1/14 経済産業省
アブダビ首長国との共同石油備蓄事業の拡充・継続に合意しました
https://www.meti.go.jp/press/2019/01/20200114004/20200114004.html
1/17 経済産業省
牧原経済産業副大臣がアラブ首長国連邦、クウェート国及びカタール国に出張しました
https://www.meti.go.jp/press/2019/01/20200117003/20200117003.html
1/14 経済産業省
アブダビ首長国との共同石油備蓄事業の拡充・継続に合意しました
https://www.meti.go.jp/press/2019/01/20200114004/20200114004.html
1/17 経済産業省
牧原経済産業副大臣がアラブ首長国連邦、クウェート国及びカタール国に出張しました
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(世界ランクシリーズ その5 2020年版)
(格差が大きい政治分野、小さい教育分野!)
3.分野別のランクとスコア
(表http://rank.maeda1.jp/5-T02.pdf 参照)
男女格差指数は(1)経済参画分野、(2)教育分野、(3)健康・寿命分野及び(4)政治参画分野の4つの分野について公表されたデータに基づいて詳細な比較検討が行われている(本稿第1章参照)。本章では第2章で取り上げた国々、すなわち世界の上位5か国及び日本を含む主要各国並びに中東主要国について4分野のスコアと世界ランクを概観する。
(1) 経済参画分野の男女格差
総合世界1位のアイスランドはこの分野でも世界2位(スコア0.839)と高い地位を占めている。またノルウェー、フィンランド、スウェーデンの北欧3か国もスコアは0.790前後で世界10位台にランクされている。
米国は26位、英国は58位であるが、日中韓印のアジア4か国は、中国の91位が最も高く、日本は115位、韓国127位、インド149位である。後述するように4分野におけるスコアの格差は政治分野が最も大きく、次いで経済分野となっており、教育分野或いは健康・寿命分野の国別格差は小さい。
(2)教育分野の男女格差
WEFが各国の統計値をもとに判断した教育分野の男女格差は極めて小さい。即ちノルウェー、フィンランド、米国のスコアは1.000であり男女格差が無いとされる。格差指数は1.000が上限であり、国によっては1を超える(即ち男女の逆格差)ケースもあり、格差指数1.000は153か国中35か国に達する。
日本のスコアは0.983とされておりトップとの格差は0.017にとどまるが世界ランクは91位である。同様に中国と韓国はスコア0.973で共に世界100位である。中東諸国ではイスラエルがスコア1.000で世界1位グループに入っている。その他UAEは世界89位(スコア0.987)、サウジアラビア91位(同0.983)であり、エジプト、トルコ、イランは世界100位以下である。但し世界117位のイランのスコアは0.953でトップグループのイスラエル或いはUAEと比べスコア格差はさほど大きくない。
(3)健康・寿命分野の男女格差
韓国及びニカラグアはスコア0.980で世界1位であるが、同スコアは39か国ある。このためスコアがわずか0.001しか違わない0.979の日本は世界順位が40位とされている。この分野の世界最下位は中国であり同国のスコアは0.926である。トップとのスコアの差は0.054で、この格差の中に153か国がひしめいており、わずかなスコアの差がランク上の大きな差となって表れている。
(4)政治参画分野の男女格差
この分野の世界1位はアイスランドで同国のスコアは0.701である。これに続く世界2位はノルウェーであるが、同国のスコアは0.598でありアイスランドと大きな開きがある。日本はスコア0.049、世界順位144位であり、インド(世界18位)にはるかに及ばず、韓国、中国或いはUAE各国とも大きな格差があり、先進国の中では際立って低い。
この分野トップのアイスランドのスコアと日本のスコアの差は0.652と極めて大きい。因みにこの分野の最下位はパプアニューギニアの0.000(即ち男女格差は無限大)であり、4つの分野の中では国別格差が最も大きい。
