Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

初体験 リッジモント・ハイ(135)

2015-07-14 05:48:02 | コラム
いまはどうだか知らないが、自分が20代だったころの「花火大会後の掃除アルバイト」は、ひじょうにおいしかった。

陽がのぼるまでにはキレイにしてほしい―という行政が多いので、基本は深夜~早朝におこなわれる。
だから時給は割増であることが多いし、それ以上に「特典」が有難かった。

落し物の数が、半端ではないのである。

財布、持参したけれど飲まなかった缶ビール、食べなかった弁当などなど。
なぜかブラジャーまで出てきて、なにをしていたんだ? なんて笑いながら回収していく。

もちろん財布や現金などは落し物として「きちんと」処理するが、飲食系は「好きなだけ持ち帰っていい」ということになっていた。
行きは手ぶら、帰りは日雇いの給料と、沢山の缶ビール・・・貧乏フリーターにとって、こんなにおいしいバイトはなかなかないって話である。


さて。
自分が「生まれて初めて、女子と行った花火大会」について。

19歳、専門学校生だったときのことである。

新聞奨学生として朝夕刊の配達と集金で生計を立てていた自分の担当区域には、女子大生の専用アパートがあって。
集合ポストの時点で? よい香りがするくらいの秘密の花園だったのだが、基本男子禁制のエリアに「新聞の集金」というだけで堂々と入っていける特権性? が気持ちよかった。

新聞を取ってくれている602号室のA子さんに、本気で恋をしていた。

とはいえ。
とはいえ、、、というか、女遊びを覚えたてだった自分は、505号室のB子さんにも、303号室のC美さんにも、201号室のD子さんにも魅かれていて。

卒業時、彼女ら全員にデートを申し込んだ自分ではあるが、その時点ではデートに誘う勇気がない。
だって、「あのひと気持ち悪いから」と新聞止められたら困るし。

ふだんの集金時であっても、本気で惚れていたA子さんには笑顔を見せるのが限界、ヒトコトフタコトくらいは話しかけたかったが、無理だった。
ただB子さんやC美さんには、話しかけることが出来た。

その日もB子さんと「毎日暑いですね~」などという、簡単な会話を展開した。

「はい、350円のお釣りです」
(当時、新聞代金は3650円。現在は4037円だから、20年で387円も値上げしたのか!!)

B子さんは、少し酔っていた。

「あした、花火大会だね~」
「そうですね」
「お兄さんは、それでも集金?」
「いや、ボスから、外出するひとが多いから集金も難儀だろうって、休みもらえてます」
「見に行くの?」
「まだ決めてないです」
「ここの屋上からだと、いい眺めだよ」
「・・・あぁ、そうですよね、きっと。いいなぁ」
「来ない?」
「え?」
「一緒に見ようと約束してた子にドタキャンされちゃったんだ~」
「自分で、いいんですか」
「お兄さんが、よければ」
「部外者が、屋上まで行っていいんですか」
「いいんじゃない、べつに~」


なにしろビビリだったからね、
『街の灯』(31)のように、酔っているあいだだけチャーリーに友好的で、酔いが醒めたら「他人扱いする」富豪みたいなヤツだったらどうしよう、、、などと考えてしまった。


翌日―。

B子さんは、ちゃんと自分を受け入れて、屋上まで案内してくれた。

おっとっと。
A子さんもC美さんもD子さんも居るが、みんな彼氏らしきひとと見ているじゃないか。
彼女らに「ん?」という顔はされたが、みんな青春している、あぁ素晴らしいなって。


「花火大会をドタキャンする彼氏って、もはや彼氏じゃないのかな」
「・・・どうなんですかね、ほんとうに都合が悪くなっただけじゃないですか」
「だって花火大会だよ、花火大会」
「・・・」

ちょっと笑いそうになったが、追い出されてしまうので我慢した。


彼女は少し気の毒、けれども自分にとっては、
集金時に何度も顔をあわせてはいるが、じつはよく知らない女子と、ビールで乾杯しながら「混雑していない場所で」花火見物。

あぁ悪くねぇ、悪くねぇぞ自分の人生!! と思ったものである。



※トップ画像は『ケープ・フィアー』(91)で、主人公の自宅塀の上から花火を眺めるマックス(デ・ニーロ)。

こちらの動画は、『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』(93)より。




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本館『「はったり」で、いこうぜ!!』

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明日のコラムは・・・

『名刺代わり』

コメント (3)
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