(注)本シリーズ「BPレポート天然ガス篇」は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0275BpGas2013.pdf
(40年間で生産量が30倍になったアジア・大洋州!)
(3)地域別生産量の推移(1970~2012年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-2-G02.pdf参照)
1970年に1兆㎥を超えた天然ガスの生産量はその後一貫して上昇を続け、1994年に2兆㎥、そして2008年には3兆㎥を突破し、2012年の生産量は3.4兆㎥弱を記録した。1兆㎥から2兆㎥になるまでは24年かかったが、次の3兆㎥に達するには14年しかかかっていない。このように天然ガスの生産は近年飛躍的に増加しているのである。石油の場合、第二次オイルショック後しばらく需要が前年を下回りオイルショック前の水準に戻るまで10年以上の歳月を要していることと比べ(前章石油篇「生産量推移」参照)天然ガスの生産拡大には目を見張るものがある。
地域毎の生産量の推移にはいくつかの大きな特徴が見られる。1970年の世界の天然ガス生産は北米と欧州・ユーラシアの二つの地域で全世界の94%を占めており、残る6%をアジア・大洋州、中東、中南米及びアフリカで分け合っていた。しかし北米は1970年に6,630億㎥であった生産量がその後は微増にとどまり、世界に占めるシェアも66%(1970年)から27%(2012年)に低下している。欧州・ユーラシア地域の生産量は1970年の2,819億㎥から急速に伸び、1982年に北米を追い抜き、1980年代後半には全世界の生産量の半分を占めるまでになった。しかし同地域の生産量も90年代以降伸び悩んでおり、2012年の世界シェアは31%にとどまっている。現在も北米と欧州・ユーラシアの二地域が世界の天然ガスの主要生産地であることに変わりは無いが、その合計シェアは58%であり、1970年の94%から大きく後退している。
この二地域に代わりシェアを伸ばしているのがアジア・大洋州と中東である。アジア・大洋州の場合、1970年の生産量は157億㎥でシェアもわずか2%しかなかったが、2012年の生産量は30倍の4,902㎥に増加、シェアも15%に上昇している。また中東も生産量は1970年の199億㎥から2012年には28倍の5,484億㎥、シェアは16%に上がっている。アジア・大洋州或いは中東の生産量は1990年以降急速に増大しているが、特にここ数年加速された感がある。その理由としては生活水準の向上により地域内で発電用或いは家庭用燃料の需要が増加したことに加え、これまで先進外国市場から遠いため困難であった輸出が、液化天然ガス(LNG)として市場を獲得しつつあることをあげることができる。
世界的にみると天然ガスの年間増加率は3~4%前後と石油生産の伸び率を上回っており、石油から天然ガスへのシフトが進んでいる。天然ガスは石油よりもCO2の排出量が少なく地球温暖化対策に適うものと言えよう。この点では今後クリーンエネルギーである原子力或いは再生エネルギーとの競合が厳しくなると考えられる。但し原子力は福島原発事故問題を抱え、再生エネルギーもコストと安定供給が弱点である。その意味で天然ガスは今後世界のエネルギー市場でますます重要な地位を占めるものと考えられる。
(続く)
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