ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその485-むらさきのスカートの女

2020年10月17日 | 
あなたの傍にいるかもしれない。

私は「芥川賞」をある程度追って読んでいるが、最近ご無沙汰していた。
昨年の上半期にそれを受賞した作品を、最近ようやく手に取り、読んでみた。
タイトルは「むらさきのスカートの女」。今村夏子著。
大まかなあらすじを紹介しよう。

私(主人公)は自らを「黄色いカーディガン」の女と呼び、ある一人の女性に異様な興味を持つ。
それは、主人公の界隈では有名な「むらさきのスカートの女」である。
無造作に伸ばしたボサボサの髪、窪んでシミの目立つ顔。どこから見ても少し異様な感じの女性である。
その「むらさきのスカートの女」に興味を持った主人公は、間接的に少しの援助を始め、その変化を観察していたのだが......

文書はいたって軽妙で、文書の深み、コクが少なく、そこが少し残念な所か。
それも相まって、読み進めるには苦労することがない本である。
ここに出てくるむらさきのスカートの女はこの物語の中に本当に実在するのか、主人公が作り出した幻なのか、読み進むにつれてそれに興味が湧く。
それは、人間の成長を投影した幻にも似た存在なのだ。

物語は終盤に向け、思わぬ展開が待っている。ここは実際に読んでいただきご自身で確認してもらいたい。
なかなかしっかり読ませる、160頁近いヴォリュームのある作品だが、読むには十分な価値があると私は思う。
特に最後の構成は凄い。小説を読んだ後の余韻が残る良い終わり方だ。
是非皆様も、ご一読いただくことをお勧めする。。

2019年第161回芥川賞受賞、作者:今村夏子。

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