をとなの映画桟敷席         ~ほぼ毎日が映画館

映画取材から編集裏話まで、るかのここだけの話を忘れた頃にアップします

さくらん (映画)

2008年04月25日 | 映画
映画「さくらん

漫画が原作の花魁もの。邦画は昨今、漫画原作が多くてオリジナル脚本家が育ってないのかのぅ。
主演は土屋アンナ。以前、イタリア語講座でアシスタントを務めていたとき初めて見たのだが、まだまだ売り出し中で、ジローラモに生意気な口を聞いたり異色の語学講座となっていたのを思い出す。それがあれよあれよという間に売れっ子になっちゃって、この主人公みたい。

この主人公の花魁、土屋アンナの生意気さそのままなのでピッタリ。まあ、花魁ものといえば東映の「陽喜楼」や「吉原炎上」を思い出しますな。まあ、ストーリーはどれもパターンが似てますな。
貧乏で売られ、随一の花魁になる。合間には嫌な金持ちじじさまに水揚げされ、ライバルと喧嘩、本当に好きな男には裏切られる。

まあ、唯一この場面がいいと推すなら、本当に惚れた小間物屋の若旦那(成宮寛貴)を追って、足抜けして逢いに行くシーン。
出逢ったときは、とても真面目で主人公一筋に見えたのだが…。店の前で待ちながら、彼女は「あの人は無視するだろうか。それとも泣いてくれるだろうか。」と考えている。すると、店を出てきた若旦那は、彼女を見て、何事もなかったようにニコッとさわやかに笑って行ってしまう。
うわー、こういう男いるよな。ひとでなしなさわやか青年が成宮君にぴったり。あとで遊び人とわかり、肝を据える主人公。

写真家の蜷川実花が撮ったという話題性もあった映画。美術は絢爛豪華で美しい。しかし、内容的には残念ながら薄味な映画だった。


監督: 蜷川実花 原作: 安野モヨコ「さくらん」(講談社『イブニングKC』所載)キャスト: 土屋アンナ 椎名桔平 成宮寛貴 木村佳乃 菅野美穂
石橋蓮司 夏木マリ 市川左團次 安藤政信



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

インランドエンパイア (映画)

2008年04月21日 | 映画
映画「インランド・エンパイア

デヴィッド・リンチの「インランド・エンパイア」を遅ればせながらDVDで観ました。映画館で観てもいいんだけど、色々チェックしながらじっくり観たかったので今回はパスしておりました。

前作「マルホランド・ドライブ」が、なぜか熱い涙が頬を伝ったりしたので、今作はどうかなーっと。今回もある意味テーマ的には似ていますね。大体、愛情と憎悪の連鎖というか、その中で善か悪かを緋色のカーテンの向こうで選ぶことでラストが救われるか救われないかっていういつも一貫したリンチ監督のテーマのように個人的には思います。
今回は主人公が役者というところがキーポイント。劇中の不倫の女性、劇の脚本の元になったポーランドの女性など、他人を演じることによって演じられた人を救済できるか、そしてその演じ方によって自分の運命が良い方か悪い方かどちらに導かれるかというストーリーと私はとりました。

導入部から、近所に住むといういわくありげな老婦人がやってきて、話し出します。そのときのカメラの撮り方が技巧を感じます。ほんと嫌悪感漂うおばあさんになっていきますよ。ローラ・ダーン演じる良いとこの若奥様も唖然。

そこから話なのか、劇なのか、はたまた異次元なのかわからなくなるところが難解と呼ばれるD・リンチ作品の由縁ですが。
あっちから見るとこっち、こっちから見ると向こうの世界という風に、メビウスの輪状態のお話が進んでいきます。

