ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその443-血槍富士

2020年02月19日 | 邦画
凝縮された群像ドラマ。

人間、個々に人生は違う。
身分の差も、現代では無いように思うが、実はあったりする。
特にサラリーマンの世界では、江戸時代の身分制度があてはまるシチュエーションに度々出くわすだろう。
個々に違う人生が交錯する社会、そこに真の平等が求められるべきではないのか。
今回紹介する映画は「血槍富士」
江戸時代の階級制度に、辛辣な一撃を加えた映画だ。
ストーリーを紹介しておこう。

江戸を目指して東海道を旅する若様、小十郎と槍持ち権八、お供の源太。
彼らは、旅の途中途中で様々な人と出会い、触れ合う。
そして彼らは、街道中を荒らしまわっている泥棒を見事捕まえる。
ひょんな出来事に、彼ら自身も驚いたが、担当藩主からの礼状に、小十郎は激怒した。
捕まえたのは自分ではないのに、何故自分の手柄になるのか。
礼状一筆だけで、金銭も含めた礼が全くない。
この件を境に、小十郎の中で、武士世界に対する疑問が沸々と浮かび始めるのだが.........

旅する人たちの、群像の描き方が実に上手い。
各個人の描き方も、しっかり個性を込めて描いている点はさすがであろう。
いくつもの人間のストーリーが重なり合い、そこに重厚な物語が出来上がってくる。
とにかく素直に映画にのめりこめるところが秀逸な作品である。
とても柔和な形で映画は進んでいくのだが、それがラストには一転、悲惨な結果が待っている。
小十郎が求めた、自由で、人を尊重する世の中には、現在に至っても達成されていない。

人間は「エゴ」と言うものを持っている。
これを無くすことは無理なのであろうか。
これさえなければ、社会はもっと住みやすくなると思うのだが。
間違いの無い傑作なので、観ておられない方は、観ることをお勧めする。

1955年、日本製作、モノクロ、94分、監督:内田吐夢

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