小津映画にしては、シリアスな作品
青春時代から培った友情は、果たしていつまで続くものだろうか。
人は皆時を経て、成長し、感情も変わってくる。
青春の大切な感情、友情は永遠なのだろうか。
今回紹介する映画は「青春の夢いまいづずこ」。
友情の大切さと、その変化を描いた作品である。
ストーリーを紹介しておこう。
大学生活を謳歌する4人、彼らは深い友情で結ばれていた。
しかし、その中の堀野は、会社社長の父を急病で失う。
失意の中、父親の会社を引き継ぎ、大学を中退して、社長となった彼は、就職難の中、他の3人から会社への入社を懇願される。
入社試験で、その3人に不正な待遇を与え、何とか就職できた3人。
皮肉にも大学の同僚は、堀野の部下として働くことになるのだが......
全く皮肉な内容である。当然のことながら、入社した3人は、堀野を社長と仰ぎ、だんだん遠ざかってしまう。
しかし、大学時代の感覚を失っていない堀野は、同等に彼らと付き合おうとする。
ここの視点が面白い。普通は、社長になった堀野が偉そうになり、友情に亀裂が入るのが普通の描き方だと思うが、小津は違う。
いつまでも変わらない友情を小津は大切に描く。ここは私が一番共感するとこだ。
そして、堀野は、大学時代から好意を抱いていた、女性繁に結婚を申し込もうとする。
しかし、繁は4人の中でも一番体裁の上がらない、斉木と結婚するという。
そのことを知らなかった堀野は、3人の前で、繁へのプロポーズをほのめかす。
苦悶する斉木。堀野に大きな借りのある彼は、繁への思いを断ち切ろうとする。
それを知った堀野は、斉木を叱咤し、自分たちの友情の大切さを訴える。
このあたりの作りが、甘いと思われる方もいるだろうが、私は大いに感動した。
ラスト、新婚旅行に向かう列車を、3人は自社ビルの屋上から、手を振って見送る。
いつまでも変わらない友情を称えた、さすがの小津映画である。
1932年、日本製作、モノクロ、サイレント、85分、監督:小津安二郎