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イースタン・プレイ (映画)

2009年11月07日 | 映画
映画「イースタン・プレイ

ほんの少し休みがとれ、白川郷やら高山やら金沢やらを旅しておりました。
美しい紅葉の思い出を胸に、帰ってからの仕事漬けの日々の中で初雪とのニュースを聞き、季節の変わり目は目まぐるしく早いものだなーと感じました。

さて、東京国際映画祭のグランプリを観ず旅立ったのですが、さくらグランプリは「イースタン・プレイ」だったそうですね。
これは今回の映画祭で観た中でも心に残った映画だったので納得。

ストーリーは、ブルガリアの社会問題、低所得者層とその若者世代の不満、不満のはけ口が人種差別につながり、ネガティブな若者の動きを利用する政治家がいるという大きな話が、ある兄と弟のとった行動から徐々に見え始めて行きます。
起点となるのがトルコ人観光客の一家。彼らが襲われるところから物語りは展開、襲った側の弟と助けた側の兄、そして襲われた家族の娘の3人が、その事件からどう関わり歩んでいくかが描かれます。

ブルガリアというと、ヨーグルトやバラの産地、あるいは力士の琴欧州の故郷として、のどかなイメージがあっただけに少し驚きましたが、やはり欧州は移民の問題や失業者の問題など色々あるだけに、どの国でもこういった暗部は抱えているのだなと思いました。ユーロに入る前のチェコを旅したことがあるのですが、感じが似ているなとも思いましたね。
だから弟も確固たる思想とか考えがあるわけでなく悪い仲間に入っていく。これがコワイ。でも、兄さんという対話できる相手がいるのが救いでした。

もちろん兄さんだって、元アルコール依存症で、今はそれを断つため病院通い。実はいいアーティストだが恵まれず、今は木工所で働いている。けれど自宅で製作しているこのアートがいい。そしてそれを作っていく信念を捨てない兄の生き方がいいんです。

この兄さんに助けられてお互いに距離が深まっていくのが旅行者の娘。結局、暴力を受けた親は、一部の若者のせいでブルガリア人皆が悪人とみなすようになるが、娘はそうではないと受けとめる。悲恋には終わるが最後には自立した人生を歩む女性となっていくのであろうと思わせます。

この映画を支えているのはストーリーもですが、兄さん役のフリスト・フリストフという役者の持つ雰囲気や芝居が魅力的で、エンドロールに流れる彼への追悼を読み、とても残念に感じました。この人なくては最後に描かれる希望もそらぞらしいものになったかもしれません。(最優秀男優賞も彼に決まったそうです。これも納得。)

ロードショーになったらぜひ観てもらいたい映画の1本です。

「イースタン・プレイ」
監督:カメン・カレフ

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