政治の男女格差は女性国会議員数、閣僚数、或いは過去50年間の女性元首(首相等)の在任期間でランク付けされているため全体的に各国ともスコアが低く、また同じ先進国でもヨーロッパに比べ日米のランクが低い結果となっている。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0494EastMedPipeline.pdf
東地中海の天然ガス開発と海底パイプライン敷設を巡りキプロス、トルコ及びギリシャ3国間に紛争が発生している。問題を複雑にしているのが地域最大のガス田を有するイスラエルと世界最大の天然ガス輸出国ロシアがパイプライン敷設を巡ってしのぎを削っていることである。ロシアのヨーロッパ向け天然ガスパイプラインの中継国であるトルコは北アフリカのリビアとの間で排他的経済水域(EEZ)を設定し長年の宿敵キプロスを抑え込もうとしている 。
さらにここには天然ガスをめぐるロシアと米国のしのぎ合い(hegemony)及び中東・北アフリカの主導権(leadership)をめぐるトルコとサウジアラビア/UAEの争いが絡んでいる。西ヨーロッパのエネルギーをロシアに握られることを嫌う米国はロシアのパイプライン建設にクレームをつけている。アフリカの資源大国リビアではトルコ及びカタールが西部トリポリを拠点とする正統政府を支援し、一方サウジアラビア及びUAEは東部の反政府ハフタール軍閥を支援している。対立の根底にはサウジ/UAEがリビア正統政府をムスリム同胞団寄りだとみなしていることにある。2017年にムスリム同胞団の問題をめぐってサウジ/UAEがカタールと断交、カタールがトルコに救いを求めており、その構図がそのままリビアに反映されている。
ただし問題は一筋縄ではない。ロシアの戦争請負企業Wagnerグループがハフタール軍閥を支援しており、リビアはロシアの有力な武器輸出市場である。ここではトルコとロシアの利害は対立している 。またヨーロッパはリビアから天然ガスを輸入しているが、同時にリビア地中海沿岸からの難民流入に悩まされている。ヨーロッパは天然ガスの輸出は歓迎だが、難民の流入は困る。「モノ」はOKだが「ヒト」は願い下げということである。リビアの安定のためトリポリ正統政府と良好な関係を維持したいのである。
リビアの隣国エジプトはどうかと言えば、サウジ/UAEの同胞団排除政策に同調してカタール断交に加わり、リビアではハフタール軍閥支持を表明している。しかし同国は経済再建が最優先であり、隣国イスラエルからの天然ガス輸入を開始した 。経済再建に失敗すれば「アラブの春」の悪夢が再来する。シーシ軍事政権は当面国内の民主勢力或いは隣国イスラエル及びリビアを刺激しないよう息をひそめている。
東地中海は荒れ模様である。ここでは問題をガスパイプライン敷設に絞って地域の動きを眺めてみよう。
発端はイスラエルの巨大ガス田発見
問題の発端は2010年から2013年にかけてイスラエル領海の東地中海に巨大ガス田TamarとLeviathanが相次いで発見されたことである。Tamarガス田は2013年に、Leviathanガス田は昨年12月に生産が始まった。特にLeviathanの埋蔵量は国内消費量の40年分と言われ、いまやイスラエルはガス埋蔵量4千億立方メートル(石油換算26億バレル )のエネルギー大国に変身した。同国は天然ガスの輸出に着手、すでにエジプトへの輸出を始めており 、まもなくヨルダンにも輸出しようとしている 。さらにイスラエルはギリシャ及びキプロスと海底パイプラインEast Med Pipeline敷設に合意、西ヨーロッパへのガス輸出も視野に入ってきた 。
(続く)
本件に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
荒葉一也
Arehakazuya1@gmail.com
(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil
(石油関連ニュース)
・OPEC月例報告:世界の石油需要は増加するもOPECに対する需要は減少。
・中国の昨年石油輸入量17年連続で増加。輸入国ではサウジがロシアを、LNG輸入量では日本を上回る。
(中東関連ニュース)
*外務省プレスリリース参照。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/me_a/me1/page3_003028.html
(世界ランクシリーズ その5 2020年版)
(北欧諸国がトップ独占、日本は韓国にも追い越されて世界121位!)