今回は「ツイン・ピークス」や前作などの常連さんの小人さんは出ず、ウサギの着ぐるみ君が出てきます。どうやらコメディを演じているらしく、何度も観客の笑い声が入るんだけど、やっていることは普通の芝居です。
それと、娼婦たちが急に踊りだすのもへんてこりん。ハリウッドのスターを夢見ていたけど堕ちてしまった女性の魂たちなんでしょうか?
そして、「マルホランド・ドライブ」でもいきなり飛び出てきた悪の顔。主役のローラ・ダーンの顔を歪めただけなんだけど、コワッ。

しかし、最後の選択で…。結局、この話は主人公がカウチに座っていたほんの少しの時間の間のことなのでしょう。そして、彼女自身の運命の分岐点だったのかもしれません。

<Story>
ニッキー(ローラ・ダーン)とデヴォン(ジャスティン・セロー)は、キングスリー・スチュワート監督(ジェレミー・アイアンズ)が手がけるいわくつきの映画に出演することになる。役にのめりこむに従い、ニッキーは次第に、役柄と私生活を混同していく。<彼女>はいったい何者なのか? 
物語はロサンゼルス、ポーランド、そしてインランド・エンパイアへと行き来し、世界は混沌に飲み込まれていく・・・。

「インランド・エンパイア」Inland Empire
監督・脚本・プロデューサー: デイヴィッド・リンチ
出演:ローラ・ダーン、ジェレミー・アイアンズ、ジャスティン・セロー、ハリー・ディーン・スタントン
製作年:2006年/製作国:アメリカ
2006年ベネチア映画祭 栄誉金獅子賞 受賞
2007年全米映画批評家協会賞 実験的作品賞 受賞

 


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マンデラの名もなき看守 (映画)

2008年04月20日 | 映画
(C) ARSAM INTERNATIONAL,CHOCHANA BANANA FILMS,X-FILME CREATIVE POOL,FONEMA,FUTURE FILM FILM AFRIKA

映画「マンデラの名もなき看守

「マンデラ」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるか。
一時期ほどネルソン・マンデラ南アフリカアパルトヘイトという言葉を聞くことは少なくなった。
しかし、つい最近の1990年代までアパルトヘイトが続いていた南アフリカで、なんと27年間獄中で過ごし、息子も疑惑の事故で亡くしながら、差別をなくすため、自由のために戦ってきたマンデラを、最初は彼を極悪人と思っていた白人看守の目で描いた作品、と聞けば興味が湧くだろう。

実話ならではの作品を支えるのは役者たち。まず、マンデラは「24」で黒人大統領役を演じたデニス・ヘイスバートならでは。この役者の相手の心も見透かしてしまうような眼力と、重厚さはまさにぴったりの配役だった。
さらに、主人公の看守役にジョセフ・ファインズ。名優レイフ・ファインズの弟で、「恋に落ちたシェイクスピア」をご記憶の方も多いだろう。普通の家庭の夫であり父である彼が、マンデラという囚人と接することにより、自分が信じ込まされてきたことは違うのではないか、と徐々に変化していくくだりの演技を見てほしい。

内容もきちんと描かれている。
主人公は決して感化されたのではなく、自分でマンデラが考えていることを書いた書物を読んで自分で判断して行動するし、あくまで白人看守という立場に立ってフラットな立場で判断している。マンデラに対しても、一般人が死んだり怪我をする武力闘争はいけないことだときちんと言うのだ。
反対に、マンデラ夫人にひとかけらのチョコをあげただけで迫害を受けてしまうくだり、どこに本当の争いのタネがあるのかということをコミュニティーの内なる悪の部分を出すことで描いている。
徐々に、海外大国の経済封鎖などの圧力でアパルトヘイトは終焉に向かうのだが、事態が変わると180度あっけなく変わるのが、情報局の親玉役を見ていてわかる。ならばもっと早く解決できたのにと思うのが誰もが思うところ。これが歴史というものなのだろう。すっかり頭の白くなったマンデラ氏に、何か大きなことをなすためには多大の犠牲と時間の重さが必要なのか…ということを感じさせる映画である。

