Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

シネマしりとり「薀蓄篇」(285)

2019-03-26 00:10:00 | コラム
めんる「い」→「い」ーてぃー(E.T.)

いわゆる「通称」をタイトルにした映画をふたつ撮っている、スティーブン・スピルバーグ。

2001年の『A.I.』は、「Artificial Intelligence」の略。

そして82年の『E.T.』は「Extra-Terrestrial」の略。

「unidentified flying object」を略した「UFO」みたいなものだね。


『E.T.』はスピルバーグの映画のなかで最もポピュラーで愛されている作品・・・であることを認めたうえでいうと、個人的にはそれほど好きではない。

もちろん嫌いではないし駄作とも思ってないけれど、イビツな『A.I.』のほうが好きだし、

3傑を挙げるとするならば・・・

『激突!』(71)
『ジョーズ』(75)
『宇宙戦争』(2001)

・・・となり、『E.T.』は8番目くらいになってしまうかな。


まぁでも、人気があるのは分かる。

米国の厳しいレーティングは置いておいて、家族全員で楽しめる娯楽作であり、やさしい気持ちにもなれるし。

そういえばウチの父親も、好きな映画の上位にこの作品を挙げていたっけ。


ただ、制作そのものは「けっこうな賭け」だったのではないかと思う。

だってE.T.のクリーチャーデザインは、けっして「かわいい・うつくしい」ものではなかったのだから。

よく見ると、いやよく見なくても気持ち悪い。

このアルバムジャケット(=ロジャー・テイラーの『ファン・イン・スペース』)



を参考にしたという説があって、たしかになんとなく似ているかも。

(そして。じつはデジタル処理により、DVD発売の際に手を加えて「ちょっとだけ」かわいらしくしている。後年、スピルバーグはそのことを後悔し、現在のバージョンでは以前の「気持ち悪い感じ」に戻している・・・はず)

公開当時は「キモかわいい」という感覚もないしね、よくこれだけの支持を獲得出来たと思う。


イマサラ感があるので、ここで詳細なあらすじは記さない。
ヒトコトでいえば異星人とヒトとの交流を、SFXを駆使して描いた作品であると。

スピルバーグが面白いのは、「ヒトではないもの」を「友好的に描いた作品/好戦的に描いた作品」の両方を撮っているところ。

ただし基本はサディズムの人間嫌い―という捉えかたはおそらく当たっていて、サメや恐竜が容赦なくヒトを襲う描写でこそ本領を発揮する。
(『A.I.』のエンディングにいたっては「ヒトをひとりも登場させず」に感動させようとするほど倒錯的なのだった!!)

たぶん自分は、「そっち側の」スピルバーグが好きだから『E.T.』を「それほど…」と思ってしまうのだろう。


脚本を担当したのは、ハリソン・フォードの元夫人メリッサ・マシスン。

世界中で大ヒットを記録したこのSF映画は、翌年の『キネマ旬報』で批評家・読者双方から1位に選出され、米オスカーの作品賞にもノミネートされた。
しかし。
その前哨戦となるゴールデングローブ賞で作品賞に輝いたにもかかわらず、実際のオスカーでは作曲賞や視覚効果賞などの技術部門の受賞に留まった。

『シンドラーのリスト』(93)でオスカーが微笑むまで、同業者から嫌われていた・妬まれていたとされるのは、このあたりからきているのだった・・・。





あすのしりとりは・・・
いー「てぃー」→「てぃー」ちゃー。

…………………………………………

明日のコラムは・・・

『シネマしりとり「薀蓄篇」(286)』
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

そういや凶作の年を知らない

2019-03-25 00:10:00 | コラム
19年度も3ヶ月が過ぎる。

きょうは、この約90日間のあいだに「お! これは…」と思った劇場公開映画を5本選出してみよう。


本コラムのタイトルのとおり、自分が映画好きを自称して以降、なんだかんだいって毎年豊作だと思う。

凶作だった年を、自分は知らない。

いちどでも凶作の年があったとするならば、ひょっとしたら自分は、これほどまでに映画にぞっこん、、、ではなかったかもしれない。


すべての映画関係者に敬意を表さねばならぬよね。

ありがとう!!


※順不同


『チワワちゃん』

岡崎京子の漫画作品を映画化したもののなかでは、現時点で最もよく出来たと評価出来る青春映画。

ひいきの門脇麦ちゃんが主演しているものの、最も褒めるべきは監督のたしかな演出力だと思う。




『翔んで埼玉』

これまた漫画原作。

その世界観を徹底すれば、日本だって良質なコメディを創ることが出来る、、、ということを力強く証明してくれた快作。




『グリーンブック』

本年度オスカー作品賞受賞作。

受賞に関して米国では賛否が渦巻いたようだが、日本人からすると、ロードムービーの根幹をなす「土地の広さ」があることがハリウッド映画の強みであり、もうその時点で(このジャンルに関しては)無条件降伏するしかないと思っている。


『ブラック・クランズマン』…トップ画像

史実なんか知ったことではない、俺はスパイク・リーだぜぇ!!

