緒で、花子と言う女の元、日雇い労働者の血を買う商売をしていた。
それをひたすら隠し続けたヤスだったが.......

まずこの映画で気になったのは、大阪弁だろう。
付け焼き刃的に俳優は覚えたのだろう、全く説得性の無い大阪弁になっている。
ここは大変惜しいところである。
そしてこの映画に登場する人物は、汗を常にかいている。
映画の設定柄、夏なので、汗はしょうがないとしても、皆異様に、額、頬、鼻が吹き出でいる。
この感じが、観ているこちら側にも伝わって、一種異様な感覚に陥る。
あと特筆すべきは、武を演じた「佐々木功」だろう。
佐々木功と言えば「宇宙戦艦ヤマト」のテーマ曲を歌うアニメ歌手として知られているが、この映画の製作年に歌手デビューしている。
当時は「日本のプレスリー」と呼ばれ、大いに女性フアンにもてたと側聞したことがある。
彼の演技はとてもナチュラルで、その容姿はデビュー直後の「ジェームスデーン」にも似ている。
繊細で、弱弱しいキャラクターを見事演じきって見せたのは、この映画の良い点としてもっと評価されるべきだ。
ラスト、武の裏切りから、信栄会のドヤを大浜会に見つかり、信は命からがら逃げてくる。
その途中、武に会い「ドヤを明かしたのは自分だが、それは花子にしかいっていない」と信に説明する。
その時、武を追ってきた花子を信は見つける。
信は花子を殺そうと追いかけるが、武は身を呈して信を止める。
銃声が二発聞こえた、信が武を撃った瞬間だった。
しかもそこは線路の上、今まさに列車が通過しようとしていた。
一目散に逃げてきた花子は、自分の家、スラム化しているバラック集落だった。
バラック小屋でも、ひと悶着あったことにより、彼女の住まいも、含め、集落は全滅する。
花子は、一緒に血の買取りをしていた老人の手をとり、太陽に向かいどんどん進んでゆく。カメラはその二人が小さくなるまで映し続ける。

さて、この映画の主題は何なのだろうと私は考えた。
なにが「太陽」でなにが「墓場」なのだろう。
明確な答えは出なかった。
しかし、この映画を観て思ったのは「青春とは美しいものばかりではない」と言うことだ。
どんなに若く、健全に暮らしていても、その先は地獄しかない若者もいると言うことだ。
「太陽」は若者の力、希望で「墓場」とはそれを飲み込んで消化してしまう恐ろしいブラックホール、ここではバラック集落がそれの象徴ではないだろうか。
これはあくまでも、ぼんやりとした私なりの解答である。
是非観ていない方は、この作品を観ていただき、ご自身の納得できる「主題」を見つけてほしい。

1960年、日本製作、カラー、87分、監督:大島渚