石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

日本は世界121位、前回よりさらにダウン-世界と中東主要国の「男女格差指数」(4)

2020-01-19 | その他

(注)本レポートはマイライブラリーで一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0493WorldRank5.pdf

 

(世界ランクシリーズ その5 2020年版)

4.日米中他3グループのの要素別比較(レーダーチャート)
(図http://rank.maeda1.jp/5-G02.pdf 参照)
 日本・中国・韓国の3カ国、中東の三大国(エジプト、サウジアラビア、イラン)及び、UAE・インド・トルコの3グループ9カ国を取り上げ、総合順位と4つの分野別順位(経済、教育、健康及び政治)をレーダーチャートで表してみる。レーダーチャートは最も外側が世界1位(つまり男女格差が世界で最も小さい)であり、以下中心に向かうほど順位が低くなる(即ち男女格差が大きい)。グラフの実線が外側に広がるほど男女格差が少ないことを示し、また真円に近いほど男女格差のバランスが取れていることを示している。

(1) チャート1(中国、韓国、日本)
 中国、韓国及び日本の総合順位は106位、108位、121位といずれも100位以下で、日本が最も低い。教育分野の男女格差は日本が91位、中国及び韓国が100位であり、3カ国に大きな格差はない。経済分野では中国が91位、日本115位、韓国127位で韓国の男女格差が最も大きい。

 健康分野及び政治分野では3か国に大きな男女の格差があり、健康については韓国が世界1位に対し日本は40位とすこし格差があるが、中国は世界最下位の153位であり、韓国あるいは日本と大きな格差がある。一方政治分野の男女格差では韓国(79位)と中国(94位)に対して日本は世界144位と非常に悪い。

(2) チャート2(エジプト、サウジアラビア、イラン)
  エジプト、サウジアラビア及びイランは総合順位が世界134位、146位、148位といずれも男女格差が非常に大きい。4分野のうち経済分野の男女格差は3か国とも140位台でほぼ同じである。また教育分野はサウジアラビアが世界91位、エジプト100位、イラン117位であり、スコアで見てもサウジアラビアの0.983からイランの0.953まで大きな格差はない。しかし健康の男女格差はエジプトが世界78位であるのに対し、イラン及びサウジアラビアはそれぞれ129位と137位でありエジプトと格差がある。また政治分野の男女格差も同様の傾向にあり、エジプトが世界103位であるのに対し、サウジアラビアは136位、イラン145位と日本(144位)と同じ世界の最低レベルにとどまっている。

(3)チャート3(UAE、インド、トルコ)
 UAE、インド及びトルコは総合順位が世界120位、129位、130位とほぼ並んでいるが、分野別に見ると経済の男女格差以外は各国間の格差が大きい。経済の男女格差はインドが世界133位、トルコ136位、UAEが137位であり、いずれも低いランクにとどまっている。

 教育分野の男女格差はUAE及びインドが世界89位、93位であるが、トルコは113位と他の2カ国に比べ見劣りする。健康分野はトルコが63位で世界の上位グループに入っているが、UAEは91位、インドは105位である。また政治参画の男女格差はUAEが世界74位であるが、トルコ(109位)、インド(119位)はいずれも世界100位以下である。

(続く)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp 

 

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見果てぬ平和 - 中東の戦後70年(23)

2020-01-19 | その他

(英語版)
(アラビア語版)

第3章 アラーの恵みー石油ブームの到来

荒葉 一也
E-mail: areha_kazuya@jcom.home.ne.jp

1.中東の石油産業の曙
 アラブ産油国の人たちはよく「石油は我々の神アラーの恵みである」と言う。それは豊かな富をもたらす石油を与えてくれたアラーに対する純粋な感謝の気持ちであり、同時に石油を持たない他の民族(たとえば日本のような)に対する少しばかりの優越感が発する言葉でもある。実際、世界の産油国の多くはイスラームの国である。イラン、イラク、サウジアラビアは言うまでもない。アルジェリア、リビアなどの北アフリカの産油国もアラブ民族であるとともにイスラームが国教である。サハラ砂漠を越えたナイジェリアもイスラーム教徒が多数を占めている。さらに東南アジアの産油国インドネシアもイスラームの国である。世界の原油生産量の半分近くはイスラームの国々が占め、埋蔵量ベースで見ればその割合はもっと高くなる。彼らが「石油はアラーの恵み」であるというのもあながち的外れではないように思われる。