悪名高きKKK団に潜入した黒人刑事の活躍を、パワフルにユーモラスに描いてみせたリーの会心作。


『ROMA/ローマ』

同業者に愛されまくっているアルフォンソ・キュアロンが、自身の幼少期を回想したネット発の「純然たる映画」。



…………………………………………

明日のコラムは・・・

『シネマしりとり「薀蓄篇」(285)』
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Network

2019-03-24 00:10:00 | コラム
「テレビ観ないんだよね」とか「テレビ観ないから分からない(知らない)」というひとに、ときどき出会う。

ほんとうだべか? と、ちょっとだけ思う。

そりゃ自分だって、連続のテレビドラマは滅多に観ない。

ただそれは何遍もいっているように「映画を追うのに精一杯だから」という意味であって、テレビを下に見ているとかそういうのはない。


敢えて上だとか下だとか書いたのは、「観ないんだよね」と発するひとの一部が、テレビを(なにかと比べて)下に捉えているように感じたから。


帰宅してから、ふだんやることを順番に書き出してみる。

手を洗う。

「とりあえず」テレビをつける。

「とりあえず」パソコンを起動させる。

風呂を沸かしながら、洗濯物を取り込む。
(このとき、テレビのニュースかネットのYoutubeを流す)

新聞を読む。

コーヒー飲みながらメールのチェック。

風呂に入る。

酒呑みながら、録画していたテレビ番組を観る。


こんな感じか。

この「とりあえず」テレビをつけるというひと、多いと思うのだけれども。。。


地震などの災害が起こった際は、とりあえずNHKにあわせない?

スポーツの大きな試合がおこなわれる日って、やっぱりテレビつけない?

『天空の城ラピュタ』(86)がテレビ放映される日、Twitter上に「バルス」の文字が溢れまくるっていうよね?
つまりネットのヘビーユーザーでさえ、テレビを無視出来ないってことでしょう。


だから「テレビなんか観ないし…」と、なぜか優位に立つかのように発するひとの気持ちが、ぜんぜん分からないのだった。


そして。
映画表現だって、テレビというメディアを無視するわけにはいかない。

以下、映画のなかで描かれる「テレビの世界あるいはテレビを通した映像」。


『アンストッパブル』(2010)

旦那の頑張りをテレビで目撃した妻は、関係を修復することに決める。

ちょっと単純だが、死を賭して戦う姿を見ればね、誰だってこころを動かされるでしょうよ。




『アルマゲドン』(98)

流れは『アンストッパブル』と同じだが、その流れを作ったのは本作だったのかもしれない。




『模倣犯』(2002)

天才モリタがメディア論を展開した失敗作・・・だと思っていたのだが、早過ぎる野心作だったのかもしれない。

いまいちど、観返す必要があると(最近になって)思うようになった。


『アイアムアヒーロー』(2015)

「異変」を最初に伝えるのは、やはりテレビなのだった。


『ダイハード』(88)

コイツの報道によって、犯人ハンスにマクレーンとホリーの関係性を知られてしまう。




『身代金』(96)

身代金を要求するほうもされるほうも、テレビやネットを駆使する。

個人的にこの映画を観て、時代は変わりつつあるんだな・・・と実感した。


『トゥルーマン・ショー』(98)

メディアの持つ暴力性をシニカルな視点で捉え、高度な文明批評を展開した快作。




そしてやっぱり、
『ネットワーク』(76…トップ画像)を外すわけにはいかないでしょう。

40年前に発表されたこの映画は、未だ多くの映画人にとって最良のテキストとなっている。

テレビの可能性と危険性の両方を「ほぼ完璧」に描いてしまっている、じつにおそろしい作品だから。

…………………………………………

明日のコラムは・・・

『そういや凶作の年を知らない』
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画監督別10傑(44)黒沢清

2019-03-23 00:10:00 | コラム
~黒沢清のキャリア10傑~

明だけがクロサワじゃない、日本には世界に誇るクロサワがもうひとり居る、
なかなかにハンサムでクール、強引に例えると日本のデヴィッド・フィンチャーといったところか。

恐怖描写に冴えを見せる・・・といっても、ホラーテイストというより、もっと現実に根差した、生身の人間のおそろしさというか。

けっしてポピュラーではない、
けれども、いちど好きになったひとはとことん好きになる―そんな中毒性を宿す、なかなかに危険な監督なのだった。


(1)『CURE』(97)

『セブン』(96)公開の翌年に発表されたということもあり、和製『セブン』などとも評された、クロサワ中期の到達点。

しかし米産の犯人には(理解し難いものの)明確な動機があったが、こっちの犯人はそれさえ不明。

だから観終えたあとも、もやっとしたものが「ひたすら」残る。



(2)『カリスマ』(99)

