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映画「漁師」~東京国際映画祭今宵の1本

2023年10月25日 | 映画
漁師(映画)
フィリピン映画の「漁師」。
なかなかよかった。お勧めの1本。

最初はモノトーンの映像の中、漁師が魚を獲っているが、引き上げてみると腐っていて臭くて食べられない、というところから始まる。
漁師には、家族がいて、いつも咳をしている妻と、美しく若い娘がいる。
海に囲まれた小さな島に住む家族の家はあばらやだ。
母の咳止めの薬を買いに町へ行く娘。途中で生理になったのが分かるシーンがあり、このあとの伏線になっている。
娘は歌が好きで街で屋外カラオケに興ずるが、もっと歌えば金をやるという中年男にまとわりつかれ、と思ったら、漁師が娘のことが心配で街にやってくる。もちろんこの中年男には強烈パンチを見舞って、娘とうちへ帰る。

ある日、漁師が漁で網をたぐると、瀕死の一人の若い男が網にかかっていた。
どうやら外国人らしい。
家に連れ帰り介抱すると、いつのまにか元気になっていた。やがて娘とも仲良くなる若い男。
いつもニコニコしているが、ちょっと得体が知れないし、たまにどこかへ行ってしまう。
やがて、娘に変化が訪れる…。

というストーリー。
かなりおとぎ話っぽい(グリムみたいに本来的なダークな部分がある)つくりで、飽きさせずに見せてくれる。
街には魔女のような老女が支配しているし、首を吊られた死体がぶらぶらしている。
まだ土着的な考えが染みついている島という感じだ。
だから、良い金色の魚と悪い黒い魚がいて、悪いこと(不漁になる)が起きると、黒い魚をとったせいだと島民を扇動する。
でも、島を出たことのある漁師は、なぜそうなったかが事実として分かっている。
そこに対立の芽が生まれる。

若者と娘の物語の方は、いわゆる異類婚姻譚だが、善か悪か、あるいは言い伝えに左右される漁師の心は波のように揺れる。
童話的な話の裏には、現代のいろいろな問題が見え隠れしているようだ。

なんだかラストは横尾忠則さんの絵のようであったが…。

東京国際映画祭
ワールド・フォーカス部門
監督:ポール・ソリアーノ
フィリピン





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