2.2020年の男女格差指数世界ランク
(表http://rank.maeda1.jp/5-T01.pdf 参照)
2020年の世界男女格差ランクのトップ(即ち男女の格差が最も少ない国)はアイスランドであり、同国の格差指数は0.877である。これに続くのが2位ノルウェー(指数0.842)、3位フィンランド(同0.832)、4位スウェーデン(同0.820)であり、5位には中米のニカラグア(同0.804)がランクされている。昨年の世界ランクと比較すると1位アイスランドと2位ノルウェー、5位ニカラグアの順位に変動はなく3位と4位が入れ替わっただけである。1位から4位まではすべて北欧の国々であり、男女格差の少ない国として安定した評価を得ている。
日本を含む主要な国々の世界ランクを見ると、英国は21位、米国は53位である。一方アジアの主要な国のランクは中国の106位をはじめ韓国108位、インド112位といずれも世界153カ国中では100位以下の下位グループである。このような中で日本はこれらいずれの国よりも低い世界ランク121位にとどまっている。これら6カ国の世界ランクを前回(2018年、対象国数149カ国)に比べると韓国以外はすべてランクが下がっている。特に日本は前回の110位から大幅に下落し、韓国にも追い越されている。
中東の主要国では、イスラエルが世界64位と最も高い。その他の中東諸国はいずれも世界ランク100位以下であり、UAE120位、トルコ130位、エジプト134位、サウジアラビア146位、イラン148位にランク付けされている。UAEは日本より1ランク上であり、サウジアラビア及びイランは153各国中のほぼ最低ランクにとどまっている。(世界153位はイエメン)
(続く)
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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
(世界ランクシリーズ その5 2020年版)
国連などの国際機関あるいは世界の著名な研究機関により各国の経済・社会に関するランク付け調査が行われている。これらの調査について日米中など世界の主要国及びトルコ、エジプト、イランなど中東の主要国のランクを取り上げて解説するのが「世界ランクシリーズ」である。
第5回のランキングは世界経済フォーラム(WEF)が行った「世界男女格差報告2020(The Global Gender Gap Report 2020)」からMENA諸国をとりあげて比較しました。
*WEFのホームページ:https://www.weforum.org/reports/gender-gap-2020-report-100-years-pay-equality
1.「世界男女格差報告2020」について
「世界男女格差報告2020(The Global Gender Gap Report 2020)」(以下「2020年版報告書」)を発表した「世界経済フォーラム」(World Economic Forum, WEF)は、スイスのジュネーブに本部を置く非営利団体であり、毎冬スイスのダボスで行われる「ダボス会議」の主催者としてよく知られている。
「2020年版報告書」は世界153カ国を対象に経済、教育、健康、政治の4つの分野について、世界或いは各国の公的機関が公表する男女別のデータに基づき、それぞれの分野の男女間の格差を指数化し順位付けを行ったものである。
(1)比較対象される分野とその内容
対象とされるのは以下の4つの分野であり、各分野にはそれぞれ二つ乃至五つの比較項目がある。
I 経済参画分野:経済活動への参加度及び参画の機会(Opportunity)に関する男女格差
比較項目:(1)労働参加比率、(2)同一労働賃金格差、(3)平均所得格差、
(4)幹部職比率、(5)専門・技術職比率
II 教育分野:教育の機会に関する男女格差
比較項目:(1)識字率、(2)初等教育就学率、(3)中等教育就学率、(4)高等教育就学率
III健康・寿命分野:健康と寿命に関する男女格差
比較項目:(1)新生児男女比率、(2)平均寿命
IV政治参画分野:政治参画の度合に関する男女格差
比較項目:(1)女性議員比率、(2)女性閣僚比率、
(3)過去50年間の女性元首(首相等)在任期間
(2)指数化の方法と順位付け
153カ国について上記四つの分野の各比較項目に関する男女それぞれの数値或いは比率のデータを抽出し、この男女のデータについて男性を1とした場合の女性の指数を算定する(最大値は1とする)。この指数の意味は、指数1の場合男女が完全に平等であることを意味しており、指数が低くなればなるほど男女の格差が大きいことを示している。
各比較項目の指数を加重平均したものを、その分野の指数とする。最後に4つの分野の指数を加重平均したものがその国の格差指数であり、153カ国の指数を上位から順に総合順位を付けるのである。