周囲の木々を残さず枯らすといわれる奇妙な木「カリスマ」をめぐる物語。

一部では難解とされているが、いやいや、寓話としてかなり面白いと思う。



(3)『アカルイミライ』(2003)

オダギリジョーと浅野忠信が共演、「アカクラゲ」を象徴的に登場させながら奇妙な青春を紡ぐ会心作。

クロサワの映像はいつだって格好いいが、この映画はとくにキマッている。

敢えてカタカナにしたタイトルも時代にぴったりでグッド。

(4)『トウキョウソナタ』(2008)

壊れた家族が「なんとなく、再生。」するまでを静謐なタッチで描く。

夫役の香川照之が達者なのは当然、と思ったので、「くたびれた」妻を演じるキョンキョンの巧さに驚いた。



(5)『回路』(2000)

ネット社会を「あの世」に見立てた、斬新なホラー。

正直、筋はほとんど覚えていないが、麻生久美子と小雪がひたすら美しかった。



(6)『地獄の警備員』(92)

まだ無名だったころの松重豊が狂気の殺人者を嬉々として演じるスリラー。

低予算をものともしない「野心の塊」に、多くの作り手たちが勇気をもらったことだと思う。

(7)『クリーピー 偽りの隣人』(2016)

前半スリラー、後半SFの展開・・・が成功しているかどうかと問われれば、じつは返答に窮する。

ただ自分は、物語が破綻していたとしても野心のほうを買うタイプなので。

(8)『ドレミファ娘の血は騒ぐ』(85)

クロサワの秘蔵っ子・洞口依子の初主演映画。

外観? はポルノだが、様々な実験を取り入れていて映画を学ぶ学生にとっては、よいテキストになるかと。



(9)『ドッペルゲンガー』(2003)

第二の自我(=ドッペルゲンガー)に翻弄されるひとびとをユーモラスに描く。

賛否は分かれたが、常連俳優・役所広司が楽しそうに演じているのがよい。

(10)『岸辺の旅』(2015)

自称「死人」とその妻の、奇妙な旅のゆくえ。

蒼井優が抜群の存在感を見せつけ、ある意味で主人公夫婦(浅野忠信×深津絵里)を喰ってしまっている。

…………………………………………

明日のコラムは・・・

『Network』
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高ぇ!! と思うもの

2019-03-22 00:10:00 | コラム
TOHOシネマズの入場料金が値上げするってね。

一般1800円が100円上がり、1900円に。

維持費の確保と人件費の高騰・・・といわれると、返すことばはないよね。


(映画館の入場料は)高いのか安いのかと問われれば、そりゃあ元が高いからね~、やっぱり高いと思うよ、、、と答える。

理想は・・・
「入れ替え制でなく、何度も観ることが出来る」ことを大前提として、

入場料+パンフレット+コーヒーの合計が、約2000円であること。

まぁ理想でしかなく、現実的でないことは分かっている。

日本の映画館は清潔で、常に最新設備であろうと努力しているものね。

だからそういう背景を踏まえると、高くも安くもなく、妥当なのかな・・・。


これって自分が映画ファンだから、やや甘めに評価しちゃうのかもしれない。

そこで、映画以外の料金・価格について自分はどう評価しているのか、いくつかの項目で確認してみよう。


※高いと「思う」か「思わないか」で答える


(1)煙草…思わない

自分が吸っているセブンスターは、現在1箱500円。

嫌煙ムードが漂うこの世では、まだ安いほうかなと。

(2)トマト…思う

最も好きな野菜なので可能であれば毎日買いたいが、腹持ちの悪さ(?)を思えば、それから2番目に好きなキャベツと比べると、ちょいと高いのではないかなと。

(3)インクカートリッジ…思う

すげー高いと思う。

プリンターがそこそこ安くなっていることを考えると、メーカーさんは、その付属品で儲けているのかなぁ、、、と。

(4)純正ビール…思う

発泡酒・第3のビールという比較商品があるからね。

(5)牛丼…思わない

並400円世代からすると、こんなに美味いのだから、もっと高くてもよいと思う。

(6)新聞…思う

自分が奨学生だったころは、朝夕刊セットで3650円。
現在は読売が4400円、日経なんか4900円ときたもんだ。

紙が売れなくて困っているのは同情するが、ちょっとねぇ。。。

(7)ケータイ料金…思う

現代人にとって必要なツールであるからして、多少高くてもオメーら払うっしょ? という考えが透けて見える、、、感じがするのだった。


※『デモンズ』(86)…映画館を舞台としたホラー映画なので、こういうのはどんどんリバイバルしてほしい



…………………………………………

明日のコラムは・・・

『映画監督別10傑(44)黒沢清』
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする