(注)本シリーズ「BPレポート天然ガス篇」は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0275BpGas2013.pdf
(シェールガス革命で生産量が急増する米国!)
(4)主な国の生産量の推移(2003~2012年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-2-G03.pdf参照)
昨年の天然ガス生産量が世界1,2位のロシア、米国、同4位、5位のカタール、カナダに加え、オーストラリア(世界18位)及び英国(同23位)の6か国について過去10年間(2003~2012年)の生産量の推移を追ってみる。
ロシアの2003年の生産量は5,615億㎥でありその後徐々に6千億㎥台にまで増加した。2009年に一時急減したものの6千億㎥台を前後の生産量で停滞している。これは同国の輸出先である西ヨーロッパ諸国の景気が2008年のリーマンショック後現在も冷え込んでいることが最大の要因である。ロシアの天然ガスはパイプラインで西ヨーロッパに送られており、備蓄が効かないパイプライン輸送は末端の需要に左右されやすいと言える。現在、ロシアは国内ガス田の開発に積極的に取り組んでおり、極東アジアへの輸出に力を入れている。
米国の場合、天然ガス生産量は2003年の5,408億㎥から2005年には5,111億㎥に減少を続け1位のロシアとの差が拡大する傾向であった。しかし2006年以降は増勢に転じ2009年にはロシアを追い抜いて世界一の生産国になっている。2010年には6千億㎥を突破、2012年の生産量は前年比5%増の6,814億㎥を記録、2003年に比較すると3割近く増加しており、同じ期間のロシアの増加が5%に過ぎなかったことと顕著な差がある。米国の生産量が急速に増加したのはシェールガスの生産が商業ベースに乗ったことが大きな理由である。天然ガスの生産において米国とロシアは圧倒的な存在感を持っており今後もこの2カ国が世界の天然ガス生産をリードしていくことは間違いない。
カナダはかつて米国、ロシアに次ぐ世界第3位のガス生産国であったが、2006年以降、生産量の減少に歯止めがかからず2012年の生産量は1,565億㎥となりイラン、カタールに次ぐ世界5位に転落している。同国の生産量の減少は同時期の米国の生産量増加と軌を一にしたものである。即ち同国は生産したガスの多くをパイプライン網により米国に輸出してきたが、上記のとおり米国では天然ガスの生産が急増し自給率が向上した結果カナダからの輸入が減少しているのである。但しカナダは豊富な埋蔵量を有しており十分な生産余力があると考えられる。従って今後はLNGとして日本など極東向けの輸出に力を注ぐことになろう。
カナダと同様生産量が長期下落傾向にあるのが英国である。同国の2003年の生産量は1,029億㎥であったが、2012年には半分以下の410億㎥に落ち込んでいる。同国の場合は北海油田が枯渇しつつあり、原油と共に産出される随伴ガスの生産量も減少しているためであり、現在ではカタールからLNGを輸入している。
これに対して最近天然ガスの生産が増加しているのがカタールとオーストラリアである。カタールの2003年の生産量は314億㎥に過ぎなかったが、2012年には1,570億㎥に達しわずかではあるがカナダを追い抜いている。カタールの場合殆どをLNGとして輸出している。LNG輸出には大規模な液化及び出荷設備が必要であるが、同国は積極的な設備投資を展開、年間77百万トンの輸出体制を整えており、これが生産急増の要因である。
オーストラリアはカタールの後を追うように近年ガス田開発と液化設備の建設を行っている。2003年の生産量はカタールとほぼ同じ332億㎥であったが、2009年には423億㎥まで拡大し、さらに2012年の生産量は500億㎥に近づいている。日本などとの長期契約によりLNGの販売体制を確立、LNGの生産出荷施設も相次いで建設されており今後生産量は順調に増加するものと考えられる。
(天然ガス篇生産量 完)
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