(続く)
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第2章:戦後世界のうねり:植民地時代の終焉とブロック化する世界
荒葉 一也
E-mail: areha_kazuya@jcom.home.ne.jp
8.ゲリラになるか?難民になるか? 彷徨えるパレスチナ人
1964年の設立当初からしばらくの間PLOは穏健な政治闘争でパレスチナ人の民族自決権回復と離散したパレスチナ難民の帰還運動を行っていた。しかし期待していた近隣アラブ諸国の為政者たちの支援は口先ばかりであり、1967年の第三次中東戦争(別名6日間戦争)で為政者たちの鼻っ柱は見事にへし折られた。PLOの領土奪回の夢はさらに遠のき、それどころか百万人の新たなパレスチナ難民がヨルダンに流れ込んだのである。パレスチナ人たちはアラブの同胞に失望し、PLOは過激なゲリラ闘争組織に変身していく。
PLOを構成する数多の組織の中で頭角を現したのがファタハであった。ファタハは反イスラエルのゲリラ組織を結成、イスラエルとヨルダンの国境でイスラエル軍を撃退するなど戦果をあげた。1969年2月、PLO第2代議長にファタハのアラファトが就任した。エジプトのナセル大統領は彼に「パレスチナの指導者」というお墨付きを与え、これによりPLOは実質的なパレスチナ亡命政府となった。
PLOの中にはファタハの穏健路線に満足しないパレスチナ解放人民戦線(PFLP)などの急進派もいた。PFLPはマルクス・レーニン主義を掲げ「テロに訴えてでもパレスチナに世界の耳目を集める」ことを目指しヨルダン国内からイスラエルに出撃した。当初はヨルダン政府自身も攻撃部隊を送り込んだが、その都度イスラエルの手痛い反撃を受けた。イスラエルに対する戦闘に勝ち目がないことを悟ったフセイン国王は米国に仲介を依頼、イスラエルとの和平と言う現実外交に舵を切り替えようとした。PLOはこれを裏切り行為ととらえ、ハシミテ王家を転覆しヨルダンに共和国を建設することを目論んだ。PLOはヨルダン国内では王家転覆、国外ではイスラエル打倒を目指し内外のテロ活動を活発化させた。
このころからすでにPLOとその傘下のPFLPによる過激なテロ活動はヨルダンの一般国民のみならずパレスチナ人の間にも拒否反応が生まれていた。そして1970年9月にPFLPが5機の民間旅客機を同時ハイジャックする事件を起こすに及んで、堪忍袋の緒が切れたヨルダン国王フセインは遂にPLO排除に乗り出し、ここに「黒い9月」と呼ばれるヨルダン内戦が発生する。大衆の支持を失ったPLOは内戦に敗れ本拠をベイルートに移すこととなる。
PLOはベイルートに移転した後もイスラエルに対するゲリラ攻撃をやめなかったが、イスラエルからはそれを上回る反撃を受けたためパレスチナ難民があふれ、レバノン南部に大きなパレスチナ難民キャンプが生まれることになる。焦ったパレスチナ過激派は自分たちの運動に同調する海外の過激派組織を呼び込み、自らは海外のユダヤ人を、そして思想に共鳴する外国組織をイスラエル国内に送り込むテロ活動を展開した。
その結果1972年に二つの大きな事件が発生する。5月にテルアビブ空港で日本赤軍が自動小銃を乱射して26人を殺戮した。テロリストが無差別に一般市民を襲撃したこと、および犯人の一人が手りゅう弾で自爆したことはそれまでのイスラム・テロでは考えられなかったことである。イスラームに限らずキリスト教、ユダヤ教などの一神教は自殺を認めていない。人間の命は神(またはアラー)の手にゆだねられており、自分勝手に死ぬことは許されないからである。ところが東洋から来た日本人は自らが信じる高邁な理想に殉じることを潔しとしている。自爆した犯人の頭の中には2年前の三島由紀夫自刃事件のことがあったのかもしれない。数十年後に多発する自爆テロの先駆けとも言える衝撃的な事件であった。
さらに8月にはオリンピック開催中のミュンヘンの選手村でイスラエル人選手9名が殺害された。襲撃グループは「黒い9月」と呼ばれるパレスチナ過激派組織であった。しかしこれによってPLOはイスラエルに追い詰められ、複雑な国内事情を抱え内戦状態にあったレバノンの国内事情も重なり、PLOは1982年、ベイルートからチュニジアに落ち延びることになる。
落ち延びたのはPLOという組織だけではない。ヨルダンに避難したパレスチナ人の個人々々も同様である。しかし避難先のヨルダンは貧しく、とても安住の地と言える場所ではなかった。ある者は豊かな生活を求めて更なる移住を目指す。そのころ丁度クウェイトやイラクで石油開発ブームが始まろうとしていた。彼らは出稼ぎ者として産油国に押しかけた。こうしてパレスチナ人の選択肢は二つに分かれた。PLOと行動を共にしてゲリラ戦闘員になるか、さもなくば家族を連れて異国を渡り歩くか、のいずれかであった。
