Cape Fear、in JAPAN

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『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

映画監督別10傑(42)サム・ペキンパー

2019-03-05 00:10:00 | コラム
~サム・ペキンパーのキャリア10傑~

「聖なる酔っぱらい」あるいは「酔いどれ天使」と呼ぶべき映画監督は、フィンランドを代表するアキ・カウリスマキだろう。

カンヌ映画祭の壇上にも「ほろ酔い」で登場するヤクザだが、心根にはあったかいものが流れているっていう。

その対極をなすのが、サム・ペキンパーだったのかもしれない。

暴力描写やストップモーションに冴えをみせた技巧派だが、文字どおり酒に溺れ、荒れた状態のまま撮影現場に現れたものだから「信奉者が多いにも関わらず」スタジオからは扱いづらい男とされてしまった。

おそらく、逃した脚本も多かったことだろう。

それがまた、ペキンパーを酒やクスリに走らせる。

あぁまるで、彼の映画の主人公のようではないか!!


(1)『ガルシアの首』(74)

100万ドルの賞金がかけられた悪人「ガルシア」の首を求め、執念の追跡をつづけるピアノ弾きの物語。



(銃撃戦だけでなく)カークラッシュなどに用いられるストップモーションの効果は絶大で、ペキンパーは激しい詩人なんだなと思った。


(2)『わらの犬』(71)

窮鼠猫を嚙む、を地でいく主人公をダスティン・ホフマンが熱演。



周囲に散々バカにされ、妻まで犯された男が最後の最後に大爆発、「そっち方向」に覚醒してしまった主人公が最後に放つ会話が鮮烈。

友人「―帰り道が分からない」
主人公「ボクもだ」


(3)『ワイルドバンチ』(69)

「死のダンス」と評されたクライマックスは、正直なにが起こっているか分からないほど。

たぶんペキンパーは、そここそを目指していたのではないか。




(4)『砂漠の流れ者/ケーブル・ホーグのバラード』(70)

ペキンパー自身によると、これが自分の最良の仕事だという。

いつものペキンパー節を期待すると肩透かしを喰らうかもしれない、かなりおとなしめの西部劇。

キャリアのなかでひとつだけ「ほっこり系?」(ではないけれども)があるというのは、リンチの『ストレイト・ストーリー』(99)のようでもあり、なんだかちょっと安心さえする。


(5)『戦争のはらわた』(77)

『ワイルドバンチ』同様、ストップモーションと「瞬間的倒置?」を多用、「なにが起こっているか分からない」状況を作り出すことにより、戦場の狂気を描いている・・・のだと思う。

(6)『ゲッタウェイ』(72)

マックィーンの荒々しさを全面に押し出した快作。

悪党が逃げ切ってしまうというのも、当時は新鮮で痛快だったという。




(7)『コンボイ』(78)

スケールの大きくなった『トラック野郎』といえば、当たらずといえども遠からず。

制作時期にそれほどのズレはなく、ともにヒットしたというのが興味深い。

なぜなら題材的に、現代ではそれほどヒットしそうにもないから。


(8)『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』(56)

最も有名なのは78年版だろう、何度もリメイクされた映画だが本家はこれ。

ドン・シーゲルによるSFの佳作を、脚本の面で支える。


(9)『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』(73)

アンチヒーローの短き青春を、ペキンパーの「割には」抑えた演出で描く。

キッドをクリス・クリストファーソン、パット・ギャレットをジェームズ・コバーンがともに好演しているので、『ヤングガン』(88)を気に入っているひとは本作まで辿り着いてほしい。

(10)『ダンディー少佐』(65)

ペキンパー映画の初級篇としてはハードルが高いかもしれない騎兵隊アクション。

ただ中級者を自覚するひとには、常連俳優が沢山出てくるし、かなり楽しめる創りかと。



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明日のコラムは・・・

『ヘンな法則』
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