2017年刊行の歌集です。作者の奥山恵さんは、柏市にあるハックルベリーという児童書専門店の店主。そして、雑誌「日本児童文学」の編集長です。
奥山さんが編集長になられてから、「日本児童文学」では詩歌にも光を当ててくださいました。これまでは少年詩集が巻頭に載るだけだったのですが、短歌と俳句も載るようになったのです。
私にもお声がかかり、俳句を掲載していただきましたし、俳句特集(先日ご紹介した「イリーナ」)では短編を書かせていただき、また今年5、6月号での座談会にも出ています。
そのご縁で歌集を頂戴しました。
すぐにご紹介できないくらい、読んだ後、いろんな思いがこみ上げてきました。
〈家庭訪問〉むだに終わりて水銀の流れのような川を渡りぬ
かつて、高校の先生をされていたときの短歌です。
生きているふりをする人形死にたくてたまらぬ人間すれちがう橋
〈その夜〉も向こうの橋には満員の列車響いて往き過ぎたろう
ロッカーに残されし分厚きバインダーと生理用品 いのちがあった
この川はどっちに流れているんだろう簡単なことも澱む東京
斎条の階段の陰にひそみいて生にも死にもはじかれし記憶
傷ついた若さを容れる容れものが腐ってゆくか腐ってゆくよ
東京の川に伴走されながら眠れない夜を走る人あり
他にも海外で詠まれたもの、書店を開いてからのもの、ふくろうのふーちゃんのこと、たくさん好きな短歌がありました。
今は明日には過去になる。その川の流れのような時をとどめようと、目を凝らしているのが伝わってきました。
私も、短歌を作っていた時期がありました。俳句は17音。短歌は31文字(みそひともじ)。この差は大きい。
その差は、重い。
この歌集を読んで、実は短歌を作りたくなり、作りました。が、ここで数首作るだけではだめなのです。
ファミレスで作った短歌、あれ、どこにやったかな。
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