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アウトレイジ ビヨンド (映画)

2012年09月26日 | 映画
                    (C)アウトレイジビヨンド製作委員会

映画「アウトレイジ ビヨンド」

「全員悪人」のキャッチフレーズでハードバイオレンスな世界を描いた北野武監督「アウトレイジ」のその後を描く第2作目。
ベネチア国際映画祭の前にまずは観てきました。
前作では椎名桔平の殺され方が強烈な半面、石橋蓮司のやられ方が突き抜けちゃって笑いを誘うなど、北野作品特有のカンジがありましたが、今回は笑いを排除してクール&バイオレンスに徹してます。

大友役のたけしはなかなか出てきません。出てきても「バカヤロ」か「コノヤロ」しか言いません。
まずは自分を狂言回しの位置に置くことで、前回頂点に昇り詰めた加藤(三浦友和)の狼狽ぶりや小心さ、関西の大物たちのしたたかさや凄み、刑事片岡(小日向文世)の得体のしれなさを浮き彫りにしていきます。

そして、身近な若い衆が酷い死に方をした後、大友は反撃に出ます。これがまた酷くて目を背けたくなります。
そして大友のバックには誰がいるのか。大友の背景がチラリと垣間見えます。

今回の映画、裏社会のドンパチという点を除けば、大企業のお家騒動や外資系との抗争にも通じるものがあります。
同族経営が成り立たなくなり、外部からやり手のトップを迎えて売り上げ第一の拝金主義でやってきたものが粉飾で破綻し始め、それを外資系企業が虎視眈々と狙い、公的機関も摘発のチャンスを伺っている・・・。よく似たような話が新聞誌上を賑せたり・・・事実は小説より奇なりと言いますから。

それから面白いなと思うのが、警察側の松重豊演じる刑事を置いたこと。先輩刑事である片岡のやり方にいつも疑問を感じながらも、見ているだけの存在。この「傍観者」も北野監督は「悪人」の一人に数えているのでしょうか。

三浦友和演じる関東のドンも、小心振りや凋落振りのオロオロ加減が合ってますね。「沈まぬ太陽」といい、どっかホントの大物にはなりきれない悪役でイイ味を出してます。

そして今回存在感を持たせたのが小日向文世の片岡刑事。善側でありながら悪にとことん近く、何を画策しているか分からない不気味さがあるんです。多分北野監督は、昔は破壊や暴力も理由があって起こったが、現代社会ではその理由なく単に混乱を愉しむ愉快犯が出てきており、それを片岡に投影したのではないかと思うのです。
それを大友はどう裁くか。


ところで、見た目だけ言うと関西の花菱会のナンバー3を演じた塩見三省がかなりはまってて恐かったですな~。彼がいなければ西田さんがハマちゃんに見えてしょうがなかったと思います~。
(ちなみに、イイ人役の塩見さんも好きですっ。)


映画「アウトレイジ ビヨンド」10月6日より全国ロードショー
http://wwws.warnerbros.co.jp/outrage2/
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