 ただ石油とイスラームの関係は単なる偶然にすぎない。何しろ地中に石油が生まれたのは数億年前のことであり、それに比べると人類が誕生したのはごくごく最近のことになる。だから石油とイスラームを結びつけるのはかなり無理がある。もちろん信仰心の篤いイスラームの人々(ムスリム)からすればすべてこの世はアラーの御業と言いうことになるのであろうから、アラーがムスリムたちのために太古の昔に石油を地下に作りおいてくださった、と言うことになるのであろうか。科学的無神論(智)と信仰(心)の論争は常に水掛け論である。

19世紀末、それまでの石炭炊きの蒸気機関に対しドイツで石油を燃料としたガソリンおよびディーゼル内燃機関が発明された。これは輸送分野に革命をもたらし、軍事面では戦車や軍艦の推進機関として急速に普及した。その結果石油の需要が急激に膨らみ世界各地で石油開発が盛んになった。中東では1908年にペルシャ(イラン)で油田が発見され、そしてイラク(1928年)、クウェイト(1938年)さらにサウジアラビア(1940年)と地図上を南下しながら次々と油田が発見された。イランからイラク、クウェイト、さらにサウジアラビア、アブダビへと続く石油の埋蔵地帯は「オイル・ベルト」と呼ばれる。

 このオイル・ベルトの開発を手掛けたのは欧米の石油企業であった。中でも「セブン・シスターズ(7姉妹)」と呼ばれる米英の7企業が大きな存在感を示した。スタンダード・オイル・ニュージャージー(エッソ)、スタンダード・オイル・ニューヨーク(モービル)、スタンダード・オイル・カリフォルニア(ソーカル)、ガルフオイル、テキサコの米国系5社と英国のアングロペルシャン及び英蘭系のシェルオイルの7社である。スタンダードの名前を冠する3社はロックフェラーが創業したスタンダード・オイルが反トラスト法で分割されて生まれた会社であり、エッソとモービルはその後合併してエクソン・モービル(ExxonMobil)となり、ソーカルはガルフオイル及びテキサコの2社を吸収合併して現在はシェブロン(Chevron)となっている。

 中東の石油開発で先行したのはアングロペルシャン石油(現BP)である。英国の国策会社として発足したBPは第一次大戦下にチャーチル海軍大臣(その後首相)が艦艇の燃料確保のため石油開発を積極的に後押ししたこともあり、英国の強い影響下にあったイランに足掛かりを築き、さらにイラクのキルクーク油田、クウェイトのブルガン油田等の開発権も手に入れた。

 出遅れた米国はサウジアラビアに接近して開発権を獲得、同国東部の陸上で世界最大のガワール陸上油田を発見、さらに海上ではサファニア油田を発見した。エッソ、モービル、ソーカル及びテキサコの米系4社はアラビアン・アメリカン・オイル・カンパニー(略称アラムコ)を設立して、サウジアラビアにおける石油開発を独占する。セブン・シスターズは中東のオイル・ベルトに盤石の基盤を築き世界の石油を支配したのである。

 このセブン・シスターズに反旗を翻した者がいた。イランのモサデグである。共産主義政党ツデー党の流れを汲み1951年に首相に就任したモサデグはアングロペルシャン石油が所有する石油利権を国有化した。これに対してセブン・シスターズは結束してイラン産原油を国際市場から締め出し、社会主義政権の登場を苦々しく思う米国政府もひそかにセブン・シスターズに肩入れした。モサデグは失脚、シャー(パハレビー皇帝)が復権し、以後イランと米国の蜜月関係が始まる。

産油国がセブン・シスターズに戦いを挑むのは9年後の1960年にOPEC(石油輸出国機構)を結成して以後のことであり、またイランが米国と袂を分かつのは29年後のホメイニによるイラン革命からである。

(続く)

 

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