をとなの映画桟敷席         ~ほぼ毎日が映画館

映画取材から編集裏話まで、るかのここだけの話を忘れた頃にアップします

マイ・ブルーベリー・ナイツ (映画)

2008年03月30日 | 映画
                  (C)Block 2 PICTURES 2006

映画「マイ・ブルーベリー・ナイツ

予告編を観た時から観たいな、と思っていたこの映画。
ぱっと見は、カップルで行くような恋愛映画と取られがちですが、どちらかというと主人公の傷心の旅の合間に、旅の行く先々で出逢う、人との関わりが不得手な人々との交流を描いたロードムービーでした。
ですから、女性客1人、或いは男性客1人であっても、観に来て感傷にひたれるジャジーな映画なのです。

面白いのが、主人公エリザベスが旅する先々からブルーベリーパイを出す店のマスター(ジュード・ロウ)に絵葉書を送るのですが、それぞれの人との出会いがそこに書かれているという設定になっているということ。
だから、ポスターなどの主人公役ノラ・ジョーンズジュード・ロウ2人のシーンは最初と最後だけだし、恋人同士のような甘いシーンはポスターにあるキスシーンがかすかにあるかないかぐらいで、かえって出会う人々の人生模様に重きがあって面白かったですね。また、それがあるから、2人が再会した時が、主人公の成長とともに生きるというか。

出会う人々ですが、知的な奥様役の印象があるレイチェル・ワイズがアバズレっぽい役だったり、ナタリー・ポートマンがさすらいの女ギャンブラーだったり。みんないきがっていても、心の中は孤独を抱えている…。

主人公のノラ・ジョーンズはグラミー賞歌手で、新聞の批評欄に下手だと出ていたけど、むしろ素人っぽく、顔も女優っぽくない普通な人の感じがこの役に合っていたと私は思ったな。

ジュード・ロウも抑えた演技で久々に良かった。
監督は「花様年華」のウォン・カーウァイなので、いつものようなスロー&クイックのコマ送りや、赤系の色彩、抑えた恋心の表現など健在です。エンドロールの紫色のネームの入り方もCOOLでした。

音楽で言えばジャズと夜が好きな人に合った映画でしょう。

監督・製作・原案・脚本 : ウォン・カーウァイ 、出演 : ノラ・ジョーンズ 、 ジュード・ロウ 、 デイヴィッド・ストラザーン 、 レイチェル・ワイズ 、 ナタリー・ポートマン (製作年 : 2007年、製作国 : フランス=香港)



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ラフマニノフ ある愛の調べ (映画)

2008年03月29日 | 映画
(C) 2007 THEMA PRODUCTION JSC (C) 2007 VGTRK ALL RIGHTS RESERVED

映画「ラフマニノフ ある愛の調べ

ラフマニノフといえば、絢爛豪華なピアノ協奏曲第2番が有名ですね。あのラストへのピアノとオケの盛り上がりが個人的にも大好きです。
ラフマニノフの音楽は映画「逢びき」(第2番)、「シャイン」(第3番)、最近ではマンガの「のだめカンタービレ」などで使われていますので、耳にすれば「知ってる!」と思われます。

その作曲家ラフマニノフ自身の生涯をつづった映画です。ただし、テロップに出るように、創作で膨らませた部分もあるとのこと。

いつもライラックの花を届けて応援してくれた人物はだれなのか…という、まるで「ガラスの仮面」の“紫のバラの人”のような謎をはらみながら、彼を愛した3人の女性を絡めつつ、ロシア革命とアメリカへの亡命といった歴史的事実を生きてきた姿を描き出します。
幼少の頃のお屋敷の風景は美しく撮られています。また、ハリウッド作品とは違い、忠実に全編ロシア語ですのでリアルさが違います。

実際のラフマニノフの写真がCDについていて以前から見ていたので、神経質そうな人だなとは思っていたのですが、こういう経緯があって、少し病み気味だったのですね。主演の俳優さんは似ています。
でも、ゴッホにしても天才と呼ばれる人のそばには支えてくれる人々の隠された力があるのだなという気がしてなりません。

(ストーリー)
すべてを捧げた初恋、短くも美しい恋、支え続ける愛──
ラフマニノフの人生を変えた3人の女たち

その夜、カーネギー・ホールは、熱狂的な感動に包まれていた。
ロシア革命を逃れてアメリカに亡命したラフマニノフの、ニューヨークでの初コンサートが開かれたのだ。
時は1920年代、人々は目の前で繰り広げられる音楽の奇跡に、破格の賛辞を贈り続けた。
この日を皮切りに全米ツアーが始まるが、行く先々での大成功とは裏腹に、ラフマニノフは日に日に憔悴していく。
祖国への望郷の念、そして何よりも新しい曲が生まれない苦しみ──妻のナターシャは、そんな夫を支え続ける。
ある日、ラフマニノフのもとに、贈り主不明のライラックの花束が届く。
故郷に咲き乱れるその花の甘い香りをかいだ瞬間、切なくも情熱的な愛の日々が甦る。
募る想いを込めて交響曲を捧げた年上のアンナ。革命に燃える瞳に心を奪われたマリアンナ……。
花束は届き続ける。いったい贈り主は誰なのか? 
愛の記憶に導かれるように、ラフマニノフの心に新たな旋律が生まれようとしていた……。