第一次中東戦争(イスラエル独立戦争)でヨルダン川西岸のトゥルカルムからヨルダンに難を逃れた教師のシャティーラ一家と医師のアル・ヤーシン一家は今度も行動を共にして第二次中東戦争(スエズ戦争)が勃発した1956年、クウェイトに移った。豊かな石油収入で国造りを目指すクウェイトは教育と医療に力を入れ高給を餌に多数のアラブ人を招き寄せたからである。
パレスチナ人は二千年の昔のユダヤの民のごとくディアスポラ(離散)の民となった。
(続く)
(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0492SovereignRating2020Jan.pdf
3.2017年1月以降の格付け推移
ここでは2017年1月以降現在までの欧米・アジア主要国及びGCC6か国のソブリン格付けの推移を検証する。
(1) 欧米・アジア主要国の格付け推移
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-01.pdf参照)
2017年1月以降のドイツ、米国、英国、中国、日本、インド、ロシア、ブラジル、ギリシャ9か国の格付けの推移は以下の通りである。
ドイツは過去3年間常に最高のトリプルAの格付けを維持している。米国はドイツより1ランク低いAA+を、また英国はさらに1ランク低い格付けAAを過去3年間続けている。中国及び日本はドイツ、米国、英国に比べさらに低い格付けである。中国は2017年上期まではAA-であったが、2017年下期に下方修正され現在は日本と同じA+である。
新興経済国BRICsを構成しているブラジル、ロシア、インド及び中国のうち、2017年1月現在は、中国がAA-と最も高く、日本(A+)より上位であった。インドは投資適格では最も低いBBB-であり、ロシアとブラジルは投資不適格のBB+及びBBであった。その後、ブラジルの経済が悪化、2018年上半期にはBB-に格下げされた一方、ロシアは同期間中にインドと同じ投資適格最低ランクのBBB-に格上げされた。インドは過去3年間BBB-で格付け変動は無かった。
欧州金融危機の引き金となったギリシャの2017年1月時点の格付けはB-であった。S&Pの定義では格付けBは「現時点では債務を履行する能力を有しているが、「BB」に格付けされた発行体よりも脆弱である。事業環境、財務状況、または経済状況が悪化した場合には債務を履行する能力や意思が損なわれ易い」とある。このようにギリシャは危機的状況にあったが、その後EU、IMF等の勧告に沿って経済改革を進めた結果、2018年上半期に格付けはB+にアップし、さらに昨年下期にはBB-に格上げされ急速に改善している。
(トップを続けるアブダビとクウェイト、見劣りするオマーンとバハレーン!)
(2)GCC6カ国の格付け推移
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-02.pdf参照)
GCC6か国(UAE、クウェイト、カタール、サウジアラビア、オマーン及びバハレーン)の過去3カ年のソブリン格付けの推移を見ると、まず2017年1月時点ではUAE、クウェイト及びカタールの3か国の格付けが最も高くAAであった。サウジアラビアはこれら3カ国より4ランク低いA-であり、オマーンは投資適格で最も低いBBB-であった。有力な産油(ガス)国が多いGCCの中で石油生産量がわずかなバハレーンのソブリン格付けは非投資適格のBB-にとどまっていた。
経済力の弱いオマーンとバハレーンはその後下落傾向が止まらず、オマーンは2017年上半期から翌年上半期の間に投資不適格のBBまで転落した。またバハレーンも2017年下半期にBB-からB+に格下げされている。カタールは、2016年にイスラム過激派支援を理由にサウジアラビアおよびUAEから国交を断絶され、S&Pは2017年上半期に格付けをAA-に格下げして現在に至っている。
UAE(アブダビ)とクウェイトは過去3年を通じてAA格付けを維持し、またサウジアラビアも両国とは4ランクの格差はあるものの現在までA-格付けを維持している。
このようにGCC6カ国の中ではUAE及びクウェイトが安定して高い格付けを維持し、カタールがこれら2カ国に一歩遅れ、少し離れてサウジアラビアがやや低い投資適格の格付けにとどまっている状況である。これら4カ国に対してオマーンとバハレーンは投資不適格のランクに落ちた後もそのまま回復の兆しが見えず他の4カ国との格差は広がったままである。
以上
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(石油関連ニュース)
(中東関連ニュース)
・安倍首相のサウジ訪問で協力関係が発展:JETROリヤド事務所長インタビュー。
・オマーン:カブース国王死去、89歳。後継国王に従兄弟のハイサム殿下。 *
*「GCCの王家・首長家:オマーン・サイード家」(2009年11月)及び
「ブ・サイード家系図」参照。