(ストーリー)
1968年アパルトヘイト政策下の南アフリカ共和国。
刑務所の下仕官ジェームズ・グレゴリーは、最悪のテロリストとされるマンデラの担当に抜擢される。マンデラの生まれ故郷の近くで育ったために彼らの言葉がわかるグレゴリーに秘密の文書や会話を監視し報告しろというのだ。任務に忠実なグレゴリーだったが、マンデラという人物に触れ、彼が自由のために払っている犠牲を知るにつれ、次第にマンデラに魅了され、彼が目指す平等な社会に憧れていく。
しかし、そんな想いが周囲に知られれば、自分の立場も妻子の安全さえも脅かされる。
家族、国、仕事、理想、良心・・・葛藤の中、それでも正しい歴史の一部でありたいと願ったある看守とマンデラの数十年間にも渡る魂の交流を描く感動作。

「マンデラの名もなき看守」
GOODBYE BAFANA
監督:ビレ・アウグスト
出演:ジョセフ・ファインズ/デニス・ヘイスバート/ダイアン・クルーガー
http://mandela.gyao.jp/
5/17(土)より シネカノン有楽町1丁目渋谷シネマGAGA!他全国順次ロードショー
上映時間:117分

 






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ネクスト (映画)

2008年04月12日 | 映画
    (C)2007 REVOLUTION STUDIOS DISTRIBUTION COMPANY,LLC ALL RIGHTS RESERVED.  

映画「ネクスト

いやー、迫力ありました。原作は「ブレード・ランナー」「トータル・リコール」「マイノリティ・リポート」等を書いた大人気SF作家フィリップ・K・ディックだと聞けば、どのように料理されているのかなと、興味津々で行って参りました。

この映画はK・ディックの書いた短編「ゴールデン・マン」が原作。ストーリーはたった2分だけ、しかも自分に関わることのみという限定つきで、未来が見える予知能力者、クリス・ジョンソン(ニコラス・ケイジ)がおり、運命の女性をどう恋人にできるかに没頭している。片や、FBI捜査官のカリー・フェリス(ジュリアン・ムーア)は、テロリストグループの仕掛けた核爆弾を探すため、クリスの千里眼を利用しようとするという主筋。

時間的考察に若干矛盾はあるものの(思考した時間、夢の扱い…)、主人公が最初からFBIへの協力にOKではないために、追いつ追われつするスリリングなチェイスや、途中見せ場となるモーテルのシーン、グランドキャニオンの雄大な自然など迫力満点です。
特にアクションは『007/ダイ・アナザー・デイ』などのリー・タマホリ監督ならではの迫力かな。

そして前半のお楽しみに、あの「刑事コロンボ」でお馴染みのピーター・フォークが、仮面ライダーで言ったら“おやっさん”的存在で出ているのがご愛嬌。

とにかくラストまでは行きつ戻りつ目が離せません。そしてラスト。ちょっとK,ディック原作で、G.シニーズ主演の「クローン」に似ているなーと思ったけど、まだまだ本ラスまであります。
エンドロールも逆回し。まずは観ての御楽しみー!

「ネクスト」
4月26日(土)より 丸の内プラゼールほか全国松竹・東急系にてロードショー
原作:フィリップ・K・ディック「ゴールデン・マン」(ハヤカワ文庫)
監督:リー・タマホリ、出演:ニコラス・ケイジ/ジュリアン・ムーア/ジェシカ・ビール/ピーター・フォーク 上映時間:95分


   




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

流山児事務所「MISHIMAワークショッププロジェクト」

2008年04月06日 | 芝居小屋
流山児★事務所MISHIMAワークショッププロジェクト」「綾の鼓」「道成寺」(作/三島由紀夫   演出/流山児祥) を金曜日の夜、観に行った。