監督:パーヴェル・ルンギン 出演:エフゲニー・ツィガノフ、ヴィクトリア・トルストガノヴァ (ロシア 2007 上映時間:96分

4月19日よりBunkamuraル・シネマ、銀座テアトルシネマなどでロードショー
http://rachmaninoff.gyao.jp/



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遥かなる大地へ (映画) トムとニコール

2008年03月24日 | 映画
映画「遥かなる大地へ

今は別れてしまったけど、トム・クルーズニコール・キッドマン元夫妻が共演した2作目の作品。とってもクルーズが若いし、キッドマンも今ほど洗練されていなく歯茎むきだしがたまに目に付く感じ。
監督はハートウォーミング作品や人間ドラマの多いロン・ハワード

舞台はアイルランドからアメリカへ移民する話だが、まずは、オープニングのアイルランドの自然の映像が美しく雄大だ。
小作農と地主の対立から、貧農の息子が地主を暗殺しようと屋敷へ行くが、その娘と出会い、新たなる土地アメリカへ、というストーリー。
家を出たい世間知らずな娘と、土地が欲しいためにアメリカへ渡るのと、両親も家を焼かれアメリカへ渡ってくるのが短絡的で少し現実味がないが、苦難の末にやっとというのは、昔の開拓民はこうだったのかなと往時を思わせる。
ラスト、せっかく土地を手にしたのに主人公が死に瀕し、その後エッと思わせる展開になるのはご愛嬌。
リアルなのかおとぎ話なのか、中途半端なテイストだが、風景だけははずしていない作品だ。

監督:ロン・ハワード 主演:トム・クルーズ、ニコール・キッドマン
アメリカ 1992

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ダロウェイ夫人 (映画)~「めぐりあう時間たち」に寄せて~

2008年03月23日 | 映画
映画「ダロウェイ夫人

英文学史といえば必修のヴァージニア・ウルフ女史。彼女の同名小説を映画化した作品。

まずは、主人公と周囲の人々の過去と未来が交差する。現在は年配になった主人公ダロウェイ夫人。回想で若い頃のクラリッサ(のちのダロウェイ)。現在のダロウェイは、国会議員の妻、そして1女の母として、平凡だが落ち着いた生活を送っている。若い頃の彼女はピーターと恋仲だが、ダロウェイと出会い結婚をする。果たしてこれで良かったのかと思う話を軸に、戦争から帰って来て精神を病んだ若者の話があるところでつながる。

なんだか似たつくりの映画を思い出しませんか?J・ムーアやM・ストリープの出た「めぐりあう時間たち」は、まさに「ダロウェイ夫人」を巡る話でしたよね。N・キッドマンはウルフの役でしたし。
3つの話がつながってくる、主人公の心象風景の語りで展開していく、生と死、まさに「ダロウェイ夫人」の手法そのものを取り入れて書かれた作品だったのですね。当時は単にウルフとその作品ををモチーフにした映画という観点でしか観ていませんでした。
だから映画って面白い。

それから、当時の町並みや衣装をきちんと再現している点が美しく、素晴らしいです。TVシリーズの「名探偵ポワロ」も当時の服を探して直して再現しているといいますが、それに匹敵するほど素敵です。
ストーリー的には内面描写なので、派手な起承転結があるわけではありません。「鳩の翼」「眺めのいい部屋」などの英文学映画がお好きな方にはオススメです。

監督: マルレーン・ゴリス 出演: ヴァネッサ・レッドグレーヴ 、 ナターシャ・マケルホーン 、 ルパート・グレイヴス
1998、イギリス/オランダ
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永遠のマリアカラス 

2008年03月16日 | 映画
映画「永遠のマリアカラス

オペラを知らない人でも、オペラ歌手マリア・カラスという名前はどこかで耳にしたことがあるかもしれない。
不世出のこの歌姫の絶頂期の話しではなく、富豪オナシスが彼女の元を去り、半引退していた、どん底といっていもいいころのカラスの話である。
カーテンを引いた部屋で1日を過ごし、薬や酒に依存してかつての美声は聞けなくなっていたころをファニー・アルダンが演じている。

それを続けていたら、人間としても朽ちてしまうと考え、なんとか再起させようとジェレミー・アイアンズ扮するプロデューサー、ラリーと、年配の女性ジャーナリスト、サラが、時には叱咤し、時には褒め称えて、カラスを段々外に連れ出し、やっと「カルメン」の映画を製作するにいたる。
ただし、声は一番良かった頃の吹き替えのため、カラスはフェイクではないかと、悩む所が焦点。
その話にラリーと恋人との出会いと別れが織り込まれる。

活力が戻れば人は目的のために意見を戦わせたり、夢中になれる。ラストは冒頭のロック調と違い、ラリーが思わず泣く所など、人生の悲哀を感じさせる。
企画はお蔵入りになった(カラスは、夜中に昔の美声をレコードで聞いて泣き崩れる生活から脱し、自分の今を見つめ直すことができたと思う)が、引きこもりのような生活から、自由に森の中を歩けるようになったというだけでも、晩年は幸せだった様に思うのだ。

原題 : Callas Forever
製作年 : 2002年
製作国 : イタリア=フランス=イギリス=ルーマニア=スペイン
ファニー・アルダン (Mairia Callas)
ジェレミー・アイアンズ (Larry Kelly)
ジョーン・プローライト (Sarah Keller)
ジェイ・ローダン (Michael)
ガブリエル・ガルコ (Marco)






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