石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

日本は世界121位、前回よりさらにダウン-世界と中東主要国の「男女格差指数」(3)

2020-01-17 | 今日のニュース

(世界ランクシリーズ その5 2020年版)

(格差が大きい政治分野、小さい教育分野!)
3.分野別のランクとスコア
(表http://rank.maeda1.jp/5-T02.pdf 参照)
 男女格差指数は(1)経済参画分野、(2)教育分野、(3)健康・寿命分野及び(4)政治参画分野の4つの分野について公表されたデータに基づいて詳細な比較検討が行われている(本稿第1章参照)。本章では第2章で取り上げた国々、すなわち世界の上位5か国及び日本を含む主要各国並びに中東主要国について4分野のスコアと世界ランクを概観する。

(1) 経済参画分野の男女格差
 総合世界1位のアイスランドはこの分野でも世界2位(スコア0.839)と高い地位を占めている。またノルウェー、フィンランド、スウェーデンの北欧3か国もスコアは0.790前後で世界10位台にランクされている。

 米国は26位、英国は58位であるが、日中韓印のアジア4か国は、中国の91位が最も高く、日本は115位、韓国127位、インド149位である。後述するように4分野におけるスコアの格差は政治分野が最も大きく、次いで経済分野となっており、教育分野或いは健康・寿命分野の国別格差は小さい。

(2)教育分野の男女格差
 WEFが各国の統計値をもとに判断した教育分野の男女格差は極めて小さい。即ちノルウェー、フィンランド、米国のスコアは1.000であり男女格差が無いとされる。格差指数は1.000が上限であり、国によっては1を超える(即ち男女の逆格差)ケースもあり、格差指数1.000は153か国中35か国に達する。

 日本のスコアは0.983とされておりトップとの格差は0.017にとどまるが世界ランクは91位である。同様に中国と韓国はスコア0.973で共に世界100位である。中東諸国ではイスラエルがスコア1.000で世界1位グループに入っている。その他UAEは世界89位(スコア0.987)、サウジアラビア91位(同0.983)であり、エジプト、トルコ、イランは世界100位以下である。但し世界117位のイランのスコアは0.953でトップグループのイスラエル或いはUAEと比べスコア格差はさほど大きくない。

(3)健康・寿命分野の男女格差
 韓国及びニカラグアはスコア0.980で世界1位であるが、同スコアは39か国ある。このためスコアがわずか0.001しか違わない0.979の日本は世界順位が40位とされている。この分野の世界最下位は中国であり同国のスコアは0.926である。トップとのスコアの差は0.054で、この格差の中に153か国がひしめいており、わずかなスコアの差がランク上の大きな差となって表れている。

(4)政治参画分野の男女格差
 この分野の世界1位はアイスランドで同国のスコアは0.701である。これに続く世界2位はノルウェーであるが、同国のスコアは0.598でありアイスランドと大きな開きがある。日本はスコア0.049、世界順位144位であり、インド(世界18位)にはるかに及ばず、韓国、中国或いはUAE各国とも大きな格差があり、先進国の中では際立って低い。

この分野トップのアイスランドのスコアと日本のスコアの差は0.652と極めて大きい。因みにこの分野の最下位はパプアニューギニアの0.000(即ち男女格差は無限大)であり、4つの分野の中では国別格差が最も大きい。
 
政治の男女格差は女性国会議員数、閣僚数、或いは過去50年間の女性元首(首相等)の在任期間でランク付けされているため全体的に各国ともスコアが低く、また同じ先進国でもヨーロッパに比べ日米のランクが低い結果となっている。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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天然ガスに国際政治が絡み大荒れの東地中海 (上)

2020-01-17 | 中東諸国の動向

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0494EastMedPipeline.pdf 
 

(英語版)
(アラビア語版)

 

 東地中海の天然ガス開発と海底パイプライン敷設を巡りキプロス、トルコ及びギリシャ3国間に紛争が発生している。問題を複雑にしているのが地域最大のガス田を有するイスラエルと世界最大の天然ガス輸出国ロシアがパイプライン敷設を巡ってしのぎを削っていることである。ロシアのヨーロッパ向け天然ガスパイプラインの中継国であるトルコは北アフリカのリビアとの間で排他的経済水域(EEZ)を設定し長年の宿敵キプロスを抑え込もうとしている 。

 さらにここには天然ガスをめぐるロシアと米国のしのぎ合い(hegemony)及び中東・北アフリカの主導権(leadership)をめぐるトルコとサウジアラビア/UAEの争いが絡んでいる。西ヨーロッパのエネルギーをロシアに握られることを嫌う米国はロシアのパイプライン建設にクレームをつけている。アフリカの資源大国リビアではトルコ及びカタールが西部トリポリを拠点とする正統政府を支援し、一方サウジアラビア及びUAEは東部の反政府ハフタール軍閥を支援している。対立の根底にはサウジ/UAEがリビア正統政府をムスリム同胞団寄りだとみなしていることにある。2017年にムスリム同胞団の問題をめぐってサウジ/UAEがカタールと断交、カタールがトルコに救いを求めており、その構図がそのままリビアに反映されている。

 ただし問題は一筋縄ではない。ロシアの戦争請負企業Wagnerグループがハフタール軍閥を支援しており、リビアはロシアの有力な武器輸出市場である。ここではトルコとロシアの利害は対立している 。またヨーロッパはリビアから天然ガスを輸入しているが、同時にリビア地中海沿岸からの難民流入に悩まされている。ヨーロッパは天然ガスの輸出は歓迎だが、難民の流入は困る。「モノ」はOKだが「ヒト」は願い下げということである。リビアの安定のためトリポリ正統政府と良好な関係を維持したいのである。

リビアの隣国エジプトはどうかと言えば、サウジ/UAEの同胞団排除政策に同調してカタール断交に加わり、リビアではハフタール軍閥支持を表明している。しかし同国は経済再建が最優先であり、隣国イスラエルからの天然ガス輸入を開始した 。経済再建に失敗すれば「アラブの春」の悪夢が再来する。シーシ軍事政権は当面国内の民主勢力或いは隣国イスラエル及びリビアを刺激しないよう息をひそめている。

 東地中海は荒れ模様である。ここでは問題をガスパイプライン敷設に絞って地域の動きを眺めてみよう。

発端はイスラエルの巨大ガス田発見

 問題の発端は2010年から2013年にかけてイスラエル領海の東地中海に巨大ガス田TamarとLeviathanが相次いで発見されたことである。Tamarガス田は2013年に、Leviathanガス田は昨年12月に生産が始まった。特にLeviathanの埋蔵量は国内消費量の40年分と言われ、いまやイスラエルはガス埋蔵量4千億立方メートル(石油換算26億バレル )のエネルギー大国に変身した。同国は天然ガスの輸出に着手、すでにエジプトへの輸出を始めており 、まもなくヨルダンにも輸出しようとしている 。さらにイスラエルはギリシャ及びキプロスと海底パイプラインEast Med Pipeline敷設に合意、西ヨーロッパへのガス輸出も視野に入ってきた 。

(続く)


本件に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
荒葉一也
Arehakazuya1@gmail.com 

 

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