石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2013年版解説シリーズ:天然ガス篇1 埋蔵量(1)

2013-07-15 | その他

(注)本シリーズ「BPレポート天然ガス篇」は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0275BpGas2013.pdf

 

BPが毎年恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2013」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量、貿易量のデータを抜粋して解説したものである。

(世界の天然ガスの4分の3は中東と欧州・ユーラシアに。世界の可採年数は56年!)
1.世界の天然ガスの埋蔵量と可採年数
(1)2012年末の確認埋蔵量
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-1-G01.pdf参照)
 2012年末の世界の天然ガスの確認可採埋蔵量(以下単に「埋蔵量」と言う)は187兆立方メートル(以下tcm: trillion cubic meter)であり、可採年数(R/P)は56年である。

 埋蔵量を地域別に見ると中東が43%、欧州・ユーラシアが31%であり、この2地域だけで世界の埋蔵量の4分の3を占めている。これら2地域に次ぐのはアジア・大洋州とアフリカがそれぞれ8%、北米6%、中南米4%でこれらすべて合わせても全体の26%にとどまる。このように世界の天然ガスの埋蔵量は一部地域に偏在していると言える。

 埋蔵量を生産量(次章参照)で割った数値が可採年数(R/P)であるが、2012年の天然ガスのR/Pは56年である。これを地域別で見ると中東地域の100年以上に対して北米はわずか12年にすぎない。アフリカ地域のR/Pは67年で全世界の平均を上回っており、その他欧州・ユーラシアは世界平均と同じ56年である。中南米は43年、アジア・大洋州は32年で世界平均を下回っている。

 なお今回のBP統計は昨年発表の歴年埋蔵量が大幅に下方修正されているのが特徴である。例えば今回の統計では2011年末の埋蔵量は188tcmであるが、昨年の統計による2011年末の埋蔵量は208tcmとされており、今回は1割程度下方修正されている。そして2011年以前の埋蔵量も1980年に遡って修正されている。特に大幅に見直されたのは1990年前後と2009年から2011年の二回であり、国別に見るとロシア及びトルクメニスタンの埋蔵量値が大きく下方修正されている。

 見直しの理由は不明であるが、1990年は旧ソ連が崩壊した年であり、また2010年前後はトルクメニスタンの天然ガス生産が大きく変動している(後述の天然ガス生産の項参照)。近年両国の天然ガス合弁事業にBPを含めた欧米企業が関与するようになったことが埋蔵量値の修正につながったと推測される。

(続く)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

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