早稲田駅近くの小さな小屋、スペース早稲田で、三島由紀夫の戯曲2作を上演するという試み。

もちろん役者の息遣いが聞こえそうなほど近い。だからこそ、各人の好不調がわかってしまう怖さがある。
近くに主宰の流山児さんが座って観ているというのも小劇場ならでは。
特に、今回のワークショップは同じような役を4、5人で演じるので、演技の優劣が特に観客にわかってしまう。

まずは能をモチーフにしたイントロダクションから、「綾の鼓」へ。
物語りは、70過ぎのビルの管理人の老人が、隣家の貴婦人に恋心を抱く所から始まる。しかし、それを知った取り巻き連中が老人をからかうため「この鼓を鳴らしたらその思いを受ける」という手紙を鼓と一緒に老人のもとに送るのだが、その鼓は綾で張ってあり、決して鳴らない鼓だった。それに気づき愚弄されたと老人は自殺してしまう。幽霊となった老人と貴婦人の対話はいかに、という内容だ。
三島の戯曲でよく上演される「卒塔婆小町」も、老人と若者の対話だが、相対の仕方はまったく違う。

さて、お芝居にもどろう。今回の芝居では、最初女が男役、男が女役を演じ、最後に入れ替わる演出となっている。
貴婦人は、最初は女面の人でもないのでどうかなと思ったが、喋らずしぐさだけのときは段々貴婦人ぽく見えてきて巧かった。ただ、ラスト、話し出すと普通の喋りで、貴婦人らしい大様さやため、上からモノを見るような喋り方がなく残念に思えた。美輪さんまでいかなくてもいいが、英映画の上流階級ものを少し観ると勉強になると思う。

女優陣では鼓のお師匠さんが新人落語家か太鼓持ちのようで…残念。もっとニヒルで川端の「千羽鶴」の主人公のように演じたらいいのにと思う。見た目についても、着物の腹にタオルを入れたほうが良かったのでは。
かっちりする必要はないが、他の役者と異なる役をもらえたのは儲けものと思って役作りしてみたらと思う。脇の所作、見栄え一つで芝居の印象は大きく変わるのだから。
主役の老人役の女性は、老人のときかわいらしいおじいちゃんで、老いらくの恋を気持ち悪いとは観客に思わせず、純愛が哀れに思える演技でよかった。欲を言えば、貴婦人に役を変わったら、男性が貴婦人を演じていたときと違い、ちょっと猛々しくなってしまって、同一人物としてのつながりが途切れてしまったように思えたのが残念だ。それと、もっと幽霊をも狂わせるくらいのゾッとする薄ら寒さを感じさせるようになれば面白いと思う。昔、同劇団で演じられた「Happy Days」(ケラさん作)の篠井英介の演技は心理的に最後ゾッときたのを思い出す。

2本目の「道成寺」。
物語は金持ち相手に高級骨董家具を売る店。客が高値を吊り上げている所に、踊り子が飛び込んでくる。この箪笥の中で恋人が死んだから価値はないというのだ。客は皆去っていき、踊り子と店主の対話が始まる。

個人的にはこちらが良かった。「妖し」の感じが良く出ていた。
また、脇役だが客の1人を演じた茉莉以という女優さんが突出して巧かった。声の発声の仕方も違うし、皆着替えて黒装束で4人次々に喋っていく場面だと、差が出てしまっており、ワークショップならではだなといえる。この女優さんが主役級で演じる芝居があれば今後観たいと思う。
他の役者さんたちもそれぞれコミカルも有りで奮闘していた。
難点は、主役の踊り子役の男性が声が枯れてしまっていたのが残念。

ともかく、三島由作品をまた挑戦してもらいたいなーと思った夜でした。
(来月は美輪明宏の「黒蜥蜴」で、三島作品をじっくり観ようと思う!)

「MISHIMAワークショッププロジェクト」「綾の鼓」「道成寺」
2008年4月2日(水)~7日(月) 【作】 三島由紀夫  【演出】流山児祥


  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする