をとなの映画桟敷席         ~ほぼ毎日が映画館

映画取材から編集裏話まで、るかのここだけの話を忘れた頃にアップします

MOZU (映画)

2015年11月22日 | 映画
映画「MOZU 映画版」

東京国際映画祭で観た本作。TVでTBS×WOWWOWのシリーズ版1・2からリアルタイムで観ていたが、本作はどうか。
主演は今や旬の男性俳優の1人、西島秀俊。準主役に香川照之、真木よう子とお馴染みのメンバー。
唯一違うのは、MOZUこと池松壮亮演じる新谷=暗殺者が相手役兼謎解きのカギではなくなり、さらに別の巨悪が出てくると言うこと。

したがって、シリーズを通しで観ていて、テイストに違和感を感じる人もいるだろうと推測される。
それに、主役倉木がMOZUという台詞に至っては、「ん?」と思ってしまった。
結局今回は、新谷を松阪桃李演じる権藤に役割を振ってという感じにせざるを得なかった感じ。ならば、権藤という日本名じゃなく、東南アジア系の名前の方がリアルだったのにと思う。

もちろん、ここぞというシーンで新谷兄が出てくるので、物語&画面的に締まるのだが、いかんせん、本作への絡みが少なく残念。通しで観てると、スピンオフ映画のような気もしてしまう。池松の演技が出色なだけに、特にそう思えた。

それに対して出ずっぱりだったのが東役。敵か味方か分からない立ち位置の人物が出ずっぱりだと、ともすれば作品の出来を左右してしまうが、それを壊さずに派手な人物を主役よりは目立たせず、長谷川博巳は上手く抑制して演じていたと思う。(ただ、桃李にしても、狂気の人物が高い声で馬鹿笑いするというのは型にはまった演技で食傷。)

それから映画なので荒唐無稽でいいのだが、誰もがスーパーマン。あれだけ負傷しても次のシーンでは普通に歩いているし、すぐ未知の東南アジアに飛んでしまうのはちょっとマーベル。
ハードボイルド感が魅力の本作。拳で殴られれば数日はグロッキーな、「ロンググッドバイ」や「チャイナタウン」的な生身のリアル感が脚本・演出にほしかったと思う。すると、ラストのバーのシーンなどさらに格好良かったのでは。

そして、宣伝上しょうがないのだろうが、最大の敵は公開まで伏せておけばなおカッコ良かったのに…。
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Foujita (映画)

2015年11月08日 | 映画
(c)2015「FOUJITA」製作委員会/ユーロワイド・フィルム・プロダクション(東京国際映画祭にて)


映画 「Foujita」

フランスはパリで活躍した日本人画家、藤田嗣治の人生を、オダギリジョー主演で小栗康平監督が描いた作品。

前半は、すでに知名度を得たパリ時代の藤田の姿。画家仲間やモデルたちとの享楽的な馬鹿騒ぎを描きながら、エコールドパリ、そしてモンパルナスの時代の雰囲気を醸し出す。
後半は、映像は日本に戻り、画家たちの協会の会長となっている藤田が戦時中の暗く沈んだ空気の中で、静謐な佇まいで登場する。

画風の質も対照的。前半は白い肌をことさらに強調した裸婦像。有名なモデルのキキがオランピアのように横たわっている画や3人の裸婦が立っている画などはどこかで見たことがあるのではないだろうか。
対して後半は、名もなき多くの兵士たちが斃れている戦争画となる。

そして、藤田はどうなったのであろうと思わせるような淡々としたラスト。

彼の心の中でどのような気持ちの整理がつけられていたのか…と思ううちにエンドロールになった。

11/14より公開
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